王道を行かない邪道アイドル
BiSHのキャッチフレーズは「楽器を持たないパンクバンド」。
アイドルグループに似つかわしくない「パンク」を前面に出すBiSHは、AKBなどの王道アイドルとは違います。
BiSHは「Brand-new idol SHiT」の略で、新たに生まれたクソアイドルといった訳になるでしょうか。
自分たちを「クソアイドル」、ファンのことは清掃員(クソを掃除する者)と呼びます。
そんなところからもその立ち位置が、ワイルドで破天荒なパンクサイドにあることがうかがえます。
BiSとの関連性
同じようなグル―プにBiSがいます。それもそのはずBiSHは、BiSの後継ユニットなのです。
2016年にBiSが解散したあとに、同様のコンセプトで集められたメンバーによってBiSHは始動しました。
ところがBiSは再結成、どちらが後継者なのかがはっきりしなくなりました。
そこで、というわけではないと思いますが、今回のこの「Nothing.」が生まれました。
「BiSHはBiSH、BiSとは別なんだ」という思いもあって、この名曲が世に放たれたのです。
「Nothing.」はBiSの「FiNAL DANCE」に対するアンサーソング
第1期のBiSは最後のPV「FiNAL DANCE」で、「孤独が運命さ」と語って解散しています。
ところがそのPVには同時に「to be continued」の文字も入り込み、再始動の可能性も滲ませました。
そして時はBiSHの結成、BiSの再開と続きます。
そんな過去が今回の「Nothing.」には、色濃く反映されました。
BiSHが歩む道はこうなのだという、BiSの後継ユニットからの決別を示した曲となったのです。
メンバーの想いが込められた「Nothing.」、その歌詞の内容に迫る
作詞を担当したBiSHメンバーのモモコグミカンパニーは、インタビューではっきりと語りました。
「Nothing.」はBiSの「FiNAL DANCE」に対するアンサーソングだと言ったのです。
BiSの復活を複雑な思いで見たモモコは、先にできた「Nothing.」のメロディに詩をつけました。
「私たちが旧BiSの続きとしてやってたじゃん」と募った想いからの詩です。
そして「FiNAL DANCE」の続きの曲は私たちが歌うべきなんじゃないかと述べたのです。
「Nothing.」にはそんなモモコの想いが込められています。
新生BiSHはここからスタートなんだと、BiSとの決別が宣言されているのです。
モヤモヤ感に包まれた歌い出し
もうなんにも失いたくはないけれど
なにができるかな
無い物ねだりでも
ゼロではないはずだから
この先の空へ
書き出したノートにぽつりと
言葉たち報われないのは
ただの理想主義?
全部僕のせい?
未だ手に負えないquestion
幻想の中ひとり
あがいてたってこっそり
いつも叫び続けてるのに
何もかもがつまらない夜
でもあの日の夢見てる
出典: Nothing./作詞:モモコグミカンパニー 作曲:松隈ケンタ
冒頭は何者なのかわからない自分を嘆くような、心の虚しさを訴えるかのような内容となっています。
まるでBiSHとは何なんだ。どんな音楽をやっていくんだと語っているようで胸が詰まります。
手に負えない疑問、そしてひとりぼっちであがき叫んでいるとシーンは続きます。
自分たちの存在意義への疑問すら聞こえてくるかのような、BiSHとしての苦悩が伝わってくるのです。
しかしモモコは光を見ます。
それはBiSのリスタートなのでしょうか。「あの日の夢」から感じる何かが、モモコに変化をもたらします。
立ち上がるBiSH、さようならBiS
もうなんにも見えなくなるほどに僕ら
いつもがむしゃらで
FiNAL DANCE放たれて
始まる景色の先を
見ていたいだけ
悔しいな泣きじゃくった日々を超えて
見えた光だけ
いまは信じていたいな
孤独が運命なんて言葉虚しいな
そう思わない?
出典: Nothing./作詞:モモコグミカンパニー 作曲:松隈ケンタ
続く歌詞中盤では、FiNAL DANCEとanswerという言葉が綴られます。
FiNAL DANCEで放たれて。これはこの曲で終わったBiSをイメージするのでしょう。
そして終わった幻影に縛られていた自分たちの苦悩を唄い、孤独が運命と語ったBiSへの反旗を示します。
そう
頼りない物語だけど
僕が今もっている全て
ただの夢見がち?
本に書いてある?
未だ見つからないanswer
妄想の中僕は
あのステージの上で
いつも歌い続けているのに
ひとり殺してほしいような夜
あの日の夢みてる
あぁAll night long
夢想家で行こう
遅くないよ
出典: Nothing./作詞:モモコグミカンパニー 作曲:松隈ケンタ