過去と今と未来をつなげて
自分が歩んできた道が時代の1ページとなる感慨。
上沼恵美子さんの「時のしおり」はその思いが歌詞に綴られています。
現地のキラキラとした状況が、そのまま電波に乗って伝わったTV画面。
何時間も並んでやっと着いた頃には疲れていたけれど、心はときめいていたこと。
その時その時がフラッシュバックのようによみがえります。
まずは上沼恵美子さんの素晴らしい歌声を堪能してください。
安定した歌唱力は、知らないうちに楽曲の世界に連れて行ってくれます。
時代を順番に追って
体験をしたその時には、様々な感情があったはずです。
でも、過去にあったことを1つ1つ懐かしむように歌が始まります。
上沼恵美子さんの落ち着きある声の、なせる業でもあるのでしょう。
時代の1ページに挟まれた歌声のしおりは、聴き手をあの日に導いてくれます。
世界の目が集まった日々
あれは昭和の三十九年
希望を灯した 聖火台
出典: 時のしおり/作詞:田久保真見 作曲:南乃星太
戦後の昭和を代表する出来事が最初に登場しました。
まずはこの時にあったことを確認しましょう。
1964年東京オリンピック(1964ねんとうきょうオリンピック)は、1964年(昭和39年)10月10日(後の体育の日)から10月24日までの15日間、日本の東京都で開かれたオリンピック競技大会。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/1964年東京オリンピック
別名「平和の祭典」と呼ばれる世界的なスポーツ大会が行われました。
世界中のトップアスリートたちが日本に集結。
その戦いぶりが世界に向けて放映されたのです。
開会式で「聖火台」に灯された火は「希望」そのものに見えたのでしょうか。
地球と日本国内を大勢の人々がつないで会場に到着した火。
それを見上げる人々すべての心を1つにしました。
手にした平和と発展がこの後も続くことを実感できた瞬間だったのでしょう。
毎日がお祭りのような日々
そして 昭和の四十五年
両手を広げた 太陽の塔
出典: 時のしおり/作詞:田久保真見 作曲:南乃星太
日本万国博覧会(にっぽんばんこくはくらんかい、英:Japan World Exposition, Osaka 1970)は、1970年3月15日から9月13日までの183日間、大阪府吹田市の千里丘陵で開催された国際博覧会。高度経済成長を遂げたばかりの活気ある日本で開催された。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/日本万国博覧会
世界中の国々が知って欲しいことや自慢したいことを、創意工夫で展示をする一大イベントが開かれました。
昭和39年に沸き起こった高揚感はそのままに、このイベントにつながったのでしょう。
歌詞に出てくるモニュメントも調べました。
テーマ館の一部として岡本太郎意匠による「太陽の塔」が作られた。現在も残され、万博記念公園のシンボルとなっている。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/日本万国博覧会
前衛的アーティストによる作品は今も目にすることができます。
時代を経て見る側の印象は変わるでしょう。
でも左右に手を「広げた」姿に変化はありません。
それは、会期中の賑わいを一緒に喜んでいる姿にも見えます。
すべてが終わった今は、過去を受け止めているようにも映るのです。
もうあのような熱い日々は戻らないことを示唆しているのでしょうか。
イベントを象徴していた作品にある口をつぐんだままの顔。
「太陽」という名前をもらったけれど、遠くにある希望を見る目がそれを物語っています。