ちなみに「あなたは蜃気楼」には上記のような歌詞があります。
つまり作詞をした常田さんや歌う井口さんご本人の内心については考察しても答えは出ません。
想像をふくらませて楽しむのみです。
いずれにしてもこの歌物語の主人公は10代の少年のような葛藤を抱えていることがわかりました。
続く、前のめりに重なった「ティーン~」のコーラスも疾走感抜群!
どうやらお笑いコンビ、チョコレートプラネットのネタ「TT兄弟」を連想する方も多いようです。
ただ、実際は若さゆえの焦燥感を表しているのではないでしょうか。
タイトル連呼のコーラスは先程触れたとおり、前のめりだからこそ生き急いでいるように聴こえます。
しかしこれほどまでに繰り返すということは、単純に強調したいのだとも考えられませんか?
ティーンエイジャーとはご存知の通り、10代の男女を意味します。
なかでも英語表記で語尾に「-teen」がつく13~19歳を指し示す言葉です。
それがフォーエバー=永遠ということですから、つまりは「青春は永遠に」のような意味でしょうか。
10代半ばあたりの若者は子どもを抜け出し、大人へと近づいていく年頃です。
それが故に最も自分自身のアイデンティティを見失いやすい年頃だともいえるでしょう。
自分以外の誰かに憧れて入れ替わってみたいと願う気持ち。
自分自身の存在を信じられない気持ち。
そんな自分をどうやって愛したらよいかわからずに迷う気持ち。
歌詞に綴られていたのはすべて、10代の少年少女が抱く特有の感情でした。
ただ見方を変えてみれば、これは実にポジティブな状況なのです。
それほどまでに不安定で定まっていないからこそ、この先何にでもなれる可能性を秘めているということ。
どんなことにも挑戦できますし、いつだってなりたい自分になれる可能性があるのです。
そう捉えれば、10代の青春はとても楽しく、素晴らしく、輝いている日々なのだとわかるでしょう。
1番Aメロ
望んだこと全てが
叶う訳はないよ
そんなのわかってるんだ
深い傷もいずれは
瘡蓋に変わって
剥がれ落ちるだろうか
出典: Teenager Forever/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta
先ほどまでのイントロ「Aメロ+コーラス」に続く、1番Aメロです。
J-POPでは一般的に1番の歌に入る前の演奏のことをイントロといいます。
ところがこの曲では1番に入る前に、Aメロとコーラス(間奏)がつけ加えられていたわけです。
このような構成になっている理由は後ほどご説明しましょう。
とにかくここから1番が始まります。
ただ内容は先ほどの続き。少年による葛藤の吐露が増幅している感じです。
何もかもは思いどおりにならないことくらい理解していると叫んでいます。
傷ついてもいつかは立ち直るものなのかどうか、わざわざ自問するのは心に痛みを抱えているから。
そう解釈できます。
大切なのは煌めき!
1番Bメロ
いつまでも
相変わらず
つまらない話を
つまらない中に
どこまでも
幸せを探すよ
出典: Teenager Forever/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta
続いて常田さんが渋いボーカルを披露する1番Bメロです。
声質に合ったぼやきのような歌詞になっています。
10代の頃は何もかもおもしろくないといった投げやりな感情で満たされることもあるでしょう。
そうだとしても注意してみると些細な喜びが転がっているかもしれません。
何かに反発したり落ち込んだりするよりも、少しでも楽しいことに目を向けたほうが健全です。
ネガティブな心情をどうにかポジティブな方向へ転換しようとしています。
日本の音楽シーンを危惧しながらも、文句を言うのではなく、ヌーというバンドで挑戦する。
そんな常田さんやヌーのメンバーたちの前向きな行動力も重なります。
歌詞最後が「探そう」と誘う形ではなく、自分の気持ちを宣言するような「探すよ」であることもポイント。
一緒にやろうよ!と巻き込むわけではない姿勢は、時に冷たく見えるかもしれません。
しかしこれがKing Gnu流。そして作詞した常田大希さん流なのでしょう。
自分たちはやるけれど、君たちはどうする?好きにしなよ。といったところでしょうか。
自分の人生ですから、他人の誘いを根拠に進む道を決定することは望ましくありません。
それは自分の人生ではなく、他人の人生なのです。
だからこそ常田さんは、突き放すようなフレーズをあえて使っています。
追随する者を振り払う気は毛頭ありません。増える仲間はどんどん巻き込む姿勢です。
しかし「やる」と決めるのはその人自身。判断は絶対その人自身に任せるのです。
自分の人生は自分で切り開かなくてはなりません。
厳しいようで実は大切なことを教えてくれる、常田さんの優しさに触れることができます。
1番Cメロ+コーラス
伝えたい想いは溢れているのに
伝え方がわからなくて
今でも言葉を探しているんだ
遠く散っていった
夢の欠片に
めくるめく貴方の煌めきに
気付けたらいいんだ
Teenager Forever
出典: Teenager Forever/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta
再び井口さんがボーカルの1番Cメロ、そしてコーラスに続く部分です。
このCメロが一番J-POPの歌モノらしいメロディーラインになっています。
つまり基本的にはここがサビという話になるでしょう。
的確な言葉にならずに叫ぶ、ぼやくというのも若さの象徴かもしれません。
Aメロで叫び、Bメロでぼやきを表現し、Cメロで冷静に俯瞰しています。
それでも言葉を探すのは、理解し合いたい想いがあるからでしょう。
自分が嫌い、夢は叶わない、心が痛い、おもしろくない。これらが今までに列挙された心情でした。
すべてが闇のように感じられる10代のあなたにも煌めき(きらめき)=光を探し出してほしい。
このCメロで伝えたい想いとは自分自身の煌めきに気付くことが大切という話でしょう。
煌めき
さて、この「煌めき」もヌーの曲では重要なキーワードです。
溢れ出した涙のように
一時の煌めく命ならば
出典: Prayer X/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta
こちらはアニメ「BANANA FISH」のエンディング曲にもなった「Prayer X」の冒頭部分。
ここに常田さんの人生観が描かれていると解釈することもできるでしょう。
命は期間限定の煌めきではないか。
涙のように儚くも美しくもある。
意訳してみました。
断定はしておらず、仮定の話になっていますが、要するに「命=煌めき」と捉えているイメージです。
きらめくネオンが
溶けて NIGHT POOL
出典: NIGHT POOL/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta