焦がれる気持ちが消えてしまう

記憶というものは、いずれ薄れていってしまうものです。

誰かを強く思う気持ちでさえも、その理から抜け出すことはできません。

前のパートで「お願い、まだ思い出していたいのよ」と言う意味が、ここで活きてきます。

思いが消えてしまう前に、今すぐ抱きしめてほしいと願っているのではないでしょうか。

そうしてもらうことで、思いが消えないようにしたいのかもしれません。

抱きしめてくれないと前に進めない

あるいは、こういう解釈も面白いかもしれません。

楽曲、いわば物語が終盤を迎えるにあたって、「私」はとうとう気付きます。

自分はもう、前に進まないといけないことにです。

ただそこに思い至ったとしても、一歩を踏み出すのは容易ではないでしょう。

だからこそ、ここで抱きしめてほしいのです。

前に進もうと決めた「今」だからこそ、ハグをもらって歩き出したいということなのです。

返事がないと分かっていても気付いてほしい

気付いてよ私だけ一人のまま置いてかないで

出典: The Hardest/作詞:milet・Daisuke Nakamura 作曲:milet・TomoLow・Daisuke Nakamura

「私が一人きりなのに気付いてよ」

私の切なる気持ちで、【The Hardest】は幕を閉じます。

ここで歌われている気持ちは、楽曲で複数訪れたサビの中で繰り返されています。

しかし、最後のこの一節は、それのどれとも微妙に違うのではないでしょうか。

他のフレーズに比べてこの一文だけ、かなり口語的であるのが分かりますか。

それゆえにここには、飾らない「私」の生身の気持ちが込められているように思えてなりません。

返事があろうとなかろうと、もはや関係はないのでしょう。

「あなた」が気付いてくれるのかも、期待していないのではないでしょうか。

ただ「私」はそういう気持ちなのだということを、最後に突きつけているのです。

【The Hardest】は喪失と再生の狭間を歌っている

milet【The Hardest】歌詞の意味を解釈!なぜ今すぐ抱きしめてほしい?夜が示すものに迫るの画像

【The Hardest】に絶えず漂う、気持ちを預ける誰かを喪失する(した)ような雰囲気。

失ってしまったものに対して、それを取り戻したい気持ちも感じられます。

その一方でどこか、「再生」を匂わせてもいるのではないでしょうか。

まだ明確ではないけど、仄かなスポットライトのように道を照らすものがあります。

「私」は今そこに至りそうな、非常に微妙な位置にいるのではと感じられます。

だからこそmiletは、MVの中で一度も涙を流していません。

潤んだ瞳と物憂げな表情から、まだ迷う部分があるのは分かります。

それでも達観したようなところもあって、希望めいたものを感じます。

ただ悲しむだけの時間は、おそらくもう過ぎ去ったのでしょう。

悲しみはまだそこに確実にあるけど、それでも前を向きたい気持ちもあります。

その狭間にあって微妙に揺れ動く感情を、miletの持つ世界観が的確に表現したといえます。

今回の楽曲も素晴らしいですが、彼女の原点に立ち返るのもおすすめです。

【inside you】では、よりmilet感の強い重厚な歌声を堪能できます。

この曲を聴いただけでも、このアーティストは大物になるなという予感がするはずです。

どこか抑えた曲調で、エキゾチックな雰囲気もある【Drown】も見逃せません。

こちらは、北欧のヴァイキングを描いたアニメのEDに起用された一曲です。

アニメの世界観をよく表している楽曲でもありますので、未視聴の方は要チェックですよ。

miletの『inside you』は切ない別れの曲。しかし、同情をためらってしまうほどリアルで人間らしい心情が描かれています。最初で最後のお願いが「最初が最後」に変わるのはなぜ?!『inside you』の歌詞に迫ります!

milet(ミレイ)さんは圧倒的な歌唱力を誇る、注目の女性シンガーソングライター。アニメ「ヴィンランド・サガ」のエンディングテーマに起用された「Drown」の歌詞を紐解きます。

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