ミリオンセラーアルバムに収録された曲
今回ご紹介する【友達のまま】は、アルバム収録曲でシングルカットはされていません。
しかしそのあまりに切ない歌詞内容は多くの女性の共感を呼びファンが多い一曲です。
収録アルバム「LOVERS」は、発売前にリリースされたシングルのヒットの影響もありオリコンチャートで1位を獲得。
ミリオンセラーとなりました。
収録曲は全10曲で、その中でも誰もが経験しそうな男女の微妙な関係を描いた本曲は、隠れた名曲といえましょう。
1番を解説
彼との微妙な関係がわかる歌い出し
見慣れてる 広い背中
少し後を歩く
出典: 友達のまま/作詞:富田京子 作曲:奥居香
まずは冒頭、見慣れてるということから、随分前からお互いを知る関係のようです。
幼なじみ?それとも学生時代の友達でしょうか?
少なくともここ1年2年でできた関係ではなさそうです。
歌の主人公である彼女は、男らしい広い背中の後ろ姿をみて、彼のことを頼もしく思っているのでしょう。
ここで注目したいのが、彼女は彼の横ではなく少しだけ後ろを歩いているということです。
男女の仲において、ひと昔前なら"三歩下がって"という光景もみられたかもしれません。
しかし現代日本において少し後ろを歩く関係とは、どう解釈するのが適当でしょうか。
その微妙な関係が、次から段々見えてきます。
さりげなくかばう手のひら
笑ってる横顔
出典: 友達のまま/作詞:富田京子 作曲:奥居香
歩いていると、どうやらふたりの前に、危ない段差や橋みたいなものが現れたようです。
それをみつけて、前を歩く彼が彼女に手を差し伸べたのでしょう。
何かの障害物を越えるために手助けをした、その程度のものかもしれません。
さりげなく、ごく自然に取られた行為です。
勿論、彼には当たり前の何気ない行動だったのでしょう。
でも彼女にとって彼の手に触れるということは、とても大きな出来事なのです。
たとえそれが一瞬の事であったとしても、また彼女が思うような感情はないものだとしても。
手をつなぎドキドキしながら彼のほうを見ると、笑顔の彼がいました。
「大丈夫?」そう語りかけてくるような優しい笑顔だったのでしょう。
その顔が目に焼き付いて、更に彼女の心を苦しくしてしまったようです。
ふたりは友達だった
明日になれば 忘れてしまうから
少しだけ 少しだけ 今だけ
出典: 友達のまま/作詞:富田京子 作曲:奥居香
ここでふたりの関係が見えてきました。
明日には無くなってしまう関係、手をつないで笑いあったことなどすぐに忘れてしまう関係。
つまり恋人同士ではない、仲の良い"友達"なのです。
それなのに彼女はあと少しだけでいいから、今だけでいいからと願います。
何をでしょうか?
そうです、今のこの幸せな時間と空間が続くこと、つないだ手が離れないことをです。
彼女は彼のことを苦しいほど好きなのですね。
ではなぜその気持ちを伝えないのでしょう。
その理由が次からわかってきます。
残酷な現実
言えない言葉
言わないつもりの言葉を
いつまで覚えてるの
あなたの望んだ夢の
隣にあの娘がいた
出典: 友達のまま/作詞:富田京子 作曲:奥居香
ここまでで、彼女が彼のことを好きなことがはっきりしました。
ただ彼女はその気持ちをこれまで彼には伝えていないようです。
胸の奥底にしまいこんだ言葉。
「好きです」「付き合ってください」まぁそんな類の言葉でしょう。
もう使うことはない言葉を、ずっとずっと抱えたまま、ふたりの関係を続けてきてしまったんですね。
余りに近くにいすぎて、告白するチャンスを逃してしまったのでしょうか。
それとも自分に自信が持てなかったのでしょうか。
告白して失敗するくらいだったら、今の友達という関係を続けていくほうがいい、という選択だったのかもしれません。
でもそうしているうちに、彼は恋人を作ってしまいました。
一番近くにいる彼女の気持ちに気が付かないまま。
彼にはきっと叶えたい夢があるのでしょう。
そしてそれを今一緒に支えているのは"あの娘"なのです。