本当の愛を手にとって
さぁ今この手をとって 伝えたい事があるんだよ
差し伸べたこの手をとって 君に見せたい未来があるんだよ
出典: & you/作詞:林保徳 作曲:林保徳
オヴェスが最後の力を込めてエルに手を差し出します。
エルはその手を受け止めてくれたのでしょう。
すっかり老いて衰えてしまったふたりの美しい愛の姿です。
オヴェスが渾身の想いを込めて語る言葉は2番の歌詞で語られます。
今はその心持ちを語る場面です。
オヴェスにとっては差し伸べた手をエルが握ってくれるかどうかが一種の賭けでした。
心配することなくエルは本当の愛はここにあったのだと思っています。
お互いの気持ちが通じ合うこの場面は感動的です。
人と人は運命と時間・空間を超えて分かり合える瞬間があるのでしょう。
次の世代に託す未来は
私たちは歳下の世代に未来を手渡す義務があります。
日常生活の中でこうした義務や任務を思い出すことはあまりありません。
しかし自分が死の床に横たわっているとしたらどうでしょうか。
今、生きている間にどうしても将来の世代に希望を託す言葉を遺したい。
半ば自分勝手にそんなことを願ってしまうかもしれません。
思うような未来を託せなかったという後悔もつきまとうはずです。
それでもこれからを生きる人には絶望して欲しくないとも思うはず。
君に見せたい未来。
それは私たちではなく君が生きる道筋の中にあるものです。
君の気持ちを慮って私たちは未来に希望を託します。
自分が生きられなかった時代を生きる君には幸福であって欲しいと願うのです。
祈るような気持ちで私たちは未来への希望を語ります。
死の淵にあってもうその未来に私たちが生きることはできないのですが大丈夫だよと語るのです。
愛こそが至上の価値
エルの人生を救済したい
強がりな君が泣いた
声を殺し泣いていた
我慢してたんだね
こんな傷だらけになるまで
大丈夫 怖くない
僕はすぐそばにいる
今気がついたんだ
僕らが出逢った意味を
出典: & you/作詞:林保徳 作曲:林保徳
オヴェスはエルの人生に思いやりを込めてその苦悩を労ります。
エルの人生は波乱に満ちていました。
決していつでも幸せだった訳ではありません。
エルは周囲の人に恵まれずに辛酸を嘗める人生でした。
しかし傷ついてもどうにか生命を繋げて生きてきたのです。
そのエルの人生をオヴェスは救済しようと必死になります。
彼に残された時間はあとわずかです。
短い時間の中で端的な言葉でエルを救います。
これまで辛かっただろうけれどふたりの愛を確かめられたのです。
それならばこれから先は僕が守護霊のように寄り添って生きてゆくから安心して。
オヴェスはエルにそうやって勇気付けるのです。
僕たちふたりが巡り合った理由を確信したといいます。
それは稀少な愛のためでしょう。
オヴェスの愛はエルがいないと成就しない。
エルの愛はオヴェスがいないと成立しないのです。
これこそがふたりが出会った意味になります。
愛というものはこの世界では至上の価値があるものです。
しかしどこにでも存在するものではありません。
人ひとりが享受できる本当の愛は本当に稀少な相手としか成立しないのです。
すべての動機は愛だから
私たちは愛する人でも友人でも恵まれない境遇の中で歯を食いしばって生きている人には敬意を払います。
人は誰しも何かしらの痛い思いをしたことがあるもの。
そのために他者の痛みにも共感を覚えることができるのです。
こうした魂のふれあいのようなものは人間存在にしか備わっていない貴重な能力であります。
憐憫の情というものが人を動かすのです。
それでも傷ついている人にどんな声をかければいいのか悩むもの。
それはそこに愛にまで発展する関係性がなかったからではないでしょうか。
私たちはパートナーや家族には親身になって励ます能力があるのです。
愛があれば落ち込んでいる相手に声をかけることに躊躇はしないでしょう。
そして自分がそばで支えているから安心して欲しいと語るはずです。
そうした言動に出る動機はすべてが愛であります。
すべての優先事項である愛がする仕事はたくさんあるでしょう。
傷ついた人に安心を与えるのも愛の力が成したことなのです。
この力こそを信じて生きていきたいものでしょう。
愛に加護される未来
君の目に光る涙
拭わせて 哀しみも その痛みも 僕にくれないか?
さぁ今この手をとって 伝えたい事があるんだよ
差し伸べたこの手をとって ほらね 何か感じないかい?
だからもう泣かないで 何も怖くない
離さないでこの手だけは
出典: & you/作詞:林保徳 作曲:林保徳
最後の最期に再会したオヴェスとエル。
残された時間はもうわずかですがオヴェスはエルに安心して未来を臨めるように全身全霊で語ります。
エルの涙はどんな意味があるのでしょうか。
この愛に気が付くまでに時間をかけすぎってしまったことへの後悔かもしれません。
単純にオヴェスをこの先失ってしまうことへの涙かもしれません。
オヴェスはそうした涙をすべて僕が受け止めるからエルはこの先心配することはないと伝えます。
エルはオヴェスに先立たれるとまた孤独な人生に逆戻りすると心配しているかもしれません。
しかしオヴェストの愛を確認したエルはもうこれまでの人生に逆戻りすることはないです。
エルのこの先の人生はオヴェスの愛によって加護されてゆくからであります。
だからもう大丈夫だと語るオヴェスの気持ちはとても真剣なものなのです。
壮大なコンセプト・アルバム「L-エル」の最終章もクライマックスを迎えます。
エルの人生を描いた壮大な叙事詩がどのように結ばれるのかを見ていきましょう。