「Cage」の世界観
ピアノをメインとしたアップテンポサウンドが聞き心地の良い楽曲「Cage」。
この楽曲は2000年11月8日に発売された鬼束ちひろの3枚目のシングル。
当初はセカンドシングルとしてリリース予定もあったとのことで、彼女の初期衝動的な要素を感じられる内容となっています。
鬼束ちひろといえば悲壮感溢れるメロディと、引き込まれるような世界観の歌詞が魅力的。
「Cage」では大ヒット曲「月光」と一貫性のある、人のもつ『心の闇』を歌っています。
胸の内から湧き出る叫びのような歌唱は、聴きどころです。
タイトル「Cage」はどんな意味?
「Cage」は「鳥かご」や「檻」という意味の言葉です。
檻の中に囚われてしまい、自由に動きたいのにそれが叶わない。
そして神様に逃がしてくれるよう祈っています…。
この檻は「精神的な囚われ」の比喩ではないでしょうか。
具体的にどんな心理状態なのかは後ほど詳しく解釈をしていこうと思います!
PVをチェック
ロウソクの灯された暗闇で歌唱する場面と、森を彷徨う場面で構成されたPV。
森の中である「箱」を発見して開くと、鎖にがんじがらめに囚われてしまいました。
深い森の中では誰も見つけ出してくれないでしょう。
ここで歌唱も「神様」への問いかけが始まります。
誰にも見つけられず一人で捕らわれた末の、心の叫びに聞こえますね。
木々の隙間から見える空は暗く、不安な気持ちをさらに助長させるかのようです。
ところが最後のサビの終わりには空が開けて太陽の光が降り注ぎました。
木々に縛り付けた鎖には鬼束ちひろの姿がありませんね。
闇が晴れてハッピーエンドへ向かっている様な予感がします。
曲のラストでは自分の足で歩いている彼女の姿が。
力強いまなざしで振り返り、曲は終わります。
心理状態を表現したPV?
このPVの内容から意味を解釈してみましょう。
まずは「森の中で彷徨っていた」という状況。
たくさんの考えや経験に飲まれて、心の迷宮を彷徨っていたのでしょう。
そうするうちに自負の念から身動きが取れなくなってしまいます。
これを鎖で縛り付ける演出で表したのではないでしょうか。
自分自身ではどうすることもできず、神様に祈っていると、心が晴れる出来事が訪れます。
これが差し込んだ太陽の光。
未だ迷宮を彷徨う彼女ですが、鎖から解放され、自分の足で歩くことができるようになる。
そのまなざしには力が宿っており、どんな困難をも生き抜く覚悟を感じ取れる。
筆者はそう解釈してみました♪
深く傷つき身動きが取れない
身動きがとれなくなってしまった
弱ってたこの身体から 零れ落ちた刺が 足元を飾り
立ちすくんだまま 映った鏡の いくつものヒビに文句も言えずに
出典: Cage/作詞:鬼束ちひろ 作曲:鬼束ちひろ
生々しい場面が想像できますね。
自分の周りの地面には「棘」が無数に刺さっており、そこから身動きが取れずに立ち尽くしています。
しかもその棘は自分から零れたもの…。
「身体から零れた」と言っていますが「心に刺さった棘を抜いた」という解釈の方が分かりやすいかもしれません。
よく辛い思いをしている人の「心の棘を抜く」という表現がありますね。
しかしここでは抜いた棘のやり場にすら困っているのではないでしょうか。
そして、自分自身の本当の姿を映し出せていない鏡。
それに文句が言えない。
これは「他人からの評価」とか「レッテル」などの意味合いかもしれません。
歩み出せば傷ついてしまうくらいに追い込まれ、文句を言う気力すらない…。
疲れ果てた様子が思い浮かぶのではないでしょうか。
そこに主体性はない
私は何処に 引きずられてゆくの?
出典: Cage/作詞:鬼束ちひろ 作曲:鬼束ちひろ