20周年目前シングル
MISIAが描く「兄弟の未来」
2018年にデビュー20周年を迎えたMISIA。
その直前、2017年発売の33rdシングル「君のそばにいるよ」は実写版映画「鋼の錬金術師」の主題歌でした。
MISIAは歌唱力はもとより、楽曲の表現力にも優れている素晴らしいアーティストですよね。
大変な運命を背負った兄弟の姿を、彼女はどのように表現したのでしょう。
このあと、少し「鋼の錬金術師」を紹介させてくださいね。
「鋼の錬金術師」とは?
原作は荒川弘(あらかわ ひろむ)著作の少年マンガ。
錬金術で亡くなった母親を錬成しようとしたエルリック兄弟。
しかし錬成に失敗し、兄・エドワード(エド)は左足を失い、弟・アルフォンス(アル)は自身の肉体を失います。
アルの魂を錬成したエドは右手も消失。アルはその魂のみ、鎧に定着させられて復活しました。
自分たちの身体(カラダ)を取り戻すため、「賢者の石」を探す旅に出た兄弟。
ようやく見つけた「賢者の石」は多くの命を犠牲にして作られたものでした。
彼らは「賢者の石は使わずに身体を取り戻す方法」を探すという更なる苦難の道を選びました。
そしてやがて、彼らは国家の陰謀に巻き込まれていくのです……。
最終回が異例の2カ月掲載!
「月刊少年ガンガン」で2001年から連載が開始された「鋼の錬金術師」は2010年に完結しました。
最終回の掲載号は書店で完売が相次ぎ、異例の2カ月連続(同じ話を)掲載という救済措置がなされたほど。
いかに読者に愛されていたかが分かりますね。
なんとMISIAは、主題歌のオファーが来る前から同作品のファンで、読破していたそうです。
自分が読んでいた作品の映画主題歌のオファーが来るなんて当然嬉しかったと思います。
でも同時に、プレッシャーもすごそう……。
この作品のキーワードとなるのは「等価交換」「兄弟愛」「人との繋がり」です。
MISIAはこの肝となる部分を最初から分かっていて主題歌の作成に取り組みました。
実写版「鋼の錬金術師」主題歌
2017年に公開された実写映画「鋼の錬金術師」。
「君のそばにいるよ」はこの映画のために書き下ろされた楽曲です。
主演はジャニーズ所属のアイドルグループ「Hey! Say! JUMP」の山田涼介さん。
とても人気の高い作品なので原作ファンからの評価は厳しいものが多かったようですね。
原作がある場合、見た目の類似性はとても大事。
その点で言うと、山田さんはすごくエドに近かったと思うのですよ。
第一に見た目が小さくて(ああ……)動きが俊敏。
おまけに山田さんは「役」への入り込み方が深く、信頼できる役者さんです。
コメディからシリアスまで演技に幅があるのも良かったですね。
原作者・荒川先生も山田さんの別の出演映画を見ていてアクションの冴えに注目していたとか。
アルはCGでしたが重量感がある丁寧な描き方でちゃんと魂が宿っているように感じました。
全27巻の作品を2時間の映画に閉じ込めるとなるとすべてのエピソードは入りません。
「ああ、そこ端折(はしょ)っちゃうのか……」と残念なところもありました。
でも、物語の主軸である「兄弟の絆」が大切に描かれていたのは良かったと思いました。
MISIAがあの人(?)と夢の共演!
このMVを見た時、本当に驚きました。
世界観がそのまま「ハガレン」で、MISIAが物語の世界に入っているのです。
だって冒頭、いきなり錬成陣ですよ? MISIAが錬成しちゃうんですよ?
鎧姿のアルとの共演も感動しました。アルは全編CGなので、撮影時はMISIAはひとりでしたよね。
きっと完成品を見て彼女も「おお~!」と歓喜したのではないでしょうか。
アルが広場で怪物と闘うシーンで、押されて後ろに下がる足元が一瞬映ります。
数秒のシーンなのに、アルと怪物の重量で広場のレンガが壊れてしまうのがリアルです。
そしてMISIAは樹木の錬成をしながら進み、物語の要である「心理の扉」に入って行きます。
この終わり方も意味深でカッコいいですね。
まるで映画本編
何なのでしょう、この神秘的な心を浄化するMV……。
映画のCM流すよりも、このMVを宣伝に使った方が効果が高かったのでは……。
だってこのMV見たら映画のクオリティも期待できますよね!
MISIAは歌詞を書く際にあまり詩的になりすぎず、「エドらしさ」を出そうと思ったそうです。
そして作品で描かれている「道徳観」も、押し付けにならないように散りばめられています。
映画を観た子供たちが大人になってから「このことを言っていたのか」と気づくといいな……。
そんな願いが込められているんですね。
では次は兄弟の葛藤と絆が描かれた歌詞を見ていきます。