このエンディングをどう考えよう
僕の目に映るものを
この胸に感じる事 そのすべてを君にあげたい
さぁ今この手をとって 伝えたい事があるんだよ
差し伸べたこの手をとって ほらね 何か感じない?
さぁ今この手をとって 伝えたい事があるんだよ
差し伸べたこの手をとって 君に見せたい未来があるんだよ
出典: & you/作詞:林保徳 作曲:林保徳
Acid Black Cherry、yasuはこのラインでアルバム「L-エル」を幕引きします。
見ていただいたようにエルの人生はオヴェスの愛で救済されるのです。
つまり一見して「ハッピーエンド」のようになっています。
オヴェスがエルに見せたい未来とは愛に満ちた世界です。
虚飾の愛のような派手なものではありません。
オヴェス自体は天に召されるのですから孤独な中で感じる愛になります。
故人の愛に加護された人生を約束することがオヴェスにできるすべてのことです。
エルのこの先の人生は本当に「ハッピーエンド」の一言で片付けられるものなのでしょうか。
愛する人が加護してくれる人生ですが、その生活にはもう愛する人は天国の住人なのです。
エルは新しい形の孤独を背負うことになります。
これまでのように痛切な孤独ではありません。
誰かに確かに愛された人生であったと信じることができる新しい孤独が彼女を待っているのです。
本当に「ハッピーエンド」なのか
そして種明かしの時間になります。
オヴェスとエルは実際には再会していません。
リスナーの皆さんはアルバム「L-エル」のストーリー・ブックをご覧になっているはずです。
このオヴェスの最期の瞬間に立ち会ったというのはエルの夢の中の出来事であります。
ではこの歌のオヴェスの言葉までも幻なのでしょうか。
いえ、この「L-エル」ではオヴェスの想いだけが真実なのです。
愛されるよりも愛することに徹底した彼の人生の総決算がこの曲「& you」でしょう。
「& you」は単純な「ハッピーエンド」ではなくて愛というものへの正体を暴いたものになります。
愛の正体とは愛されることにあるのではなく、自身の胸のうちの愛を捧げられる積極性にあるのです。
「L-エル」の結末がいわゆる「夢オチ」であってもオヴェスの献身的な愛は真実でしょう。
物語の中にあっても愛はあくまでも現実であり心を傾ける価値あるものなのです。
それは夢でありましたで終わるお話ではないでしょう。
yasuが込めた想いを汲み取るとこのような解釈が可能なはずです。
「L-エル」は愛の頭文字
私たちは後の世代に未来を託してこの世を去ります。
どの世代も皆、そうした継承の手続きをして生きて死にました。
愛する人をこの世界に遺したままにこの世を去るのは辛いことです。
この先の世界を生きる人に手渡せるものは何でしょうか。
私たちは最期の気力を食いしばって「愛していたよ」と告げることでしょう。
そしてこの事実は私たちが亡骸になっても決して変わることがないものなのだと言い残すのです。
人類の歴史はこうして連綿と続いてきました。
ただ、死ぬ間際にしかこの言葉「愛している」を伝えられないのは惜しいことです。
アルバム「L-エル」の主題は愛。
私たちはこのことに気付いてもっと普段から身近なパートナーや家族に語るべき言葉を探します。
物語というものが伝える主題やメッセージは消費するだけではもったいないものです。
私たちは学ぼうとすればどんなものからも教訓を引き出せる感受性を備えています。
アルバム「L-エル」の主題の愛と向かい合う必要があるでしょう。
未来に手渡したいものは愛ある生活だったという「& you」。
その実相が単なる「ハッピーエンド」ではなかったというのは上述したとおりです。
愛があっても人生は過酷かもしれません。
エルのようにこの先も孤独が続くのでしたらなおさらでしょう。
しかし私たちは愛ほど価値のあるものをこの世界で見つけることができません。
オヴェスはエルへ愚直に愛を贈った。
これは当事者にとって至高の価値があるものです。
祈るような気持ちで捧げられた切実な愛のすべてに心からの敬意を表します。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
OTOKAKEとアルバム「L-エル」
OTOKAKEにはAcid Black Cherryの「L-エル」の関連記事があります。
まずは表題作である「L-エル-」についての記事。
このアルバムのストーリーを詳細説明しています。
続いて「Loves」についての記事。
この記事の「& you」の直前に収録された重要なトラックです。
ともに歌詞を徹底解釈いたしました。
この記事と併せてぜひご覧ください。
【L-エル-/Acid Black Cherry】歌詞に隠されたストーリーとは?アルバム表題曲! - 音楽メディアOTOKAKE(オトカケ)
活動休止前最後のアルバムとなったアルバム『L-エル-』の中核をなすタイトル曲「L-エル-」。この曲で表現されているのは驚くほどに純粋に相手を想う愛でした。
Acid Black Cherry【Loves】歌詞の意味を考察!ずっと探し求めていたものとは? - 音楽メディアOTOKAKE(オトカケ)
Acid Black Cherryが2015年に発表したコンセプト・アルバム「L-エル」。このアルバムあら「Loves」の歌詞をご紹介いたします。クラシカルなサウンドに包まれて美しくも儚いこの曲の歌詞の意味を考えてみましょう。
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