楽曲について
THE ORAL CIGARETTESの楽曲『Naked』。
タイトルから想起されるままに、現代人の心を丸裸にした痛烈なリリックが魅力的です。
加えて、今までのTHE ORAL CIGARETTESとは異なる新たな音楽性で攻めている楽曲でもあります。
2020年4月15日に公開された当楽曲は、公開3か月後にして34万回再生を突破。
自身が「第2章」と掲げるアルバム【SUCK MY WORLD】の収録曲となっています。
オーラルの様々な表情が混在する当アルバムにおいて、この楽曲が持つ色は大きく影響しています。
人間の闇を謳い上げる彼ららしい、鋭利でオブラートに包んでいない歌詞の1つ1つを紐解いていきましょう!
タイトルについて
タイトルにある『Naked』とは「裸」という意味があります。
私たちの胸の内に秘めている、どす黒い感情を曝け出そうという意味ではないでしょうか。
SNS上や友人関係上においてどこまでも隠しきった本性が暴かれていく歌詞に注目です。
人間の醜態
欲望のままに
いつかの君が言ったんだ僕に
友達があなた好きなんだって
最近DMしか知らないから
正式連絡先教えてよ
出典: Naked/作詞:山中拓也 作曲:山中拓也
ここの歌詞は友達を利用して自己の欲求を満たそうとする人間の構図が描写されています。
相手から放たれる「なんだって」という全く芯の通っていない言葉。
友達に対しても、こちらに対しても何一つ思いやりがこもっていない欲望の魔物といえます。
現代では主流となっているDMとは「ダイレクトメッセージ」の略称のこと。
SNSなどにおいて個人アカウント間で直接やり取りが可能な機能のことを指しています。
そのDMよりさらに一歩踏み込んだやり取りの方法こそが、LINEや電話番号。
本当は友達でも何者でもない知り合いを、友達としてこちらに近づいてこようとするのです。
行動から隠しきれていない滲み出る心の黒い液体。
利己的で自己中心的な行動が描かれた歌詞に引いてしまいつつも、どこか共感を覚えます。
私たちも部外者ではない
彼女は友達を使っている
自分の欲望をさらしている
ご飯に行こうと言ってる君の
裏で友達は仕事してますが?
出典: Naked/作詞:山中拓也 作曲:山中拓也
自分の欲求が満たされるなら、誰がどうなっても構わないという心情。
「友達」と呼ばれていた人物も、今回限りで用いられた道具に過ぎないのです。
まるで対等の人間のように見ているとは思えない高圧的で卑下している君の姿。
このように人間の真っ黒な部分が謳い上げられている歌詞に少し身構えてしまいます。
しかしながら、決して他人事のことではなく、現代で溢れかえっているのだと解釈出来ます。
先ほどの歌詞にもあったように、SNSの用語をそのまま歌詞に起用するあたりが痛快。
聴いているあなたに「思い当たる節があるのでは?」と直接問いかけているといわんばかりの歌詞です。
実際に相手が見えないからこそ、より自分の欲望に飲み込まれそうになっていく。
歌詞の序盤から私たちを裸にするどころか、心まで抉り取ってくるような歌詞です。
弱さと醜さで出来ている
詰まりきった想い
Ah…Is it Naked?
そろそろウンザリ
ねぇバラしても
損傷ないよね?
悪くないよね?
出典: Naked/作詞:山中拓也 作曲:山中拓也
世の中の人々が他者の垣間見える欲望に気付いていながら日々を送っている。
日常的に目にするSNSやインターネットではそれらはどこにだって住み着いています。
それぞれがそれぞれの弱みを握っているといっても過言ではないこの世界。
相手の醜い部分を晒し出してしまえば、自分の醜さをも晒していることになります。
そうしてまた周囲から叩かれてしまい、自分が自分では無くなってしまう。
だからこそ、誰もがそのような行為や心情を見てみぬふりをしているのです。
いや、それどころか、もうそうするしかないのでしょう。
そんなどこにも吐き出せやしない心情を歌詞に昇華しています。
このような想いを持っている人間は裸どころか複雑極まりないといえます。