「エスカルゴ」はロック!
今回はロックバンドとしての一面を改めて魅せつけてくれる、「エスカルゴ」をご紹介いたします。
永きにわたり、J-POP界に君臨するといっても過言ではないバンドです。
「エスカルゴ」は、いつもの女子受けのよい楽曲とは少し毛色が違うのかもしれません。
言葉で遊び、駆け抜ける様はロックバンドそのものです。
むしろ、男性の方が惹きこまれる楽曲ではないでしょうか。
アルバム『三日月ロック』に収録
「エスカルゴ」は2002年9月11日にリリースされたアルバム、『三日月ロック』に収録されています。
とあるインタビューで、草野正宗は同アルバムを制作した過程をこう語っているのです。
「9.11アメリカ同時多発テロに影響を受けた」と。
「かたつむり」は決してノロくない?!余すところなく読み解きます!
蔑む心...
だめだな ゴミだな さりげない言葉で溶ける心
コワモテ はがれて 仕方ねえと啼いて 耳をすます
孤独な巻き貝の外から
ふざけたギターの音がきこえるよ
出典: エスカルゴ/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
なかなかのインパクトある言葉でイントロは始まります。
唐突に展開される、ネガティブな発言が飛び交うのです。
自分自身をここまで卑下する主人公の心中は、どうやら穏やかではありません。
なんでもないと言い聞かせ、グッと気持ちを抑え流そうとしているのでしょう。
それに反し、次第に心はみるみるうちに削れ痩せていく様相がうかがえます。
顔にはだすまいと、抵抗している主人公。
メッキが剥がれるように、強がる気持ちが表情へとうつしだされていくのです。
所詮今の自分はこんなものだと、弱い心を泣く泣く受け入れようとしています。
主人公は寂しさという「殻」に閉じこもり、塞ぎこんでいるのでしょうか。
閉塞感からくる心にポッカリと空いた穴から、何かが響いてくるのです。
塞いでいたはずの耳からは、まるで天使と悪魔のような囁きが聞こえてくるのかもしれません。
閉じこもっているがゆえに、五感が研ぎ澄まされているのでしょう。
そんな自分をからかうように、心の奥底からの嘆きがこだまします。
悪魔の囁きが不協和音となり、壊れた音色となって鳴り響いているのです。
陽のあたる世界へ
湯けむり 陽だまり 新しい光に姿さらす
おだやかな寒さ ぶつけ合ったコマは いつか止まる
枯葉舞い 恋の雨が降る
よれながら加速していくよ
出典: エスカルゴ/作詞:草野正宗 作曲:草野正宗
ネガティブから一転、ポジティブな言葉が飛び込んできます。
よからぬ囁きが引き金となり、変わろうとしている主人公。
気分がすこしよくなったのでしょうか。
闇の先から微かにのぞく、明るい場所へと向かおうとしています。
行くべき先を見つけたのです。
閉じこもっていた主人公は、殻を破ろうとしています。
このままではいけない。いつまでもジメジメとした暗いところに居てはいけない。
陽のあたる眩しい世界へと、1歩づつゆっくりと踏み出そうとしています。
久しぶりに感じた外の温度は、思っていたほどつらくなかったのです。
分け隔てなく平等に降りそそぐ太陽は、誰にもやさしい目映い「光」で覆ってくれます。
主人公が思い悩んでいたことが嘘のように、陽のシャワーで洗い流してくれるのです。
ふと後ろを振り返ると、自分が辿ってきた元の場所では雲がどんよりとし風が吹き荒れています。
閉じこもっていた殻の正体
恋に悩んでいた主人公。おそらく男性で間違いないでしょう。
好きな人へ気持ちを伝え、期待を大きく裏切るその答えに落ち込んでいたのです。
そうです、失恋したのでした。
振り返った過去の自分の上空にだけ、涙という「雨」が激しく降りしきっています。
告白した相手に対し、逸る気持ちが結果そうさせたのでしょう。
その想いは、ぐるぐると螺旋のように渦を巻くのです。
それはまるで、「カタツムリ」。
閉じこもっていた殻の巻き貝のように...。