ある事故がきっかけで書かれた曲

バースデーソングというと、ハッピーなイメージがありますがこの曲は違います。

いわゆる楽しい誕生日ではなく、切なすぎるバースデーソング

それが湯木慧(ゆきあきら)の「バースデイ」です。

「バースデイ」は、ある事故がきっかけで生まれた曲だと言われています。

それは、母と子が交通事故に合い、お母さんだけが亡くなってしまったという事故。

そしてその事故の次の日が、子供の誕生日だったそうです。

お母さんと一緒に祝うことができなかった誕生日。

母親は子供に何を伝えたかったのか、そして子供はお母さんのいない誕生日をどう思ったのか。

想像するだけで胸が押しつぶされそうになりますね。

この事故をきっかけに湯木慧が曲を作り、リリースしたのが湯木慧の20歳の誕生日でした。

誕生日には毎年、当たり前のようにお誕生ケーキを家族で囲んで食べる。

「バースデイ」のMVでは、それが本当に当たり前のことなのか問いかけているように感じます。

MVには何が映っている?

シンプルな背景に、あるのはたった一つのテーブル。

誕生日なのに、暗い雰囲気が漂っていることにまず驚かされました。

しかし食卓に手作りの食べ物が出てきた瞬間、なんとなく明るい雰囲気になります。

はじめにあらわれるのは、温かみのある「手作りの料理とそこにたたずむ人々」。

次にあらわれるのは、冷たい感じを受ける「コンビニ食やジャンクフードと後ろを向いた人々」。

最後にもう一度、温かみのある「手作りの料理とそこにたたずむ人々」。

ざっくりと分けると、この3つの展開に分けられると思います。

この3つのシーンを深堀りしながら、映像に込められた意味を探っていきます!

手作りの食べ物が出てくる

赤いスープは何を意味する?

たったひとつのテーブルの上に並ぶ最初の食材は「赤いスープ」です。

なんだか血のように見えて、背筋が冷たくなるのを感じますが、どんな意味なのでしょうか?

これは、まさに「人間の血」を表しているのだと思います。

生まれてくるときにはじめてもらったもの。

それは生きている間体の中を流れ続ける「血」です。

血はいわば”命の象徴”。

はじめての誕生日に親からもらったものが「血」というわけです。

血が作られるためには、何かを食べ続ける必要があります。

そう考えると、食べることは生きること

そして食べ物を毎日作ってくれたのは、他でもない「お母さん」なのです。

もちろん、中にはお母さん以外の人が食事を作ってくれることもあるでしょう。

ご飯を作ってくれるその人が、命を続けさせてくれているのです。

そこにはやさしさがあった

MVでは、赤いスープの次にはハンバーグ、オムライスと次々に手作りの料理が出てきます。

お弁当、梅干しの乗ったお粥…。

どれも美味しそうで、その温かさが伝わってくるようです。

そして聴こえてくるのは「やさしさ」や「愛情」という言葉。

当たり前のように食べているのは、作ってくれた人のやさしさや愛なのかもしれません。

食卓に何気なく乗っている食べ物ですが、作ってくれた人がいることを忘れてはいませんか?

今の時代はお母さんも働かなくてはならない忙しい時代。

そんな時代に保育園で月に1回出されるお弁当を、子供達はとても楽しみにしています。

それはお母さんが作ってくれるお弁当だから。

保育園に通うお子さんだけでなく、どんな人でも愛情たっぷりのお弁当はうれしいものですね。

大人になると、なかなかお弁当を作ってもらう機会もないかもしれません。

でも、手作りの食べ物を食べると、なんだか元気が湧いてくることは知っているでしょう。

時間をさいて作ってくれた人がいるからこそ、毎日の食事を美味しく食べられるのかもしれません。

「おいしい」の一言で、心温まるひとときがはじまる。

愛情をこめて作ってくれた料理には、限りない力があるのです。

登場人物がたたずんでいるのはなぜ?

食べ物とは別に、気になるのは背後に立っている人々

そこにいるのはお母さん、おじいちゃん、おばあちゃんでしょうか。

主人公の女性を見ているわけでもなく、側にただたたずんでいます。

もしここに人々がいなかったら?

部屋にぽつんとひとりで食べる食事は、あまりおいしくありません。

いつもみんなと食べるときには、もっとたくさん食べるのに、いつもの半分しか食べられなかったり。

ひとりで食べるのとそこに誰かがいて食べるのとでは、感じ方が全く違うのです。

特に面白い話をするわけではないけど、自分に注目しているわけではないけど、家族がただそこにいてくれる。

それだけでなんだかほっこりとした気分になり、気持ちがリラックスするのです。

MV中にたたずんでいる人々は、家族の象徴ではないでしょうか。

普段はあまり考えることはないけれど、これこそが「幸せ」の1ページなのかもしれない。

そう感じさてくれるMVの前半でした。

しかしこの幸せはそう長くは続かないようです。

コンビニ食やジャンクフードが表すものとは?

大きくなって食べたもの

やがて人々は後ろを向き、お皿の上には何もなくなりました。

その後はお皿に乗った料理を持ってきてくれる手も出てこなくなります。

家族がいなくなってしまったのでしょうか?

もしかしたら、女性は一人暮らしをはじめたのかもしれません。

なんとなく悲しい気持ちがたちこめたと思ったら、次には食べ物が出てきました。

しかし出てきたのはラーメン、コンビニで買ったサンドイッチやスパゲッティー…。

ひとりで食べる食事の代表です。

ひとりで食べるなら、買ってきちゃえ。

自分のためにご飯を作ることが面倒になり、そう考えることも多いでしょう。

しかしそんな食事を続けていると、気が滅入ってきてしまうのです。