世界の変動から生まれたメッセージ
‘’LETTERS’’はもともとシングルで発売予定だったものを急遽変更し、3.5thアルバムとしてリリースされました。
アルバムのタイトルにもなっている表題曲’’LETTERS’’。
これは新型コロナウイルスの流行の中から生まれたものです。
「楽器を持たないパンクバンド」として有名なBiSHは、ライブを主な活躍の場とし臨場感あふれる音楽を届けてきました。
思うように活動が出来ないばかりか、身近な人とも会えなくなってしまった日常。
そのような日々の中で彼女たちは何を感じ、何を想い歌うのでしょうか。
今こそ伝えたい「言葉」が綴られた1曲です。
壮大な社会を感じさせる音楽
オープニングからストリングスとパーカッションが壮大な曲調を作っています。
MVにもぜひご注目ください。
社会の大きさを感じさせられる大都会を空から映し、続けて点在するメンバーを1人1人クローズアップしていきます。
世界からみると人は小さいけれど、たしかにそこに人はいる。
BiSHのロゴが描かれた旗を持ってこちらを応援してくれているような映像になっています。
最後には最初と同じメロディーで締めくくられます。
E♭メジャーですが、バスが主音のE♭ではないことから「この先も未来が続いていく」というメッセージ性があるのです。
正解はないけれど進むしかない
社会を見つめて
あまりに突然に世界が
予告もなく変わり果ててしまって
あまりに突然に世界は
真剣に残酷な判断しちゃった
出典: LETTERS/作詞:松隈ケンタ・JxSxK 作曲:松隈ケンタ
冒頭から2回同じフレーズが繰り返されます。
変わっていく世界とその対応に追われる人々をまるで客観的に見ているようです。
広い世界の1人としてコロナウイルスに対して抵抗出来ることは少なく、時間とともに世界はどんどん変わってしまいました。
人々も正解が分からないまま最善な道を探すしか方法はありません。
良かれと思って決めたことがこんなに苦しいなんて…と後から知り、呆然と立ち尽くしているのです。
しかしながら音楽はいたってシンプルな長調の明るい曲です。
バックに流れるドラムが心地よいリズムを刻み、立ち止まらず歩みを進めるように奏でていきます。
向き合っていく勇気
憤ってるとかじゃない
ただ僕ら目をそらさず
上手にかわせてないだけ
生きるのは難しいね
こんなときこそ僕ら
まっすぐにぶつかり合おう
立ち向かう厳しさを
バカにしないでくれ
出典: LETTERS/作詞:松隈ケンタ・JxSxK 作曲:松隈ケンタ
前代未聞の事態に対して正解を知る者は誰もいません。
「こうする方が良かったんじゃないか」と不満を口にしても確信はない。
だからどうしようもないもどかしさは感じたとしても、怒りの感情を持っても仕方ないのです。
また、3行目のかわすものとはコロナウイルスの問題だけでしょうか。
日常のふとしたあらゆることにもいえるように感じられます。
片付けるべき学校や会社の課題、うまくいかない人間関係、自分の将来への不安…。
何でも器用にこなす人や「適当にあしらっておけばいい」という人もいるでしょう。
しかし立ち向かうことの大切さをここで思い出させてくれます。
ダサいとか面倒くさいといった声は足かせになるのです。
言葉に出して叫ぶ
気づかずに抑え込む気持ち
すべて届けるよ胸の中
ダサい姿も全部晒そう
あなたいるこの世界守りたいと叫ぶ
見えない明日は待たない
今もあなたの無事を祈る
絶対距離は遠くないんだ
今も近くにあるんだ
出典: LETTERS/作詞:松隈ケンタ・JxSxK 作曲:松隈ケンタ
2行目が示すものは何でしょうか。
世界は決して綺麗なものだけで出来てはいません。
しかし大人になり社会の構造が分かるようになってくると話は別です。
人に気に入られるため、または場をわきまえ上辺を気にして本音を隠すこともあります。
その結果自分の気持ちを押し殺して生きていく世の中になりかねません。
出来ないくせに夢物語を口にするな。
そんな厳しいことを言う世界は、もしかしたら目を背けているだけなのかもしれません。