SEKAI NO OWARIの狂気、アルバム「Eye」に収録
平手友梨奈の熱演など
2019年2月27日、SEKAI NO OWARIは「Eye」と「Lip」というアルバムを2枚同時リリースしました。
溢れ出るほどに旺盛な創作意欲の賜物でアルバム1枚ではすべての楽曲を収録できないためです。
「Eye」は彼らの狂気のサイド、「Lip」は彼らのポップなサイドをそれぞれ押し出しています。
今回、記事で取り上げる「スターゲイザー」は「Eye」のラストに収録されているナンバーです。
つまり彼らの狂気の部分を代表する楽曲となります。
「スターゲイザー」は元々、シングル「RAIN」のカップリング曲として2017年7月5日にリリース。
アルバム「Eye」に再収録されるに当たって、2019年2月8日にYouTubeでMVが公開されます。
欅坂46の平手友梨奈がFukaseからのたっての希望で主演に抜擢されて大反響を呼びました。
「スターゲイザー」はStar(星)をGazer(見つめる人)という意味です。
MVの中の平手友梨奈は過酷な現実の中でも、目を見開いて星を見つめる、希望ある役どころを演じます。
大熱演といっても過言ではないです。
「スターゲイザー」の歌詞とMVをゆっくり鑑賞していきましょう。
「スターゲイザー」のサウンド
「スターゲイザー」のサウンド・プロダクションは練りに練られています。
SEKAI NO OWARIが得意とするEDMを基調としながらも、Nakajinのヘヴィーなギターが炸裂。
重いサウンドと浮揚するような音作りが渾然一体となっていて見事です。
歌詞を再表現するサウンド
現実はまるでディストピア
抗いがたい現実へ向けて
それは
死体が腐敗していくように
学校へ毎日通うように
夫婦が一生添い遂げるように
花は摘めば枯れていくように
出典: スターゲイザー/作詞:Fukase 作曲:Fukase
Fukaseのつぶやきのようなボーカルが印象的な歌い出しです。
死体の腐敗は自然の摂理を象徴しています。
愛した人や家族、ペットなどの死。
死体は普段私たちが観念でしか捉えていない死の具現化です。
放置した死体が腐っていくのは逆らえない現実。
人間がいくら立派な高等動物になっても、自然の摂理を前にしては為す術もありません。
学校へ通うのは社会性を身につけるためのレッスンです。
自然の摂理とは違いますが、これも当たり前とされる現実。
人間は元々、社会を築いていかなければ集団として生き残れない生き物です。
教育制度、学校制度は人間を人間として成長させるためには不可欠なものになります。
夫婦が添い遂げるのは婚姻制度が基本。
婚姻制度は国や地域によって様々ですが、概ね一夫一婦制に落ち着きます。
これも今では当たり前の現実です。
花が枯れるのもまた自然の摂理。
ドライフラワーという技法がありますが、生花を咲かせたままにしておくことは不可能です。
抗えない当たり前のこと。
しかし、この歌詞はすべて当たり前のことを伝えながらも、どこかSF的なディストピアを想像させます。
ディストピアとはユートピア(理想郷)の反対で絶望の淵にある世界。
現実を歌っていると絶望を表現することになること、それがこの曲「スターゲイザー」の本質です。
Fukaseの作詞は恐ろしく冴えています。
Fukaseの告発
問い糾したいのは現実
叩けば物は壊れるように
罪人が法で裁かれるように
多数派がいつも勝っていくように
怒鳴れば君が泣くように
時々頭がおかしくなる普通の日常
出典: スターゲイザー/作詞:Fukase 作曲:Fukase
叩いた物が壊れるのは物理の基礎です。
人間は物理学を発展させて、できるだけ物が壊れないように苦心します。
それでもいつまでも壊れない物を発明することはできません。
宇宙規模の抗えない原理が横たわっています。
犯罪者が裁かれるのは社会というものを壊さないための人間の智慧です。
先ほども触れましたが人間は生まれながらにして社会性を帯びた生き物。
社会を安全かつ円滑に保っていかないと、人間そのものの存在が脅かされます。
法や刑罰、審判というものは様々な歴史がありますが、人間社会にとっては不可欠のものです。
しかし倫理というものを根本から問うていくと、どこからが犯罪であるのかなどは社会と地域でまちまち。
自然の摂理とは違って相対性の中で揺れ動くもの。
Fukaseの心の内ではなぜこのことが当たり前になっているのかを問い糾したい想いが見え隠れします。
もう少し見ていきましょう。
多数派の原理は理想では必ずしも絶対ではありません。
少数派への配慮がないところでは社会が成り立たなくなっています。
それでも基本的に多数派の勝利を私たちは日々の暮らしの中で嫌というほどに見せつけられるのです。
「それが当たり前なのか?」
Fukaseのつぶやきは続きます。
相手を威嚇して泣かすのは最低の行為です。
それでも人と人との暮らしの中で何度かそうした場面に立ち会うことがあります。
それはとても恐ろしい現実です。
そしてFukaseはこれまで列挙した現実に対してこうつぶやきます。
時々頭がおかしくなる普通の日常
出典: スターゲイザー/作詞:Fukase 作曲:Fukase