THE BEATLES『I Want You(She's So Heavy)』へのオマージュ?
また『In The Zoo』で幾度となくリフレインされる印象的なフレーズがあります。
そのフレーズがあの伝説のバンドの後期の名曲と類似しているのです。
THE BEATLESの69年の楽曲『I Want You (She's So Heavy)』。
厳粛な教会音楽とヘビーなロックサウンドが融合した同曲はサイケデリックロックの古典としても有名です。
Suchmosは意図的にTHE BEATLESへのオマージュを楽曲の核に据えたのでしょうか?
絶望からの救済をロックミュージックに求めて...
夢も希望も無いのかい?救ってよロックミュージック
誰ひとり信じなくても 俺とお前だけは 叫ぼう
出典: In The Zoo/作詞:YONCE 作曲:Suchmos
『THE ANYMAL』の制作プロセスは楽曲により微妙に異なるそうです。
しかし共通しているのは楽曲ごとにテーマを共有すること。
そして作曲におけるジャム・セッションの比重の高さです。
『In The Zoo』の中でYONCEは絶望からの救済をロックミュージックに求めます。
その中で自ずと共有されたのが後期THE BEATLESに代表されるサイケデリックサウンドだったのでしょう。
MVにおける非・秩序型の構成
プロモーション要素さえも排除した構成
We're just animals
いつからか命にぶらさがった値札を愛おしく思えるかい?
We're just animals
秤りしれないことが幸せだと知っているから生きているのに
出典: In The Zoo/作詞:YONCE 作曲:Suchmos
通常、MVを制作するもっとも重要な目的は楽曲のプロモーションです。
プロモーションの必須事項としてアーティスト名と曲名を第一に認知させる必要があります。
そのため多くのMVではアーティストロゴと曲名を序盤にクレジットさせるのです。
しかし『In The Zoo』においては5分30秒が過ぎたあたりでようやく上記の歌詞の一部が表示されます。
しかもその文字はサイケデリックな映像に溶け込み、ほとんど像を成しません。
私たちが最後に抱く感情は?
We're just animals
捨てる為の物を押し付けられる生活を心地よく思えるかい?
We're just animals
俺たちもクシャクシャに丸められて捨てられちゃうかもしれないね
出典: In The Zoo/作詞:YONCE 作曲:Suchmos
そして一番大切なバンドロゴ、及び曲名がクレジットされるタイミングがもっとも奇妙です。
MVの終盤、約6分が過ぎ上記の最後の歌詞が歌われる直前にバンドロゴが中央に映し出されます。
そして楽曲も終わりに差し掛かるとようやく『In The Zoo』のタイトルが表記されるのです。
その時にはすでにメンバーの姿はアナログなCGで赤く塗り潰されています。
まるで歌詞のラストフレーズのように運命に見放された人類のような扱いです。
未来への希望と同時に絶望を抱くことを強いられた世代。
それを動物園の中の憐れな動物に例えた『In The Zoo』。
聴き終えた後にどのような感情を思い浮かべるのかは私たち聴き手に委ねられているのです。