There goes my baby
She knows how to rock 'n' roll
She drives me crazy
She gives me hot and cold fever
Then she leaves me in a cool cool sweat
出典: 愛という名の欲望/作詞:Freddie Mercury 作曲:Freddie Mercury
「She」という単語に注目してください。
この時期はまだフレディ・マーキュリーのセクシュアリティは秘密でした。
社会的にもLGBTであることをカミング・アウトするための障壁は高すぎる時代です。
また今の時代であっても本人の意に合わないカミング・アウトはされるべきではないはず。
いずれにしてもフレディはこの歌詞を男女のラブソングへと昇華させます。
「オレのベイビーが歩いている
彼女はロックンロールってものを知っているのさ
彼女はオレを狂わせて
オレを熱くさせたり冷たくさせたりする
そうして彼女はオレを冷たい冷たい汗の中に置き去りしてゆくのさ」
女性讃歌であり、ロックンロール讃歌でもあります。
HOTな女性ばかりが描かれがちなロカビリーの特徴をフレディはうまく捉えているのです。
この曲はエルヴィス・プレスリーへのオマージュ。
ただし、フレディがバンドで演奏していたのはリトル・リチャードなどです。
ロックンロールの産声とフレディ
ロックンロールの誕生は同時多発的にアメリカ合衆国の到るところで産声をあげました。
たくさんのミュージシャンがそれぞれブルース、カントリー、それぞれ違った出自からロックを生みます。
海を超えてイギリスの少年少女たちもこぞって夢中になりました。
やはりレコードを買い漁れる経済的な余裕がないと中々才能が育まれなかったようです。
ローリング・ストーンズメンバーなどではリーダー格のブライアン・ジョーンズが代表的な例。
彼はアメリカからたくさん輸入盤を買い込み聴き込んでいく中で才能を伸ばしてゆきます。
フレディ・マーキュリーは1963年に一度インドから故郷ザンジバルに戻りました。
翌年、ザンジバル革命が起きます。
故郷の血の嵐の中から亡命してイギリスに移り住みました。
ときは正にブリティッシュ・インヴェイジョンと呼ばれる英国ロックのアメリカ進出の時代です。
ロカビリーから洗練されたロック、ロックンロールを肌で感じました。
フレディ・マーキュリーはその後のモダンになったロックの先駆者です。
それでもエルヴィス・プレスリーのようなロカビリーは幼少期のよき想い出だったのでしょう。
1979年に幼少期に戻るような「愛という名の欲望」を発表します。
ただし、幼少期のフレディにロックンロールと大人の誘惑を教えた女性がいたかは分かりません。
「愛という名の欲望」には想像力で創り上げた世界観がうかがえます。
青少年の夢を描く
独り立ちした男になりたい
I gotta be cool, relax, get hip
And get on my track's
Take a back seat, hitch-hike
And take a long ride on my motorbike
Until I'm ready
Crazy little thing called love
出典: 愛という名の欲望/作詞:Freddie Mercury 作曲:Freddie Mercury
たくさんのイディオムが詰め合わせという感じです。
英語の勉強には非常にためになるところ。
歌詞を和訳したので気になるイディオムがどんな意味か読んでみてください。
「オレはクールになって、リラックスして、流行に乗るぜ
そして自分の軌道に乗るんだ
控えめになって、ヒッチハイクのように他人の世話になるさ
オレのバイクでずっと走り続けようか
オレの準備ができるまでね
愛って名前のクレイジーでちっぽけなこいつとね」
短い英熟語が長い日本語になるのが和訳の野暮なところです。
しかし本来は日本語にはない表現を移し替えるのは至難ですのでご容赦ください。
この歌詞を読んでいると少年期、青年期の男の夢の単純さが見えてきます。
早く独り立ちした男になりたい青少年の希望のようなものが清々しく甦るのです。
ジョン・レノンがこの曲を愛したのは、こうしたラインに見られる若き日の夢に惹かれたのでしょう。
ちなみに「愛という名の欲望」はジョン・レノンが「ダブル・ファンタジー」で復活する直前にリリースです。
クールになり、流行に乗り、控えめになっても恋愛と折り合いがつくとは限りません。
それでも一人前になった男性でないと大人の恋愛の資格はないでしょう。
若い恋愛から大人同士の愛へと段階を踏んでゆく年頃の男性の気持ちをフレディは代弁します。
だからこそこの曲は若々しいのです。
黒ずくめのメンバーとMV
ブライアン・メイがテレキャスターを弾く
I gotta be cool, relax, get hip
And get on my track's
Take a back seat (ah hum), hitch-hike (ah hum)
And take a long ride on my motorbike
Until I'm ready (ready Freddie)
Crazy little thing called love
出典: 愛という名の欲望/作詞:Freddie Mercury 作曲:Freddie Mercury
リフレインになるのですが若干歌詞が違います。
レスポンスというか合いの手のようなワードが入っているのです。
ライブなどではコール・アンド・レスポンスの形態になり盛り上がったラインでしょう。
この曲ではギターを弾くフレディ。
エレ・アコースティック・ギターやテレキャスターを使用します。
また「愛という名の欲望」のMVではブライアン・メイが黒いテレキャスターを弾いているのです。
これはブライアンのギターではなくロジャー・テイラーから借り受けたもの。
しかし録音された音源もテレキャスター固有の音ですので間違いなくあのギターを使用しています。
テレキャスターはソロ・ギターになるとかなり細い音になるのですぐ聴き分けられるようになるでしょう。
ブライアン・メイが自身で造った「レッド・スペシャル」を録音で使用しなかった例は滅多にないです。
MVはこのページからリンクを貼りましたのでぜひご覧ください。
黒い革ジャン・革パンツに身を包んだフレディ・マーキュリーの姿が印象的です。
他のメンバーも黒尽くめでブライアン・メイは黒いサングラスをしています。
和訳は重複になりますので省略いたしました。
ちっぽけでもクレイジーな愛
「ボヘミアン・ラプソディ」の未発表動画
This thing called love, I just can't handle it
This thing called love, I must get round to it
I ain't ready
Ooh ooh ooh ooh
Crazy little thing called love
Crazy little thing called love, yeah, yeah
出典: 愛という名の欲望/作詞:Freddie Mercury 作曲:Freddie Mercury
クライマックスの歌詞です。
冒頭の歌詞のリフレインになります。
和訳を添えます。
「愛って名前のこいつはオレの手に負えない
愛って名前のこいつと何とかやらなきゃならないのに
オレにはどうしようもないぜ
おお、おお、おお、おお
愛って名前のクレイジーでちっぽけなこいつ」
愛は手に負えないものなのに「ちっぽけ」だと誇張します。
青年期の男の強がりでしょうか。
あるいは小さなものであるけれどもクレイジーだから何をされるか分からないという表現かも。
いずれにしてもフレディ・マーキュリーは少年の心を取り戻してこの曲を書いたはずです。
一方、MVでは全身レザーで決めてかっこいい大人を演出します。
ロックンロールへの憧憬をヴィジュアル化するとあのようになるのでしょう。
映画「ボヘミアン・ラプソディ」では泣く泣くカットされた映像の一部がYouTubeで公開されています。
実際のライブ・エイドでの演奏との比較もできる動画で大変面白いです。
短い動画ですのでぜひ視聴ください。
このページからリンクを貼りました。