動けない理由

それは君を待っているから

何処へも行けず
呼吸さえせず
君を待っている

出典: Breathe Again/作詞:Shota Shimizu 作曲:Shota Shimizu

短い言葉が並ぶ、非常にシンプルな歌詞が特徴的ですね。

この記事のタイトルにもあるとおり、この物語の舞台は

というより、もう夏が終わる8月末を想像してしまいます。

おそらく主人公はいま1人でいるのでしょう。

自分が愛した大切な人のことを、ただじっと黙って待っているようです。

何処かで待ち合わせでもしているのでしょうか。

相手が到着するまで、待ち合わせに指定した場所からは一切動けません。

いつ来るのかな…そんな風に高鳴る胸の鼓動。

会うたびにまだ緊張してしまう、そんな相手の到着を目前に控え、息をすることさえ忘れています。

甘酸っぱい恋愛の1シーン。思わずキュンキュンしてしまいますね。

けれど君はこない

戸惑いながら
疑いながら
だけど覚えてる

出典: Breathe Again/作詞:Shota Shimizu 作曲:Shota Shimizu

この歌詞を読んでみると…違和感を覚える人もいるでしょう。

そう、先ほどわたしが綴った解釈通りに読み進めると、話の辻褄が合わないのです。

ただの待ち合わせなのに、ここまで心が不安定になるのはいったい何故なのでしょうか。

その理由は、2人の現在の関係性にありました。

そもそも2人は…

実は冒頭の歌詞、待ち合わせ風に解釈しましたが、そもそも前提がズレていたのです。

主人公は愛する相手と、どこかで会う約束をしていたわけではありません。

むしろ、もう2度と会えないかもしれない。

それでもまだ君が近くにいて、すぐに会える気がして、だからその場から進めずにいただけでした。

君が近づいてくる気配を感じられるように、全ての神経を研ぎ澄ましている主人公。

自分の呼吸の音でさえ気になってしまい、つい息をすることも忘れています。

これはもちろん、そのままの意味に捉えることもできますが、別の角度からも見てみましょう。

主人公はきっと、もう愛する相手と会えないことを心のどこかで察しているのです。

そんな現実への戸惑い。離れていった君への不信や、君を手離してしまった自身への疑心

いつまでもその呪縛から逃れることができません。

新しい出会い、新しい恋に向けて、一歩を踏み出すことができていないのでしょう。

主人公が情けないだけのようにも見えますが、愛しい君がそれほどまでに魅力的だったとも考えられます。

これほどまでに主人公の心を鷲掴みにした相手とは、いったいどのような存在なのでしょうか。

そしてその相手との夏の思い出とは、いったいどのような物なのでしょうか。

抱き寄せた君の身体

少し汗ばんだ背中に
導かれるような指先
君を追い詰めるようなKiss
繋がれたような気がしてた

出典: Breathe Again/作詞:Shota Shimizu 作曲:Shota Shimizu

とある夏の夜の風景が思い浮かびます。とてもセクシーな表現が並んでいますね。

ギュッと身体を寄せ合った2人は、きっとお互いの体温で汗をかいているのでしょう。

主人公は少し強引な口づけを交わしたのかもしれません。

しかし相手もそれを拒む様子がなかったのでしょう。

きっとより深い仲になれた…。ただの友人から恋人同士になれるかもしれない…。

主人公はそう思ったに違いありません。

しかし引用部分最後の歌詞、語尾に注目してください。

そんな気がしたんだ」と、非常に曖昧確信が持てていない表現ですね。

きっと口づけを交わした時には、100%に近い確信をもっていたのでしょう。

しかし冷静になったいま振り返ってみれば、それさえも勘違いだったかもしれないと感じています。

君は本当に存在していたのか?

I feeling like in heaven
それは夏の幻?
もう一度だけでも
消えた恋と(Breathe again)
君のいる場所へBreathe again

出典: Breathe Again/作詞:Shota Shimizu 作曲:Shota Shimizu

冒頭の英詞を和訳すると、「るで天国にいるような心地がしたんだ」です。

ひと夏の恋を経験した主人公は、その幸せだった日々が現実だったのか疑っているようですね。

もしかして、愛した相手の存在さえも幻覚だったのではないかと、悲しい気持ちで満たされています。

そんな疑いや悲しみの中で、もう1度あの気持ちを味わいたいと願う主人公。

君が去ったことで恋が終わってしまっただけなのか、もはや君の存在さえも幻覚だったのか、それはわかりません。

それでも主人公のもとから消えてしまった恋を再び手に入れたいと、迷いながらも進み始めたようです。