まるでこの世界には自分ひとりしか存在していないのではないかというぐらいの強い孤独感を感じているのでしょうか。
心の拠り所や支えを失くしたときにはそんな感情にも襲われることがあります。
でも、日々は残酷にも止まることなく過ぎ去っていきます。
そんな日々の中で薄れて、消えてしまいそうな大切な人の声。
それは、今の自分に残されているたったひとつの光のようなものなのでしょう。
誰ひとりいない街を
影を追いながら歩くの
止まることなど出来ない
つらくても
Here we go here we go
声がするの
問いかけても応えのない voice
儚くて 微かで 消えそうな
All the voice in my heart
消えない声が 幾度こだました
あなたはいま どこにいますか
出典: VOICE/作詞:STY 作曲:Aaron Benward, Matthew Tishler, Felicia Barton
忘れたい、忘れない
大切な人が自分の前からいなくなったときの喪失感。
それを感じたときは様々な想いや感情が生まれては消えずに思い出と共に心に刻まれます。
ここでは喪失感の中にある寂しい、哀しい、会いたい、触れたい、声を聞きたい、愛しい…。
そんな感情や想いを7人のテヨンによって表現しているのではないでしょうか。
そしてここで注目すべきは中央で歌っているテヨンです。
それは大切な人を失ってしまった哀しみと向き合いながら必死で心のバランスを保とうとする今の自分なのです。
1人のテヨンと7人のテヨンは全て違う方向を向いて歌っています。
いっそのこと想いも、記憶も消し去ってしまいたい。
決して想いも、記憶も忘れない。
これはこのふたつの感情がぶつかり合って、互いに向き合わず認めることもしないということなのです。
あなはまだ私の中に
暗転から一瞬で消える6人のテヨン。
そして、一瞬で入れ替わり残ったのは…。
ふたつの感情の中で揺れる心を約17秒の中で秀逸に表現しています。
消えない記憶・消せない想い
自分の全てといっても過言ではない、大切な存在だったのです。
それを失ったとき、そのひとつひとつを残らず記憶しておきたいと思うのは当然のことです。
その人を大切に、愛しく想っていた自分の想いさえも。
忘れたくても、消し去りたくても、あの人の存在なしでは今はまだ前には進めないのです。
You're always in my heart
耳をすませば あなたの声が
まだ私には頼りなの
I got your voice
どこにいますか
You hear me call?
出典: VOICE/作詞:STY 作曲:Aaron Benward, Matthew Tishler, Felicia Barton
ふたつの感情のその先に…
ぶつかり合ったふたつの感情はやがてはひとつの感情へ行きつく様子がここでは描かれています。
中心にいた感情を押し殺しているテヨンが、感情を露わにしているテヨンに入れ替わっています。
これが示すものは、喪失感の中の感情を受け入れた、または支配されたということなのではないでしょうか。
寂しい、哀しい、会いたい、触れたい、声を聞きたい、愛しい…。
それを受け入れ、支配されたとしても、もう感情を押し殺している自分は完全に消えてしまったのでしょうか。
出会った頃に
ここから登場するテヨンは、1番のテヨンとは雰囲気が一気に変わります。
その3人のテヨンは何を、どんな想いを表しているのでしょうか。
あの頃の私
出会った頃の過去の自分は、全てのことから目を背けて、殻に閉じこもっていたのでしょう。
朝が来るのが怖くて、朝の光が臆病な自分を責めているように感じていたのです。
新しい陽を見ると
追い詰められそうになるの
逃げるように走る
つらくても
出典: VOICE/作詞:STY 作曲:Aaron Benward, Matthew Tishler, Felicia Barton
3人・3色のテヨン
ここでは、白・黒・赤の衣装を纏った3人・3色のテヨンが登場します。
3人のテヨンは過去の自分です。
そして、3色のテヨンはそれぞれ過去の感情とどんな自分だったのかを表しているのではないでしょうか。
白・黒・赤それぞれのカラーイメージから連想できるのはあの時の感情とあの頃の自分です。
大切な存在を失くした今の自分も、大切な存在が近くにいた過去の自分も、強くその人を求めているのでしょう。