街はまた走り出す
人はまた口を閉ざす
邪魔されるレボリューション
汗もかかない人達に
桜がこの空を染めてゆく
毛虫は今蝶になった
出典: ワンモアタイム/作詞:斉藤和義 作曲:斉藤和義
「街」という言葉は、歌い手が現在、大人になった自分に戻ったことを示しています。
一瞬想いが遠くに飛んで、ふと我にかえる。
すると前にいる人たちはみんな無口で、果てしない夢なんてそんな気配はみじんもなく...。
「邪魔される」という言葉に、思いがけず強い感情がこもっています。
大人になると、何事もそう思い通りにはゆかず、何もかも、手順を踏んで...。
すこし苦い感情が、ビルの中で冷静沈着な人々の灰色の群れを前にほとばしる...。
なにか悲しくせつなくて、桜を見上げてみる。
時は夕暮れ時、空に桜の花びらが映える...。
そしてふと、昔幹にいた毛虫のようだった自分が、いまはこうして大人になって働いていることに気づく。
時の流れが分かるように描かれています。
もう一度
ボクがいればキミがいれば
叶えられるさ
もう一度 もう一度
この道を歩いて見ないか
この足で 汗かいて
One more time! One more time!
You & Me!
出典: ワンモアタイム/作詞:斉藤和義 作曲:斉藤和義
仕事が終わり歌い手は家に戻ります。
そうして誰もいない一人暮らしの部屋で、もう一度朝方の夢の幻を思いだすのです。
キミに会いたい!
でも今の自分には、会える希望はないし...。
それでも、夢でもいいからもう一度、もう一度だけ、あいつと並んで歩きたい!走りたい!
自由に世界を駆け回りたい!
そしてあの頃の自由な気持ちを取り返したい!
どんな夢でも叶えられるとは限らないけれど、叶えたいと思う心。
それが大事だと歌うのです。
そんなことを歌い手は思ったに違いないのです。
だからここで、もう一度、歌い手は前を向いて、歩き始めようとしているのです。
未来への希望
2番はすこしせつないし悲しいけれど、ラストは明るく希望を感じさせます。
あの時代に戻りたいと思うのは、その記憶が、ボクを元気にしてくれるからです。
過ぎたときは戻らないものです。
でも過去は現在の自分とともに、自分の中に生きている。
あのころのキミが、ボクが、自分の中にまだ生きているのです。
ある哲学者は、時は流れない。積み重なってゆく、といいます。
過ぎた時間は、永遠に失われてしまったものではない。
それは、私たちの中に、生きているのです。
歌い手はもう一度!と歌う。
叶わなくても、そう思うことで、キミの記憶と共に、また前に踏み出せる。
そんな気持ちが伝わってくるのです。
最後に
大人な歌詞
ワンモアタイムの歌詞、どうでしたか?
子供向けの歌かと思いきや、2番など意外に苦み走った大人の世界も垣間見え、深さをたたえています。
自分の経験とも重なって、斉藤和義の等身大のリアルな気持ちが歌の中に書き込まれているようです。
子供の頃の友人と大人になってからも付き合える幸運な人はそう多くない。
地元に帰れば何人かとは顔を合わせても、中にはちらほら、会えなくなったままの人もいる。
それが普通ではないでしょうか。
そんな時代にあいつどうしたかなあ、とふと思い出すような、そんな親友があなたにもいたとしたら...。
この歌に込められた「会いたい気持ち」は、しっかり伝わっていることでしょう。
守備範囲の広さ
この歌に表れているように、斉藤和義という人は、器用にテーマとなった世界に合わせた作品を書きあげます。
テレビドラマから、ちびまる子ちゃんまで、守備範囲の広さ!
それは広い視野と、柔軟な感受性のたまものだと思います。
どの歌もそれでいて、しっかり斉藤和義の世界になっています。
それにもうひとつ、斉藤和義は、コラボの名手ということもあります。
中村達也との、マニッシュボーイズの活動に加え、近年はカーリングシトーンズにも参加。
さらに小説家伊坂幸太郎とのコラボ企画、「ベリーベリーストロング~アイネクライネナハトムジーク」は映画化。
コミックにもなり大成功しています。
伊坂幸太郎との対談で、『強い絆』について語っているように、人との絆を大切にする人でもあります。
それはワンモアタイムの歌の内容にも重なってくるのです。
ですからこのワンモアタイムも、けっして見落とせない、大事な一曲になっていると思います。
非常に器用な職人肌であると同時に、歌詞の世界にもなかなか趣のあるものが多い。
それをあのギターにのせて、独特の声で歌ってくれています。
映画名探偵コナン
映画はシリーズ17作目。
タイトルは「絶海の探偵」。
海をゆく大型客船上での事件を描いたもの。
そのイメージに合わせて、歌のメロディーは、明るく開放的なメジャーコードでつくられたそうです。
映画は大ヒットし、当時のシリーズ最高記録を打ち立てたそう。
探偵というのは、頭を使い難事件を解決してゆく。
ぶっきらぼうに見えて、実は緻密に曲の世界を組み立てていく、斉藤和義の世界に通じるものがあるかも。
コナンと斉藤和義、名コンビになれるかもしれませんね!