連絡が来ない相手というのは、彼の恋人なのでしょう。

前述のパートでは、2人が出会ったばかりの初々しい日々のことを指していたのかもしれません。

今では戻って来ないあの日々。

主人公はそんな日々を懐かしんでいたのです。

ここで彼は音を吐いています。

恋人に出会うまでは何も思わなかったような独りぼっちの夜。

恋人と過ごした日々のことを思い返して、今では独りの夜を寂しく思っているのでしょう。

知らなければそんな風に思うこともなかった。

連絡が来なくなって、自分の寂しいという気持ちに気付いたのかもしれません。

涼しく過ごしやすい春の夜だからこそ、人恋しさを強く感じているのでしょう。

刹那的な感情

今すぐ貴方に会いたい
桜の花が散る前に
雨に堕ちていく儚さのように
短い其れだから

出典: 夜桜/作詞:Fukase 作曲:Nakajin,Fukase

ここでは、前述の引用パートから更に踏み込んだ感情の吐露が行われています。

特に顕著なのが、1行目の主人公の言葉。

恋人に対しての強い想いが表れています。

そして、その想いを桜という花に例えているのでしょう。

咲き始めると、あっという間に花が散っていく。

しかし、桜が散る様はこの世のものとは思えないほど美しく感じます。

どこか霊気さえ感じてしまうほどの美しさ。

しかし、雨のようなちょっとした刺激でさえ、桜の花を散らすのには充分です。

1年の間のほんの少しの時間だけ、その美しさを私たちに見せる花。

主人公にとって、恋人と会う時間というのはそれほどに一瞬なのでしょう。

楽しい時間はあっという間に過ぎ去っていく。

そして、過ぎ去った後には切なさだけが残るのです。

ここで彼はという2つのものを重ね合わせています。

「夜桜」2番

幸せから知る悲しみ

SEKAI NO OWARI【夜桜】歌詞の意味を考察!後悔していることは何?花びらが象徴するものとはの画像

貴方のことを想うと突然哀しくなる
寂しい事はいつだって幸せが教えてくれる

出典: 夜桜/作詞:Fukase 作曲:Nakajin,Fukase

日常を送る中で、ふと思い出す恋人のこと。

会えないことを思い出すと、悲しみが襲ってくるのでしょう。

主人公にとって、それほど恋人の存在が彼の心の深いところを刺激していることが分かります。

そして、2行目。

ただ寂しさや悲しさを嘆いているだけではありません。

そんな自身の状況も、幸せがあったからこそ知ることができたと分かっているのです。

今までは知ることが無かったその感情。

彼にとっては切なく寂しいものかもしれませんが、それは恋人がもたらしてくれた幸せの代償

それを分かっているからこそ、悲しみも深さを増すのです。

蝶のように飛んでいけたら

何も考えずオオカバマダラのように
光に真っ直ぐになれたら どれほど良かったんだろう

出典: 夜桜/作詞:Fukase 作曲:Nakajin,Fukase

1行目で出てくるのは蝶の名前のようです。

主人公がこの蝶に憧れているのは何故でしょう。

それは、その特性に隠されていました。

オオカバマダラ(大樺斑・学名Danaus plexippus )は、チョウ目・タテハチョウ科・マダラチョウ亜科に分類されるチョウの一種。北アメリカでは渡り鳥のように渡りをするチョウとして有名。

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/オオカバマダラ

つまり、これはとても長い距離を飛んでいられる蝶の名前です。

大陸を横断することさえできる程、疲れ知らずの蝶。

2行目の「光」という言葉が表すのは、希望なのかもしれません。

恋人に会えなくなっても、悲しむことなく生きていられたなら良かった。

遠くまで飛んでいけるような、そんな強さを持っていられたならというのが彼の気持ちなのでしょう。

この蝶の意味するところを知ると、彼の心の声さえ聞こえてきそうです。

今まで通りに恋人のことを気にも留めず、日々を過ごせていたなら良かった。

彼はそう思っているのでしょう。

悲しみを堪える主人公

終わっていく恋

SEKAI NO OWARI【夜桜】歌詞の意味を考察!後悔していることは何?花びらが象徴するものとはの画像

そしてこの楽曲は最後のサビへと入っていきます。

まず、1番のサビと同じ歌詞が繰り返され、最後に新しい4行の歌詞によって終わりを迎えるのです。

この楽曲歌詞世界が着地するための4行。

ここまでを振り返るとこの楽曲が、最初から最後まで一貫したテーマの元書かれていることが分かります。

それは、これが春の夜の悲恋を描いたものであるということ。

ハッピーエンドの気配は微塵もなく、この歌詞の主人公は最初から最後まで気持ちに変化はありません。

つまり、その悲恋を思い返している寂しさや、その思い出の美しさだけが強調されています。

ここにあるのは、その切なくも美しい「夜桜」が散っていく一瞬の様子

その一瞬を、4分弱の楽曲として引き伸ばしたような、そんな感覚が随所に散りばめられています。

それでは、最後の4行の歌詞を順に見ていきましょう。

泥に汚れた花びらは戻れない
美しかった時間に

出典: 夜桜/作詞:Fukase 作曲:Nakajin,Fukase

散ってしまった桜の花は、もう散る前には戻せないのです。

これも今では戻ってこなかった以前の輝かしい日々のことを指しているのでしょう。

恋が一番輝いていた頃の、取り戻すことのできない日々。

そこに対しての主人公の強い想いが感じられます。

彼は今、後悔している訳ではありません。

ただ、そのキラキラとした日々のことを春の寂しく感じる夜に、頭の中で思い返しているのです。