back number新境地のロックナンバー
日曜劇場「危険なビーナス」主題歌
back numberが2020年10月12日に配信リリースした「エメラルド」。
東野圭吾原作のTBS系ドラマ日曜劇場「危険なビーナス」の主題歌として話題を集めています。
ドラマの内容ともリンクしたミステリアスでハードなサウンドが印象に残る一曲。
楽曲の世界観を番場秀一監督が映像化したMVも同年11月6日に公開。
謎めいて掴めず、それがいっそう魅力的に感じてしまう…。
そんな楽曲のイメージを美しい映像が描き出しています。
back numberらしさと新しさの共存
「エメラルド」は、謎に満ちた女性に翻弄されながらも惹きつけられる男を描いています。
これはまさに、ドラマ「危険なビーナス」の世界観そのもの。
次々と展開していく謎や、突然現れた女性「楓」。
それらに翻弄されながら真相に迫っていく主人公「伯郎」の姿を思い起こさせます。
そんな人間関係や、東野圭吾原作のミステリーとサスペンスの要素を色濃く映すストーリー。
そういったものを反映し、「エメラルド」もハードな印象の一曲となっています。
今までの恋愛にどこか弱気な男を描き、共感を呼んだback numberの楽曲から考えれば異色の一作。
ですがここに描かれているのもまた「魅力的な女性に振り回される男」の姿でした。
ドラマの世界観とバンドの個性。
その両者から生まれた魅力的な一曲を、歌詞から深く解釈してみましょう。
妖しく惹きつけられてやまない君
優しくも残酷な君に魅入られる
撫でるよりも丁寧に
それでいて深い傷を残す
君の6秒間のキス
出典: エメラルド/作詞:清水依与吏 作曲:清水依与吏
冒頭から描かれるのは君の二面性です。
優しく愛するように触れながら、同時に傷を与える。
キスひとつで描かれた君の優しさと残酷さが、「君」という人の謎を描き出しています。
6秒間、という時間は軽いキスよりも濃厚な時間を感じさせるもの。
そんな君のキスひとつに心を奪われてしまう「僕」の姿が浮かんできます。
「綺麗」を越える言葉とは
世界中の灯りが
君の為に照らす夜
綺麗って言葉すらチープだ
出典: エメラルド/作詞:清水依与吏 作曲:清水依与吏
世界中の灯りを受けたように輝いて見える君。
夜にそんな魅力を魅せる君には、綺麗という言葉さえ安っぽく感じます。
具体的に「綺麗を越える言葉」が想定されているのではないのでしょう。
綺麗という言葉では語り尽くせない程、君の魅力は多面的で重層的。
そんな意味合いを指している「チープ」という言葉に感じられます。
「綺麗」という言葉は素直で穏やかな印象を感じさせるもの。
けれど君はもっと謎めいていて冷酷で、それでいてとても美しい。
様々な要素を併せ持っているからこそ正体が掴めず、魅入られてやまない君。
そんな君を表すには「綺麗」という言葉ひとつでは足りないのです。
輝く君に僕の愛は届かない
降り注ぐスパンコールの雨
よく目を凝らせば
僕の愛が吹きこぼれた泡だ笑えるね
出典: エメラルド/作詞:清水依与吏 作曲:清水依与吏
光を受けて輝く君をさらに輝かせようとするスパンコール。
それは僕の愛が泡になったものだと歌います。
吹きこぼれたという言葉からは、熱く煮えたぎった恋心の上から泡があふれたような印象。
けれどその愛は泡に過ぎません。
すぐに消えてしまい、決して彼女には届かない。
彼女の身を飾る宝石にもなれない、儚いスパンコールのような輝きなのです。