1979年発売のオフコース15thシングル「愛を止めないで」
オフコースは1970年~1989年に渡り活動したバンドです。
メンバーは、ボーカルの小田和正、ベースの清水仁、ドラムの大間ジロー、ギターの松尾一彦。
小田和正と聞くとソロのイメージが強い方もいるかも知れません。
小田和正がソロ活動を本格化させたのはオフコース解散後の1989年以降です。
オフコースは数々のヒット曲を生み出し、日本音楽史に名を残すアーティストとなりました。
ストレートに愛を歌い上げるスタイルが幅広い世代の絶大な支持を受けます。
その楽曲は今も色褪せる事無く、次の世代に歌い継がれています。
「愛を止めないで」は1979年に発売されたオフコース15枚目のシングルです。
迷いも照れもなく、無償の愛を表現したこの楽曲は聴く人の心を掴んで放しません。
リリースから約40年が経った今、この名曲の歌詞を改めて紐解いてみましょう。
繊細に描かれる揺れる心
「僕」のやさしさへの戸惑い
「やさしくしないで」君はあれから
新しい別れを恐れている
出典: 愛を止めないで/作詞:小田和正 作曲:小田和正
「やさしくしないで」という「君」の台詞からこの曲はスタートします。
「やさしくしないで」の一言の中に「君」の揺れる心が凝縮されています。
新しい別れを恐れている「君」。
やさしくされると好きになってしまう。
そうして始まった恋愛にはいつかまた別れがやってくる。
「新しい別れ」という言葉から、「君」はもうすでに別の別れを経験しているのでしょう。
その別れがつらく苦しいものであったのかも知れません。
また傷つくことを恐れ、新しい恋愛に踏み出すことを躊躇っています。
しかし、本心は自分に優しさをくれるその人に惹かれています。
自分の心にブレーキをかけつつも、惹かれていく自分に戸惑っている。
そんな心の機微がこの二行に描かれています。
少しずつ揺れ始める「君」のこころ
ぼくが君の心の扉を叩いてる
君のこころが そっとそっと揺れ始めてる
出典: 愛を止めないで/作詞:小田和正 作曲:小田和正
この歌詞で「君」にやさしさを授けていたのは「ぼく」であることが分かります。
「ぼく」は「君」の心が過去の恋愛で傷ついた事を良く知っているのでしょう。
いきなり熱烈にアタックするのではなく、「君」の傷口に触れないよう優しく心の扉をノックします。
「ぼく」のその優しさが次第に「君」の心の扉を開いてゆきます。
恋愛に酷く傷ついた「君」のこころが「ぼく」に惹かれ始めているのです。
でも、あくまでそれは「そっとそっと」。
一歩一歩、おそるおそる、「君」は躊躇いと期待に心揺れ動きながら「ぼく」と向き合い始めます。
歌詞を読むと、ひらがなが多用されている事に気付きます。
「やさしく」「ぼく」「こころ」。
ひらがなで表現されることでよりソフトな印象になります。
そしてこの恋に対する「ぼく」の等身大で飾らない感情が伝わります。
まだ見ぬ未来へ
愛を止めないで そこから逃げないで
甘い夜はひとりでいないで
出典: 愛を止めないで/作詞:小田和正 作曲:小田和正
再び傷つく事への不安と、「ぼく」との新しい恋愛への期待に揺り動かされる「君」。
そんな「君」の気持ちが「ぼく」には痛い程分かっています。
だからこそ、これまでは遠回しにやさしさという形で「君」と関わってきました。
でも、「ぼく」はここで初めて強く「君」に愛を語りかけます。
恋愛で傷を負っている「君」に自分への「愛を止めないで」とストレートに伝えます。
そのシンプルな言葉には覚悟や勇気が入り混じった深い決意が伺えます。
過去の記憶は自分との愛で乗り越えてゆける。
だから「そこから逃げないで」と「ぼく」は言います。
過去の恋愛にとらわれたままでいるのではなく、一緒に未来へと踏み出そう。
そうすれば「甘い夜」だってまたやってくるのだと「ぼく」は「君」に伝えました。
「君」のすべてを受け止める「ぼく」の覚悟
過去と未来との狭間で
君の人生が ふたつに分れてる
そのひとつが まっすぐにぼくの方へ
出典: 愛を止めないで/作詞:小田和正 作曲:小田和正