椎名林檎さんの「ありあまる富」
「ありあまる富」=大金?
「ありあまる富」というタイトルをご覧になって、あなたはまず何を想像しましたか?
札束が詰まったアタッシュケースでしょうか。それともペントハウスのゴージャスなクローゼットにズラリと並んだブランド品でしょうか。
「富」といえば、大半の方がお金や、お金に替えることができる宝石などの物品を思い浮かべるかと思います。
しかし林檎さんはこの作品でまったく違うことを歌っています。
この曲で歌われている「富」とはいったい何を意味するのでしょうか。
早速PVを視聴してみましょう。
爆発する札束!?
どこにでもあるアパートから放り投げられたのは、生活用品の数々や大量のミニカー。
そしてPV後半では家具やテレビ、札束までもが爆発。そしてすべてが粉々になり、草の生える地面へ落下します。
消費社会への抵抗とも思える映像ですが、歌詞を詳しく見ていくことでさらに深い解釈ができます。
「ありあまる富」歌詞解釈
それでは「ありあまる富」の歌詞にこめられたメッセージを考えていきましょう。
ほんとうの富は形のないもの
僕らが手にしている 富は見えないよ
彼らは奪えないし 壊すこともない
世界はただ妬むばっかり
出典: ありあまる富/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎
わたしたちは五感のいずれかを使えるのであれば、車やテレビのように形のあるものを見たり触ったりして把握することができます。
しかし未来や他の人の感情のように、形のないものはなかなか理解できません。タイムマネジメントや生命保険などは、形がないものへの不安を解消する手段となるためニーズがあるのです。
そしてそれらは形のないものですから、物理的に盗んだり爆破させたりすることはできません。つまり不可侵な価値のあるものです。
だから形をもたない「富」=お金は重要視されるのだといえます。
しかし、紙幣や硬貨は形あるものです。素材は紙や金属で燃やしたり爆破させたりできます。
つまりお金の価値は、物理的には奪うことも壊すこともできます。
形ある富などくれてやればいい
もしも彼らが君の何かを盗んだとして それはくだらないものだよ
返して貰うまでもない筈 何故なら価値は生命に従って付いている
出典: ありあまる富/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎
お金や持ち物を盗まれたらムカつくし悲しいですよね。
しかしあなた自身からは何も盗まれていないことに気付くでしょう。
もちろん誰かに殺されたり危害を咥えられたりしたらあなた自身の存在も盗まれてしまいますが、生きてさえいれば何を盗まれても失うものなど何もないのです。
お金や物がなくても生きているだけで価値があるのです。
お金で買えるものにほんとうの価値はない
彼らが手にしている富は買えるんだ
僕らは数えないし失くすこともない
世界はまだ不幸だってさ
出典: ありあまる富/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎
カール・マルクスの「お金で買えないものはない」という言葉をご存知でしょうか。
たしかに、何か娯楽になるようなもの、ゲームや本を買えば「楽しい」「わくわく」といった感情も買うことが可能です。徒歩でなくタクシーを使えば時間を買うこともできますね。
しかしお金で幸せは買えるか、というと実はそうでもない人が大半。どんなに富める人でも喧嘩や争いで消耗している場合があります。
つまり、お金で買えないものはないけど、それで幸せになれるかというとそうでもない、ということをこのフレーズで解釈できます。