アルバムの鍵になる曲「Fallin' Angel」
「Fallin' Angel」と東日本大震災
今回紹介するAcid Black Cherryの「Fallin' Angel」は、2012年3月に発売されたアルバム「2012」の2曲目に収録されている楽曲です。2012年と言えば、マヤ暦で「人類が滅びる」と言われていた年。
作詞・作曲を担当するヴォーカルのyasuさんは、「アルバムが出来上がるのは2012年頃だから、それに絡めてアルバムを作ろうか」と当時考えていたそうです。
そう考えていた矢先、2011年3月に東日本大震災が発生しました。
日常の全てが壊され停止する中、yasuさんは「この非常事態に音楽の必要性は低いかもしれないけれど、自分が生み出せるのは音楽しかない」と葛藤を抱えながらもアルバムの楽曲を制作されたとの事。
そうして作られた「Fallin' Angel」は、アルバムにとって特に重要な意味を持つ曲です。
サバイバーズギルトとは?
この曲には、津波を連想する言葉がたくさん使われています。そして歌詞全般に漂うのが「サバイバーズギルト(survivors' guilt)」の心情です。
「サバイバーズギルト」とは、災害や戦争などで多くの人や身近な人が亡くなってしまった場合、自分だけ助かった事実に対して「なぜ自分だけが生き残ってしまったのか」と罪の意識を持ってしまう心理。
奇跡的に生き残った事実に苦しむのは、言葉に言い尽くせない苦しみです。「Fallin' Angel」では、生き残った人の苦しみを歌うフレーズが繰り返し出て来ます。ではその歌詞を解釈して行きましょう。
深い意味を持つ歌詞を解釈!
まずは1番のAメロから
I still keep calling your name.
LaLaLa…LaLaLa…LaLaLa...
I don’t care. I have no fear.
LaLaLa…LaLaLa…LaLaLa...
どうして…ねぇどうして…夢でさえも笑ってくれないの?
静かな海 割れた空 LaLaLa…LaLaLa…
涙 溢れ出して
出典: Fallin' Angel/作詞:林保徳 作曲:林保徳
冒頭の英語の歌詞を和訳してみましょう。「僕はまだ君の名を呼んでいる...ラララ」「気にしてない 恐れていない...ラララ」となっています。
登場人物は、呼びかけても返事をしてくれない愛しい人を思っているようです。「夢でさえも笑ってくれない」という歌詞から、その人にはもう現実の世界で会う事ができないのでしょう。
「静かな海」という描写から、離れ離れになったあの日の「荒れ狂った海」からは、時間が経過している事が伺えます。あの日と同じ海辺に来て、愛する人を思っているのかもしれません。
美しいハーモニーが印象的なサビ
風の中に流された唄声
瓦礫に木霊す声を聞いて
聞こえるかい? 君を呼ぶ僕の声が
LaLaLa…LaLaLa… こたえておくれよ…
出典: Fallin' Angel/作詞:林保徳 作曲:林保徳
このサビの出だしのメロディ、とても儚気で美しいですよね。サビの最初の1小節の3音は、上に5度の幅(半音7つ分上の音)でコーラスがごく控えめに入っています。
風の中に流された愛する人の声は、きっと悲痛な物であったに違いありません。愛する人が最後に声を上げた場所は、瓦礫に囲まれた場所だったのでしょう。
登場人物は、今も尚その人の名を呼び続けているようです。ごく短い歌詞ですが、短いがゆえに悲しみが深くなる内容です。
2番へと続きます
An angel fell from the sky.
LaLaLa…LaLaLa…LaLaLa…
The end of the world has just begun.
LaLaLa…LaLaLa…
どうして…ねぇどうして…終わりの刻は在るのでしょう?
予言は…世界…そして君…LaLaLa…LaLaLa… 未来を奪った
出典: Fallin' Angel/作詞:林保徳 作曲:林保徳
2番の冒頭も英語なので、まずこちらから和訳してみましょう。「1人の天使が空から落ちてきた ラララ...」「世界の終わりが始まった ラララ...」という意味になります。
解釈すると、「天使」というのは「亡くなった愛する人」を指すと思われます。そう考えると、「世界の終わり」というのは「愛する人と一緒に生きた世界は、もう滅んでしまった」という意味と捉えられますね。
「未来を奪った」のは、ここでは2通りの意味があると思います。1つは「愛する人が生きるはずだった未来」。そしてもう1つは「愛する人と共に生きるはずだった自分の未来」です。
そしてこの後、再びサビに入ります。歌詞が少し変わるので、そちらも載せますね。