主人公はきっといつもこう思っていたのでしょう。
とてもせつない気持ちが伝わってきますね。
もし彼女が振り返ってしまったら、一瞬にして2人のストーリーは書き変わることでしょう。
友達としてではなく、恋愛対象としての相手が突然現れるのです。
1つの行動で、こんなにも筋書きが変わってしまうことは他にあるでしょうか?
もしかしたら、そんなことの連続なのかもしれません。
だからこそ、主人公はとても慎重に彼女に接している様子が分かります。
彼は物わかりが良すぎるくらい良すぎるのではないでしょうか。
ずっと
まるで立てかけたほうきみたいに
壁にもたれかかりながら ただ
君の後ろ姿を見送るときだけ
嘘をついてない僕でいられる
出典: 君の後ろ姿/作詞:槇原敬之 作曲:槇原敬之
彼女が去ったあとの主人公は、掃除道具のようにそっと佇んでいます。
家の壁と一体になるくらいに、さりげなく存在しているのですね。
主人公はどこか無理に友達を演出していたのかもしれません。
1人の男性としてみられないように、フレンドリーに振る舞っていたのだと思います。
とても優しい人物のようなきがします。
きっと彼女も、そんな彼に安心して相談事などもできたのでしょう。
そうやってこの2人の友情はずっと続いてきたのかもしれません。
彼の長い時間をかけた努力と優しさが窺えます。
越えられない
いつかの夕日
乾いた風が運んできた
遠くの無邪気な子供の笑い声
初めて恋したあの頃とよく似た
ぎこちない夕暮れだ
出典: 君の後ろ姿/作詞:槇原敬之 作曲:槇原敬之
季節はいつ頃でしょうか?
軽やかな風のイメージでいくと5月頃の空気感がします。
主人公は彼女と2人で歩いているようです。
夕日がますますせつない気持ちにさせているのではないでしょうか。
子供達の遊ぶ声が聞こえてくる平穏な世界。
初恋のようにときめきを感じたあの時と、同じ空気が広がっているようです。
人を好きになると、世界が美しく見えることがよくあると思うのです。
きっと主人公も、彼女へのときめきで世界が輝いて見えていたのかもしれません。
友達装うのはとても辛い状況にも思えます。
楽しい時間
笑ってくれる事が嬉しすぎて
馬鹿なことしたり話している
一緒に笑ってる間に恋してることも
忘れてしまえるならどんなにいいのに
出典: 君の後ろ姿/作詞:槇原敬之 作曲:槇原敬之
主人公と彼女の話は弾んでいるようです。
好きな気持ちの反面、その気持ちがバレないように場を盛り上げようとする主人公。
せつないですがその気持ちはよくわかります。
自分が道化になって、笑われることでこの友情は保たれているのだと思うのです。
彼がそうすることによって、きっと彼女は安心することでしょう。
それがわかっているから、真剣な話はできないのではないでしょうか。
彼の胸の内を知ってしまうと、この談笑の場面もとても辛く思えます。
好きなんだと告白できないのはなぜなのでしょうか。
それでも
どうしても
振り返らないことを願うけど
一度も振り返ったことなんてない
君の後ろ姿を見送っている
笑ってしまうくらい片思いだ
出典: 君の後ろ姿/作詞:槇原敬之 作曲:槇原敬之
主人公は彼女と別れる時、「振り向かないで」と願っています。
でも、そんなこと当たり前といわんばかりに彼女は一度も振り返ったことはありません。
これはかなりがっかりすることですね。
彼女を好きだからこそ、一度くらい振り向いて欲しいという気持ちもあるのだと思います。
主人公はそんな自分を自嘲しているようです。
「でも好きなんだよな。」と開き直っているようにも見えます。
こんなに想っているのに、友達を越えられない。
こんなに想っているのに、全く気づいてもらえない。
むしろそれは奇跡的なことなのかもしれません。