後悔は成功への力になるとしても、後悔した瞬間から気持ちをポジティブに切り替えられる人は多くありません。

後悔でどんよりした気持ちを抱えたまま、前に進もうとします。

何とか前進したとしてもすぐに良い結果に結びつくことはありません。

どん底を抜け出してうっすら明るくなっても"なにも映らない"=影すらできない=光が当たらない場所、という考察ができます。

一方で、どん底を抜けた先に突然「成功」が待っていたら主人公はどう思うでしょうか。きっと素直に受け入れられないはずです。

「まさかこんなにうまくいくはずがない」「誰かの罠かもしれない」とまで深読みするかもしれません。

こんなときは思考をネガティブからポジティブに切り替えれば、成功をモノにできるはずです。

しかし主人公はそれを理解していても、行動に移せないのでしょう。

満たされない毎日を過ごしながらも、そこから抜け出せないのはこの気持ちが原因だとも考えられます。

くだらない自分の世界を変えたいけれど、成功の先にあるその世界に対して恐れがあるのではないでしょうか。

主人公の複雑な心境が描かれている歌詞です。

人生を揺るがすほどの失敗はしていない

振り返ればいつだって
同じ失態ばかりで でもこの情景が変わってたら
きっとここには立ってない

出典: Wonderland/作詞:iri 作曲:iri,ESME MORI

代わり映えのない日常の中、代わり映えのない失敗が続きます。

人生を表す直線は失敗する度に小さな山を描きますが、山は全て同じ形、同じ大きさ、同じ間隔で描かれているのでしょう。

もしもひとつでも突出した失敗があれば、続く人生はなかなか直線には戻らず、別の経過を辿ったかもしれません。

つまり、代わり映えのない「平穏な日常」は、小さな失敗を繰り返しても必ずフラットな状態に戻れていることを示すのです。

そしてその繰り返しというのが時として、生活に安定をもたらします。

もしもその安定が崩れてしまっていたら、今の自分は存在していない。

ここでは日々の繰り返しに対しての主人公のポジティブな気持ちが現れていると考えられるのではないでしょうか。

満たされないといいながらも、主人公の人生はそこまで不幸なわけではないということが分かります。

新しい未来を夢見ながらも、平穏な日常を維持することも捨てがたいと考えているのでしょう。

その2つの間で板挟みになっていることが分かります。

新しい世界に立てたらどうする?

想定外のtroubleが 招いてくチャンスを
重ねていく 最後を
笑っていたいんだ君と
透明な世界も恐れないでいたいの
元へ戻れなんて 望みなんかない

出典: Wonderland/作詞:iri 作曲:iri,ESME MORI

もしも大きな失敗によってフラットな人生が揺れ動いたら、更に状況は悪化するかもしれません。

しかし、好転する可能性も秘めているのです。

失敗をリカバリーする過程で「君」と急接近できるかもしれません。

「君」が引き起こした失敗を主人公がフォローすることで距離を縮められる可能性だってあります。

どんな失敗も、二人なら乗り越えていけるかもしれません。

失敗を失敗で終わらせるかどうかは、自分自身の行動にかかっているといえるでしょう。

大きな失敗を契機として代わり映えのない毎日を抜け、「君」と新しい毎日を紡いでいけるとしたら……。

それは嬉しい反面、不安もつきまといます

なぜならば、新しい世界には線も色も何もないから。二人で色を付けて線を引いていく必要があるからです。

今までは誰かがお膳立てした世界、「普通」と呼ばれる世界だったのでしょう。

主人公は、もしも新しい世界に立ったとしても後悔はしない、と心に決めています。

ここでいう「透明」というのは、すべての可能性が秘められている状態を意味しているのでしょう。

何色にも染まれる世界に対して飛び込むこと。

それはどんなことが起こるか分からないということでもあります。

「君」とならそんな場所へと飛び込んで大変なことが起こっても良い。

それほどまでに主人公は「君」という存在を信頼し、愛していると考えられるでしょう。

失敗もチャンスも「透明」の中には、同じだけ転がっています

しかしそれでも失敗を恐れないで、「君」と新しい世界を描くことを楽しみたいと考えているのでしょう。

ここでは平穏な日常を飛び出し、新しい世界へ旅立ちたいという主人公の気持ちが表されています。

停滞と前進の間で揺れる心

思い描く世界がどんなに楽しいものでも、そこに立てなければ意味がありません。

実際に立ってみなければ、本当に楽しいかどうかも分かりません

時間の進みが遅くなる唯一の場所

ねえ、なにが正しい
もどかしい夜に限って
皆忙しい 揺れるcell phone
音求め driving
鈍る秒針 みんな忘れ tripping

出典: Wonderland/作詞:iri 作曲:iri,ESME MORI

平穏無事な日常を過ごすことは決して悪いことではありません。

なぜなら、新しい日々を選ぶ場合にはリスクも不安も伴うのです。

しかし「このままじゃいけない」と感じている自分がいるのも事実なのでしょう。

誰かに相談に乗って欲しいと思うときに限って携帯へのメッセージは「ごめん、今日は無理!」なのかもしれませんね。

バイブレーション設定の携帯は静かに震えるだけ。もちろんメッセージは文字だけ。孤独が募ります。

そこで主人公は車に乗り込みました。

好きな音楽をかけて自分だけの世界を作り出せば、腕時計の針の動きは心なしかゆっくりに。

うじうじと悩んでいたことをその場に置き去りにするかのように車は走り出します。

自分の気持ちを整理できずに、葛藤しているのでしょうか。

自分が理想とする未来はどちらなのか分からない。

それを相談する人もいないために居ても立っても居られない心境なのでしょう。

刻々と時間が過ぎていくことへの焦りも感じられる歌詞です。

行きたい国は想像の中

どこまでも行こう
君と過ごす wonderland
あの時からずっと
変わってない プラン

出典: Wonderland/作詞:iri 作曲:iri,ESME MORI

主人公は「君」とどんな世界を描きたいのか、理想像が出来上がっているようです。

その世界に立ったら二人でどこに行くか、何をするかまで決まっているうえに、途中で変更もしていません

想いが強い、意志が強いと読み取れますが、それほどまでに代わり映えのない生活をしてきたともいえますね。

また、楽曲名になっている「wonderland」の意味は「不思議の国、おとぎの国」

あくまでも想像上の産物であることを表現しているのではないでしょうか。

もしくはこれは「不思議の国」のように素敵な場所を意味しているとも考えられます。

「透明」な世界を、「君」と共に不思議の国のように染め上げていきたい。

そういう心の表れと捉えることもできます。

2人にとっての理想を追い求めていこうとする力強い想いがここに表れているのでしょう。

掴むべきチャンスを見過ごしている?