はじめに
中心メンバーでメインボーカルの村上は、医学部を卒業しています。
そのせいか曲名やアルバム名に、理系っぽい、あるいは哲学っぽいものが多いのも特徴です。
「ダーウィン」、「偶然か運命か」、「永遠について語るとき、私たちの語ること」。
ダーウィンとは、進化論を唱えて今日の生物学をつくった天才。
そして今回紹介するのは、「アテネ」です。
ギリシャの首都、古都であり、ギリシャ文明の花開いた遺跡の多い町。
ソクラテスやプラトンが、永遠について語り合った町です。
なぜこんなタイトルがついているのか。
それをこれから見てゆきましょう。
MVを見る

まず公式ミュージックビデオを見てみましょう。
なかなか工夫のあるビデオです。
最初に大きな知恵の輪のようなものが回転しています。
なにか知的なものを暗示する映像です。
その後メンバーが東京都内の某所でひとりずつ、映ります。
紅一点の女性メンバーが鮮やかなドレスで立っています。
移動するカメラで顔を撮る。
しかしその意味はわかりません。
だから歌詞を読む必要があります。
歌詞を解説
相対的なもの
最高最低って騒ぎなさんな
ほら続きをはじめましょう
散ると知って咲いた花は
咲けると知って散ってくの
絶頂絶望騒ぎなさんな
色仕掛けはお手のもの
自由と知って咲いた花は
ほら続きを見せてよ
のぞむのなら目を閉じるよ
出典: アテネ/作詞:村上学 作曲:村上学
花から考えて見ましょう。
それは散るもの。
でも咲いた一瞬は美しく、永遠のものと言いたいのです。
花は移ろいゆく時間の比喩としてよく使われます。
一瞬咲いたときの、目を奪う美しさというのは、永遠と言いたくなるものなのです。
ここでは、花が女性に重ねられています。
女性も花咲く存在。
恋する人の輝きも、また一瞬の永遠なのです。
最高とか最低とか、相対的な上げ下げとはまったく別なもの。
相対的なランクの世界と全く別に、絶対的ななにかがあるのです。
他人より背が高いとか、見栄えがいいとか、関係ない。
その人、その花、その曲そのもののなかにそれぞれ大事なものがある。
比較を超えた貴重なもの。
だから誰もが輝けるのです。
そのことに気づきさえすれば!
時間を超える
I believe in you forever
君に誓うよいつか世界が終わるとしても
人は誰でも求めてしまうから
永遠を
永遠を永遠を
出典: アテネ/作詞:村上学 作曲:村上学
君と言うのは恋人でしょう。
世界はいつまで続くか誰も知らない。
でも歌い手は、咲いた花のような、美しいあなたを信じると言います。
あなたもいつか、散ってしまうかもしれない。
でも今この瞬間の、あなたを信じる、あなたという永遠を信じることを誓うというのです。
あなたは永遠であれ。
たとえ世界が滅びても。
愛とはこういうものかもしれません。
人は限界の向こう側を求めてやまない。
求めちゃいけないかもしれない。
もっと現実を見ろ、とか言われます。
でも求めてしまうのはナゼ?
瞬間と持続するもの
点と線
最高最低って騒ぎなさんな
ほら続きをはじめましょう
うつろう刹那の中
偶然万年の声を聞け
いつか私がこの世を去ろうとも
続く道を行くだけ
それは目には見えない
手を伸ばせば消えるんだ
出典: アテネ/作詞:村上学 作曲:村上学
偶然や万年という歌詞から考えましょう。
長い長い時間を超えてきたアテネの神殿を見るとどうでしょう。
数千年の時間を越え、なにかが生き残っていると感じます。
一方で毎日は偶然、偶然の連続です。
意味があるのか、秩序はあるのか、わからないけどいろんなことが起き続けます。
瞬間の積み重ねと、人生、世界の歴史。
ばらばらなものと一貫したものが、世界には共存しています。
1秒1秒は不確かで曖昧なのに、歴史を見ると何か流れが起きています。
なんだこれは?
歌い手は手を伸ばそうとして、ためらいます。
なにか、平凡な日常にはおさまらない、何か変なものがあるぞ。
偶然が続く中、なにか続いているものがある。
歌い手が死んでも、そのなにかは同じ続く道をゆくだろう...。
この道とは、その果てにあるものとは、何でしょう?