「ボカロP・ハチ」から「米津玄師」へ
米津玄師は1991年徳島県生まれ。18歳の頃、「ハチ/HACHI」の名でニコニコ動画にボカロ曲をアップし始めます。
2010年に発表した「マトリョシカ」がわずか1か月で再生回数100万回を達成し、一躍有名ボカロPに。
ボカロ曲を発表していたころから、作詞・作曲に加えて動画で使うイラストも自作していました。
2012年、ニコニコ動画のクリエイターが設立したレーベルから、本名の米津玄師でアルバム『diorama』を発表。ボカロを使わず、自分の声で楽曲の発表を始めました。
2013年にはユニバーサルシグマからシングル「サンタマリア」でメジャーデビューを果たし、初ライブも敢行。
2016年にはソニーミュージックレコーズに所属。現在、CMや映画、アニメに続々と楽曲が起用され、もっとも注目されるアーティストの一人です。
ここ1、2年で露出度が急に大きくなり、「ハチは知ってたけれど、米津玄師が同一人物だと知らなかった」、または「米津玄師を知ってから、ハチのことを知った」という人もたくさんいます。
初音ミクをはじめとするボーカロイドの声を使ったハチ名義の曲と、自身の温かみのある声を使った楽曲では印象が大きく異なります。
ハチの曲が刹那的・無機質なイメージなのに対し、米津玄師の曲は繊細・青さを感じさせます。
ハチのボカロ名曲
ハチの名曲「マトリョシカ」はミク&GUMIが登場
2010年8月、ハチの名前で発表されたボカロ曲。一度聴いたら忘れられない中毒性の高いメロディーが人気です。
ボーカロイドの「初音ミク」と「GUMI」を使って制作されたことから、青いツインテールのミクと緑のショートカットのGUMIの自作イラストが動画に登場します。
メロディーはなんとなくロシア民謡っぽい旋律なのですが、イラストはストリート系のミクとGUMI。
歌詞は「フロイド?ケロイド?鍵を叩いて」など言葉遊びが徹底しています。このチグハグさがマトリョシカの魅力なのです。
GUMIを退廃的な(?)ヒーローに仕立てた「パンダヒーロー」
退廃的で、ヤバい雰囲気しかしない「パンダヒーロー」。「白黒曖昧な正義のヒーロー」だから「パンダ―ヒーロー」というのは、ハチが得意とする言葉遊びの世界です。
目の周りをパンダっぽく黒くして、ボーカロイドのGUMIのイラストをパンキッシュに描いています。
表現の幅を広げた「米津玄師」デビュー以降
本名でデビューし、自分の歌で楽曲を発表するようになった米津玄師。
ハチのころからバツグンの言語感覚を発揮していましたが、より繊細な、そして文学的な風合いを増しているように感じます。
彼の描く絵もボーカロイドの姿を借りた表現から、自分自身の世界を表現する方向へと変化しているといえるのではないでしょうか?
「ゴーゴー幽霊船」の楚々とした美少女
本人作のモノクロ線画をマンガのコマに仕立て、フキダシに歌詞を入れたPV。歌詞に出てくる「ちょっと病弱なセブンティーン」に当たる女の子が、楚々とした美少女なのに無表情に描かれていてイイ感じです。
彼女の周囲を囲む、テレビの箱をかぶったアンドロイドや黒い影たちも不気味なのにかわいい。
こうした「楚々としているのに無表情」「不気味だけどかわいい」といった、相容れないものがひとつになっている感じは、この歌の世界をよく表しています。
そもそも、タイトルからして「ゴーゴー」と「幽霊船」というミスマッチな取り合わせなのですから。