たくさんの人と出会い、畏れたり憎んだり様々な感情を飲み込みながら、
いつか愛を知っていくのだと彼女は言います。
だから泣いている女性に向かって、「その涙でもう一度生まれ変われる」と励ましているのでしょう。
私の胸で泣いてもいいよと言われているような、そんな途方もない安心感を感じる歌詞ですね。
誰もが祝福されて生まれてきたはず
Remenber生まれた時
誰でも言われた筈
耳を澄まして思い出して
最初にきいたWelcome
Remenber生まれたこと
Remenber出逢ったこと
Remenber一緒に生きてたこと
そして覚えていること
出典: 誕生/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき
好きな人に選ばれないと、自分の全てを拒絶されたように思えて心は傷だらけになるものです。
でも生まれた時に受けた祝福を思い出してほしいと彼女は歌います。
welcomeとは「歓迎」という意味を持つ言葉。
「この世界にようこそ!」と笑顔に囲まれながら誕生したかけがえのないあなたの価値を忘れないでほしいと歌ってくれるのです。
時が流れて、愛を知ったことを知る
振り返る暇もなく時は流れて
帰りたい場所がまたひとつずつ消えてゆく
すがりたい誰かを失うたびに
誰かを守りたい私になるの
わかれゆく季節を数えながら
わかれゆく命を数えながら
祈りながら嘆きながらとうに愛を知っている
忘れない言葉はだれでもひとつ
たとえサヨナラでも愛してる意味
出典: 誕生/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき
2番となる歌詞は、少し時が流れた場面を切り取った内容です。
あわただしく過ぎる時間の中で、また恋をして失うことを繰り返しているうちに、誰かを守りたいと思える強さを身に付けていくと彼女は歌います。
季節はいつのまにか迎えるものではなく、過ぎ去っていくものになり、
出会うよりも別れを告げなければいけない命が増えていくのも年齢を重ねた証です。
そんな命に祈ったり、別れを嘆いたりしていくうちに、いつのまにか愛を知っている自分に気付くのでしょう。
「とうに愛を知っている」は、1番の歌詞「いつか愛を知ってゆく」と呼応しています。月日が流れて変化したことも読み取れる一文です。
思い出せなかったら私がいつでも
Remenber 生まれたとき
誰でも言われたはず
耳を澄まして思い出して 最初に聞いた Welcome
けれどもしも思い出せないなら
私 いつでもあなたに言う
生まれてくれて Welcome
出典: 誕生/作詞:中島みゆき 作曲:中島みゆき
この最後のフレーズは号泣必至の部分です。ここまでグッとこらえてきたとしても、涙腺が一気に崩壊してしまうでしょう。
傷つきすぎたり、年を重ねたりして思い出せなくなった人生最初の祝福。それを彼女はいつでも言ってくれるといいます。
思わせぶりでもなく、含みもないストレートな歌詞です。それだけに聴く人の心にも直球で響くのでしょう。
人とは天涯孤独な存在?
ひとり
それでは「誕生」の歌詞を改めて読み込んでいきましょう。
1番の歌詞の出だしは「ひとり」について描写されています。
人は確かにこの世に誕生したときは「ひとり」です。
でも、そこには必死になって産んでくれたやさしいお母さんがいます。
そして我が子の誕生今か今かと待ちわびた、お父さんもいます。
もし出産が難産だったら、我が子の誕生はよりひとしおになるはずです。
人は決して「ひとり」ではありません。
いずれ我が家から巣立つときがきても、人の絆は失われないのです。
強気でも健気でも、いいのです。
泣きたくなったら、泣けばいいのです。
だって人はそんなに強くなれないから。
生来の淋しんぼだから、人は誰かにすがれるのです。
恋
そして恋も、ひとりじゃできません。
誰かを好きになって思いをぶつけたくなる。
その告白のときのどうにも例えられない胸の高まり。
熱くなる頬。ドキドキする脈拍。
失敗したっていいじゃないですか。
だってそこからまた新しい何かが誕生するんですから。
泣きたくなったら、お母さんに甘えなさい。
自分が「ひとり」ではないという実感がこみあげてきます。
涙を流せば、スッキリします。