1位はこの「LOSER」。2016年にリリースされた5thシングル「LOSER / ナンバーナイン」の1曲目です。
MVでは米津玄師自身が美しいダンスを披露し、大きな話題となりましたね。
このダンスの振り付け・指導を手掛けたのは世界的なダンサー、辻本智彦で、あのシルク・ド・ソレイユでも活躍しています。
そんな超一流のダンサーである辻本智彦に、”万人に一人の才能”と言わしめた米津玄師。
彼はよくインタビューなどでも”美しい”という言葉を使用し、自身の曲や歌詞に独自の美しさを追求しています。
その美しさへの追求が、やはりジャンルは違っても表れてくるのでしょう。
ああだのこうだの知ったもんか 幸先の空は悪天候
ほら窓から覗いた摩天楼からすりゃ塵のよう
イアンもカートも昔の人よ
中指立ててもしょうがないの
今勝ち上がるためのお勉強 朗らかな表情
出典: LOSER/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
題名の”LOSER”とは、負け犬のこと。
ここの歌詞から見えるのは、今現在存在する自分の相手と勝負しろってことではないでしょうか。
恐らくここで出てくる”イアン”はイアン・カーティスでしょう。彼はポストパンクで有名なジョイ・ディヴィジョンのヴォーカルでした。
そして”カート”は、あの伝説的なオルタナティヴ・ロックバンド、ニルヴァーナのギターヴォーカル、カート・コバーンのことだと思います。
イアンはステージで見せる激しさとは打って変わって、普段は内向的で、孤独を抱え、歌詞にも内省的なものが多くありました。
カートは少年のころから両親の離婚によるトラウマに苦しみ、やはり内向的で、曲調も暗く破滅的なものが目立ちました。
2人とも結果としては鬱病を患い、イアンは23歳、カートは27歳でどちらも自らの手で命を絶っています。
また最近では、2017年に少年のころの虐待などで、心に闇を抱えていたリンキン・パークのヴォーカル、チェスター・ベニントンが41歳でやはり自殺しています。
この3人はいずれもバンドは成功し、社会的な名声や財産も手に入れていたにも関わらず、そのような運命をたどることになりました。
地位や名声といったものが、彼らの心に抱えるものには何の救いにもならなかったのでしょう。
米津玄師にも、彼らと同じ気配を感じます。
哀しみや孤独さを抱えて生きてきて、それを捨てきることができない。
歌詞に出てきたイアンもカートも、そしてチェスターも、偉大ななミュージシャンでした。
ここの歌詞では昔の人と比べていても仕方がない、という意味の他にも、彼らにシンクロするものを感じていたのではないでしょうか。
きっと本人も無意識のうちに。
愛されたいならそう言おうぜ
思ってるだけじゃ伝わらないね
永遠の淑女もそっぽ向いて 天国は遠く向こうのほうへ
ああわかってるって 深く転がる 俺は負け犬
ただどこでもいいから遠くへ行きたいんだ
それだけなんだ
出典: LOSER/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
でもここで、思いは表さないと伝わらないことを歌っています。
それをきちんと理解していても、不器用で、どう表していいのかわからない。
だから自分は”負け犬”なんだと、そう言います。
でもこの歌では、いずれ”負け犬”は動き出します。
その運命を払いのけるかのように。
あの偉大なミュージシャンたちと同じ運命の輪が、動き出さないように。
独特で、それでいて美しい米津玄師の世界
曲調も、歌詞も、本人の佇まいも独特の雰囲気を持った米津玄師。
彼の世界に魅了される人は、後を絶ちません。
そして彼の創り出す作品はどれも美しいもの。
今宵は、その世界を十分に堪能してください。
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