見慣れた街のよそよそしさ
見慣れたいつもの町を過ぎれば
素知らぬ顔 そびえるビルの角
遠くで聞こえる そう 遠くで聞こえる
町の音に耳をかせば
悲しみは 優しいふりして
この町を包むだろう
おまえに会いにゆくまで
出典: 風に吹かれて/作詞:宮本浩次 作曲:宮本浩次
男女の別れはどんな人にとっても辛い記憶になるものです。
当事者は離人感が強まります。
普段の風景も通常と違うように見えるもの。
行き交う雑踏に耳を傾けて自分が今にすべきことを意識する。
せめて別れを美しいものにしたい。
そのためには胸の内の哀しみを気遣いに変えて「おまえ」に会おう。
宮本浩次という人物の誠実さが透けて見えるような歌詞です。
破天荒さばかりが注目される宮本浩次ですが歌詞を読み解くと優しさへの希求のようなものを感じます。
ボブ・ディランの「風に吹かれて」との相関
風とは何であるか
さよならさ 今日の日よ
昨日までの優しさよ
手を振って旅立とうぜ
いつもの風に吹かれて
見慣れてるこの部屋も
俺達の優しい夢も
手を振って旅立とうぜ
いつもの風に吹かれて
ohYeah
出典: 風に吹かれて/作詞:宮本浩次 作曲:宮本浩次
別れも旅立ちも「普段と変わることのない風」の中にあります。
上述したとおり宮本浩次は日によって変化する風というものを超越的なものとして捉えるのです。
「風に吹かれて」というタイトルで思い出すのはボブ・ディランの名曲。
ボブ・ディランも答えを探す友人に「それは風の中にある」と歌います。
この風もどこか超越的な存在です。
宮本浩次がどこまでボブ・ディランの「風に吹かれて」を意識したのかは分かりません。
それでもロック・ミュージシャンにとってボブ・ディランの「風に吹かれて」は特別な曲です。
先人の偉大な業績がまったく念頭に上らなかったとはちょっと考えにくいでしょう。
むしろふたつの「風に吹かれて」での風の捉え方には近似性を感じます。
宮本浩次はボブ・ディランのような風についての概念と把握を自身の歌詞にも反映させたかもしれません。
エレファントカシマシはロック音楽の王道に位置するバンドです。
「風に吹かれて」はロックに転向する以前のボブ・ディランの曲ですが当然に影響を受けていると考えます。
新しいステージへ旅立つ時期
風に吹かれる旅立ち
「普段と変わることのない風」の中の別れと旅立ち。
いつもの風の中に帰ってゆくことで旅立ちを期する。
「風に吹かれて」では宮本浩次によるどこか弁証法的な矛盾の乗り越えが行われています。
自分たちの姿勢は昔から吹いていた風のように変わってはいない。
それでも新しいステージへ向かうために旅立つから君もついてきてくれないか?
明日は一緒に旅立とう。
エレファントカシマシの熱い想いが歌詞の通奏低音になっています。
初めての日本武道館公演のタイトルを「風に吹かれて」にしたこと。
「今宵の月のように」の大ヒットを経てより大きなステージへと向かう一歩。
エレファントカシマシの一時期を表すテーマ・ソングです。
そしてあらゆる季節に新しい旅立ちをするリスナーたちを励ましてきました。
時代を超越して愛される名曲がここにあります。
エレファントカシマシは今でも「風に吹かれて」をライブで演奏。
変わることと変わらないものの間で音楽を響かせています。
懐かしくも新しい曲、それがエレファントカシマシの「風に吹かれて」の本質です。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
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