「ライディーン」を細部まで聴いてみる
馬の蹄の音は細野晴臣
「ライディーン」の音源を入手できる方は耳を澄まして隅から隅まで聴いてみてください。
様々な音が挿入されていることに気づくはずです。
当時最先端の機材と、人力による知恵で様々な音をメンバーが鳴らしています。
馬の蹄の音は細野晴臣による発案です。
細野晴臣が愛用したKORG PS-3100という機材によるもの。
その他、立体的な音響になるように相当な工夫をして録音されたあとが窺えます。
高橋幸宏のドラムはリンゴ・スターが原点
この曲はシンセサイザーばかりに耳が奪われがちですが高橋幸宏によるドラムの演奏も素晴らしいです。
高橋幸宏はThe Beatlesのリンゴ・スターをアイドルとしています。
リンゴ・スターのドラムの特徴はとにかく何よりも歌や主旋律に寄り添うという点です。
The Beatlesではポール・マッカートニーがリンゴ・スターの替わりにドラムを叩いたりしたこともあります。
それでもリンゴ・スターだけにしか叩けないドラムのスタイルというものが確かにあるのです。
高橋幸宏はリンゴ・スターに憧れを抱き続けたからこそ主旋律に寄り添うドラムスタイルを習得しました。
彼のドラムは「ライディーン」の大きな聴きどころのひとつです。
「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」の影響力
1980年度年間LPチャート1位
アルバム「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」の影響は絶大です。
オリコン・チャート年間LPランキング1位(1980年度)という正にYMOの金字塔です。
海外で火がついたYMOの人気が日本に逆輸入された時期でもあります。
日本中の音楽ファンがテクノ・ポップに関心を寄せました。
先駆者・クラフトワークとの比較
テクノ・ミュージックはドイツのクラフトワークが先行していました。
事実、YMOがデビューした1978年には大ヒットしたアルバム「人間解体」を発表しています。
ただ、YMOのテクノ・ポップと比べるともう少し哲学的な印象があるのがクラフトワークの音楽です。
1975年の「Radio-Activity」などは再結成後のYMOがライブでカヴァーするなど影響力は絶大。
しかしやはりクラフトワークは政治的先鋭さなどでYMOの音楽と比べ同じテクノでも若干の違いがあります。
YMOはスネークマンショーやS.E.T.などとコラボアルバムを制作。
人気演芸番組に「トリオ・ザ・テクノ」と称して出演し、漫才を披露するなど遊び心が満載でした。
同時代と後世に続く絶大な影響力
YMOの多大な影響力は文化のあらゆる場面にまで浸透しました。
音楽家たちへの衝撃は計り知れません。
あの伝説的なサックス・プレイヤーの阿部薫も晩年はYMOに関心がありました。
また、当時のシーンだけでなく、多数の「YMOチルドレン」を生みだします。
電気グルーヴ、コーネリアス、テイ・トウワ、ケン・イシイなどなど。
「YMOチルドレン」もまた世界を股にかけた活躍をしているのが素晴らしいです。
その他、「週刊少年ジャンプ」連載の江口寿史「すすめパイレーツ」などにメンバーが登場しています。
音楽家だけでなく幅広いサブ・カルチャーの領域まで影響が及びました。
「ライディーン」と浮世絵
日本的でありながらも世界的な音楽
「ライディーン」に関するエピソードにも世界を視野にしたものが多数あります。
キーワードは「浮世絵のイメージ」です。
坂本は「『雷電』には東海道五十三次のような浮世絵のイメージがあり、浮世絵が世界に影響を与えたように、自分達の音楽も世界に影響を与えることと重ね合わせた」と発言している
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/ライディーン (YMOの曲)
日本の文化・浮世絵はヨーロッパの画壇に多大な影響を与えました。
ゴッホが浮世絵を収集、模写していたエピソードは有名です。
YMOも「ライディーン」は日本的でありながら世界的な影響力を持つのだという自負がありました。
彼らの目論見は見事に成功します。
「ライディーン」を含むアルバム「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」を引っさげての世界ツアー。
現地を興奮の坩堝(るつぼ)にたたき込みます。
第1回のワールド・ツアー「トランス・アトランティック・ツアー」。
このツアーではサポートに矢野顕子、渡辺香津美、松武秀樹と錚々たるメンバーで欧米を周りました。
ツアーの内容は後に「パブリック・プレッシャー」というライブ・アルバムに結実します。
名盤ですので、まだ聴いたことのない方はぜひ触れてみてください。