[Alexandros]記念すべき第1枚目のシングル「city」
バンド名の変遷
「city」は、2010年発売の[Alexandros]通算1枚目のシングルです。
[Alexandros]は2014年、バンド名を[Champagne]から現在の[Alexandros]に改名したという経緯があります。
改名に伴い、[Champagne]時代にリリースされた作品の名義もすべて[Alexandros]に変更されました。
今回ご紹介する「city」も、当初[Champagne]名義で発売され、2014年以降[Alexandros]名義となっています。
そして2018年、バンド名の表記を[Alexandros]から全大文字表記の[ALEXANDROS]に変更されました。
そんな経緯はあったにせよ、「city」は[Champagne]・[Alexandros]の記念すべき1stシングルです。
ちなみにバンド名の最もポピュラーな略称は”ドロス”。ファンの方は”ドロスと呼ぶ場合が多い印象です。
[Alexandros]は歌詞が全編英語の曲も多い中、「city」はほとんどが日本語で書かれた曲です。
1stシングルとはいえ、[Alexandros]の世界観はすでに確立され、魅力全開です。
それでは[Alexandros]の原点とも言える「city」の歌詞を紐解いていきます。
英語部分の訳詞は筆者によるものであり、必要に応じて直訳でなく意訳となる場合があります。
さっそく歌詞を見ていきましょう。
イマジネーションの中を漂う浮遊感
光と言葉のなかで見失った自分自身
Light 光る
街にこうぎらぎらとした
他人 大人を教える
Words 泳ぐ
頭の中グルグルと
迷い 戸惑い 彷徨いながら
ここはどこですか
私は誰ですか
出典: city/作詞:川上洋平 作曲:川上洋平
短い言葉の羅列によりやや抽象的な印象の曲冒頭。
「Light 光る」という言葉からリスナーのイマジネーションが徐々に広がっていきます。
ここで「光る」のは街の明かりであり、他人・大人のぎらぎらとした光です。
「Words 泳ぐ」、言葉が泳いでいます。
言葉が泳ぐのは主人公の頭の中。
まっすぐ進むのではなく迷い、戸惑い、彷徨いながら泳いでいます。
頭の中の言葉の迷いはすなわち、本人の迷いです。
自分の居場所も、自分が誰かも分からない程、混乱した状況。
視界には何種類もの光が交錯し、頭の中の言葉たちに翻弄される。
短い言葉の連なりから混沌としたイメージが生まれます。
そして光と言葉に翻弄され自分の存在認識すら危うい中の、独特の浮遊感が漂います。
言葉を見失い言葉に溺れる
溺れる言葉に翻弄される「僕」
君の涙疑って
言葉の中確かめた
何も見つからずに僕はまた言葉を戻した
僕は何を言いたくて
この場所を選んだのだろう?
首から垂れ下がるIDが認証されずに
言葉が溺れて
心がそれを助けれずに
出典: city/作詞:川上洋平 作曲:川上洋平
「君」の流した涙を疑わずにはいられない「僕」。
涙の真偽を確かめるべく言葉の中を確かめてみても、何も見つからない。
疑ったものの、確信を得られない「僕」は「君」に向けた疑いの言葉を言わずに飲み込みます。
自分が何を言いたいのか分からない。
なぜここいるのかも分からない。
それは冒頭の、ここはどこで、私は誰なのかという問いに繋がっていきます。
IDが認証されずにゲートが開かない。
「僕」は自分の進むべき道、表現すべき事を見つけられません。
言葉が溺れていくのに、自分はそれを助けることができない。
自分の居場所や存在すら不確かな世界で、「僕」は今も言葉に翻弄され続けています。
自分自身を見つけ出す時
僕は何を言いたくて
この場所を選んだのだろう?
何も見つからずに また 元のふりだしに戻った
Believe 誰にもハイハイと
頷いてはいけないのかな
It's time to know
私は誰誰であり、何を欲しているかを
出典: city/作詞:川上洋平 作曲:川上洋平
繰り返される、自分は何を言いたいのか、どうしてここにいるのかという自問自答。
自問自答の結果、結局何も見つからずにふりだしに戻ってしまいます。
答えが得られなかった自問自答の中でも、気付いたことがあります。
誰にでも迎合してはいけないのかもしれない。
その場を取り繕って深く考えずに他人の意見に同調していては、いつまでも自分は見つからない。
そして、そろそろ知るべき時がきていると「僕」は感じています。
自分が誰で、本当に求めているものはなにか、ということを。