それに続く2幕目のラップ.
GUN SHOTのくだりで気分を上げておいて、けして良い子ぶらないで叫びます。
本当に大切な宝物は、すっと昔から心のなかにある。
「志」や「歌詞」は【夢】や【愛情】とも読みかえられます。
つまり、そういった純粋な想いが、日々の雑音や計算のなかで価値を下げられていくことにたいして、GUNをぶっ放すわけです。
心の中から湧き上がる宝物。
本当に大切な宝物は心の中から湧き上がってくる夢なんだ。
それは昔から変わっていない。
そんなふうにまとめられているのです。
この内容がラップに乗った甘く、キレと艶っぽい余韻のあるHUM-KUNのヴォイスで奏でられます。
もうたまりませんよね。
愛と夢が心のなかで絡み合う。
さらに2幕目と3幕目の幕間に再びYU-Aがベースコンセプトとなるメロディを歌い上げます。
これが、オムニバスに広がる夢への思いを【貴方への気持ち】にもう1度引き寄せてくれます。
しかし、前段とは違い、私が歩いていくのは遠く暗く細い道の先にある貴方のところです。
この、夢と愛がないまぜになって昇華していくところは、ググッと胸に迫ってしまう方も多いことでしょう。
本当に大切なものを守るスタイル。
音速の貴公子アイルトン・セナ
このSwag like a daiamond ってこたぁ分かっとるで どけパちもん Yo
生きとるだけ儲けもんって暮らしの中で奏でるトーン
音速でかけるアイルトン・セナばり攻めるCorner I gotta go Yo!
Walking on the Red Carpet
出典: 信ジルモノ/作詞:YU-A,AK-69,HUN-KUN 作曲:U.M.E.D.Y.,WolfJunk,CONTROLLER,HIDEA
そして佳境となる3幕目を担当するのはAK-69。
ちなみに若い人にはここで出てくるアイルトン・セナを知らない人も多いと思います。
80年代の後半から90年代初頭に日本で絶大な人気のあったブラジル人F1パイロット。
(時速350キロで走るF1はドライバーではなく、パイロットといいます)
1988年・1990年・1991年とワールドチャンプに輝いてもいます。
ギアが壊れようとホンダエンジンを積んだマシンを繰って勝ちまくるスーパーヒーロー。
セナが勝ったレースには彼のテーマミュージックが流れました。
94年レース中に壁に激突して亡くなったときは、列島全体が泣いたものです。
ダイヤモンドのように輝いていきるぜ。
そう ここにはない壁 DickiesのまんまでFlash
たかれまくる万馬券 What's Real? Who's Not?
格が違うんだてこのOne shot
政治媚び売りなんて Pass Pass
駆け上がるて I got a Swag Swag Swag
出典: 信ジルモノ/作詞:YU-A,AK-69,HUN-KUN 作曲:U.M.E.D.Y.,WolfJunk,CONTROLLER,HIDEA
話をもどします。AK-69は歌います。
とにかくパッチものではない、すっげえダイヤモンドみたいなモノをオレたちは目指す。
ここには壁はないし、レッドカーペットの中央を歩こう、そんな生き方こそ本物だし、楽しいんだ。
彼のスパイスの効いたシャウトが、小気味良く訴えます。
「高潔で強靭なスピリットを心により高みを目指してやるさ」
一見HUN-KUNのパートをAK-69のやり方で言い換えているようにも見えます。
しかしよりハードボイルドでワイルドなコンテンツ。
それを彼独特の個性と声色を持って表現。
より強いインパクトをもって展開するパートとして成功しているのです。
ハードボイルドというのは、具体的な「モノ」を出することで人格やシーンの広がりを象徴させる表現方法です。
音速の貴公子と言われたセナのように攻めるコーナー。レッドカーペットを歩く。
これほど真剣勝負で命を真っ直ぐ燃やすシーンはありません。
そういう瞬間こそ大切な本物なのです。
万馬券や政治に媚を売ることなんて、パッチモノ。
誰だってBAD BOYやSEXYLADIESなのです。
オムニバス構造がコンセプト・テーマでしっくりとまとまります。
テーマ・メロディーに優しく収まっていきます。
ちょっとラディカルでハードボイルドに盛り上げたところで、引き続くHUN-KUNのパート。
少し穏やかにテーマに引き戻します。
誰よりも遠くに、1歩でも前に、長く遠い道のりを羽ばたいていくことで大切なことに近づく、と続けます。
そしてラスト、つまりエピローグとしてYU-Aの締めのメロディ。
貴方の元に近づく。
じーんと感じる一方、意志を感じ、夢が開け、一方で心静かに感動し、余韻に満ちた幕落ちです。
リスナーの心も広がり、落ち着く表現です。
曲のコンセプトワークをしっかりと完成させる。
同時に実力をもった偉大な個性がそれぞれに想いを歌い上げて広げた世界。
それらをつなぎとめる【夢】そして【愛】という想いの大切さを思い起こさせてくれるのです。
だからこそ、オムニバスになって散り散りに離れていきそうなシーンをしっかりとベースコンセプトでつなぎます。
曲と歌詞の根元をひとつにつなぎとめつつ、同時に広がっていく構成として成功しているのだといえます。