岡村靖幸【あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう】歌詞解釈！シュートを決める場所は？！

そして、この部分で“あの娘”に近づけない理由がはっきりします。

この主人公、おそらくあの試合を最後に転校してしまうのです。

大好きな“あの娘”のいるこの街から出ていかなくてはならない。

二人が離れ離れになってしまうことを知っていたから、親密になれなかったのです。

せめて、あの最後の試合でカッコいいところを見せることができたなら。

少しでも自分に興味を持ってくれる出来事があれば。

告白はできなくても、自分のカッコいい姿を目に焼き付けてほしかったのでしょう。

引っ越しの用意を終え、家の外で待っている両親。

まだこの街との別れを上手く飲み込めないまま、旅立つ準備ができているパパとママの姿を見つめるのです。

自分の気持ちさえ伝えることができなかった、片想いの恋。

主人公は、新しい街で、また新しい恋に出会うことはできるのでしょうか？

明るく爽やかなメロディーに、こんなせつない想いが隠れていました。

大好きな“あの娘”にはもう二度と会えなくなってしまう。

それなのに、告白すらできなかった。

そんな後悔の念に、主人公は苛まれます。

実際に、何もできなかった恋の方が心に残るものです。

付き合って別れた失恋より、ずっと憧れたままだった片恋。

そちらの方が、時を経るにつれて思い出が美化されてしまうのです。

だからこそ、ずっとずっと引きずってしまう。

でも、この主人公は「そんなのは違う」と否定しています。

もちろん、誰か一人に恋い焦がれる気持ちは美しいものです。

しかし、それによって自分が苦しめられるならどうでしょう。

苦しくなってしまうくらいの想いなら、捨ててしまった方がいい。

諦めない強い信念だって素晴らしいけれど、それだけが正しいわけじゃない。

大事なのは、次に進むことです。

最後の試合では自分のせいで負けてしまった。

好きな人に想いは伝わらなかった。

そればかりか、カッコわるい姿を残して離れ離れになってしまった。

だからといって、それをいつまでも悩んでいる場合ではないのです。

この主人公は、新しい街、そして新しい学校へ行くことになるでしょう。

生きる場所が変われば、今までの人生とはガラっと変わるかもしれない。

弱小チームに入れられるし、今まで嫌なことばっかりだったけれど。

今まで大切にしてきた“あの娘”への気持ちは、もう諦めてしまっていいのです。

そう言い聞かせて、主人公は新たな一歩を踏み出します。

先述にある通り、ぼくがロングシュートを決めたかった場所は“あの娘”の心。

ですが、このロングシュートは決めるばかりか、打つことさえできませんでした。

だから“どんな顔するだろう”なのでしょう。

ぼくの気持ちを伝えたら、“あの娘”は一体どんな反応をしたのだろう。

あんまり仲良くなかったし、うっとうしがられるかもしれない。

でももしかしたら、喜んで答えてくれたかもしれない。

離れ離れになるとしても、ロングシュートを打てばよかったかもしれない。

そんな想いが、タイトルにギュっと詰まっています。

岡村靖幸がつくる楽曲には、恋愛が絡むものがわりと多いような気がします。

この曲が収録されている「家庭教師」も、半分以上は恋？っぽい背景がある曲。

しかし、ここまで青春感が強いものは今回紹介した曲だけです。

サウンドの雰囲気も、他の楽曲とは大きく異なります。

またこれはアルバムの流れの話ですが、この曲のひとつ前は「家庭教師」という歌。

アコースティックギターとスキャットでつくられている曲です。

本人の吐息と長ゼリフで、かなり妖しいセクシーな雰囲気。

そして、その次には「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」。

この曲までは全体的に色っぽいような大人な雰囲気ですが、ここでガラリと変わります。

さらにアルバム全体の流れやテーマも少しだけ変わります。

興味があれば、ぜひこんなちょっとした変化も楽しんでみてください。

聴けば聴くほど、独特すぎる才能を発見できる岡村靖幸の楽曲。

今回取り上げたものだけでなく、天才的な曲たちがまだまだあります。

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少しでも気になった方、ぜひチェックしてみてください。