Coccoという人
沖縄出身のシンガーソングライターCocco。
高校時代はプロのバレエダンサーを目指してオーディションを受ける日々でした。
だけど沖縄から東京のオーディションに参加するにはお金がかかります。
その為軍資金を手に入れるべく、ビクターの新人歌手発掘オーディションに出場した彼女。
それが歌手としてCoccoが開花するきっかけでした。
残念ながら、賞金100万円を目指して受けたオーディションには受かりませんでした。
興味を持ったレコード会社の担当者の説得により、歌手として活動することを選びます。
このお話を聞くと、人生には何があるかわからないなあ、とも思わされますね。
また元々バレエダンサーを目指していた、という彼女。
これを踏まえると、迫力ある彼女の歌の表現力にもだいぶ納得がいくのではないかと思います。
譜面の読めないシンガーソングライター
しかし、Coccoは歌手として大成するためにデビューの道を選んだのではありませんでした。
もともとCoccoにとって歌を歌うことは「感情を吐き出す行為」のようなもの。
頭の中で響くメロディと歌詞を口にしているだけでした。
だから彼女は、実は譜面も読めなければ作曲の勉強をしたこともありません。
歌手になったのも「バレエで自分を認めてくれなかった人を見返したい」。
あるいは「歌手でお金を貯めて毎日踊り続けられる劇場を作りたい」。
そのような不純な動機だったんだそうです。
Coccoが吐き出すように作った歌たちに、当初Cocco自身は愛着を持てませんでした。
しかし、活動を続けていくうちにCoccoの心に変化が生まれ始めるのです。
歌うことが好きになり、活動休止の道を選ぶ
だんだんと歌を歌うことが好きになってきたCocco。
しかしその一方で、不純な動機から歌手として活動し始めたこと。
そして本当に歌いたい歌ではなく、リリースに関係した歌を歌わないといけない矛盾。
そのようなもやもやとした気持ちを抱えてしまい、次第に彼女にとって歌うことが苦しい行為に変わってしまいました。
そして、彼女は一度歌を歌うことを辞めてしまうのです。
「強く儚い者たち」

今回ご紹介する「強く儚い者たち」。
この曲は1997年にリリースされた、Coccoのメジャーデビューから2枚目のシングルとなっています。
彼女がリリースしたシングルの中では、一番のヒット作となったこの曲。
そのため、きっと多くの方が聴いたことあるかも、と思うのではないでしょうか。
MVでは、広大な草原の中でのびのびとこの歌を歌うCoccoの姿が映し出されています。
そんな彼女の姿と共に織り込まれる、影のような多くの人々。
どこか不穏な雰囲気を感じさせるそのシルエットから、もしかしたら彼らはこの世にはいない存在なのかも。
もしかしたら当時すでに、彼女の中では歌を歌う事への葛藤が生まれていたのかもしれません。
Coccoはただ感情を吐き出すつもりで作った歌。だけどその歌は多くの人に衝撃を与えました。
筆者も初めてこの曲を聴いた時に、Coccoの声、歌い方、歌詞。
すべてに強い印象を受けたのを20年経った今でも覚えています。
そのように、多くの人々の心に衝撃を与えたこの曲。
ここからは早速、そんな楽曲の歌詞を紐解いていこうと思います。
Coccoはこの楽曲で、どのような物語の情景を描いているのでしょうか。
とある港での物語
愛する人を守るため
大切なもの築くため
海へ出たのね
嵐の中で戦って
突風の中生きのびて
ここへ来たのね
出典: https://www.uta-net.com/song/10205/
恋人を生まれた島へ残し、旅の途中で遭難したある男性がこの物語の主人公。
彼はどうやら船に乗って、広い大海原を旅していたようですね。
海の天気は変わりやすく、なかなか読むことができないもの。
その為彼の海の旅は、順風満帆なものとはお世辞にもいえないもののようでした。
船を煽る大波や海風、そしてついには嵐に巻き込まれ…。
運よく流れついた場所がこの曲の舞台なのでしょう。
愛するお姫様の事を心の拠り所にし、命を懸けた旅を続けてきた男性。
彼は流れ着いたこの場所で、一人の女性に助けられます。
誘惑と、揺れる心
この港はいい所よ 朝陽がきれいなの
住みつく人もいるのよ ゆっくり休みなさい
疲れた羽根を癒すの
出典: https://www.uta-net.com/song/10205/
命からがらこの場所に辿り着いた男性を、彼女は解放したのでしょう。
暖かい食事や寝床、ゆっくり休める場所を与えて。
まずは疲れた体を回復させて下さい。この港でゆっくりと休んでいきなさい。
きっとそう優しく言葉をかけたのではないでしょうか。
彼女のような優しい人がたくさんいて、そして様々な美しい景色が見られるこの街。
そんな街を気に入って、ここにずっと住むことを決意する人は、確かに多いことでしょう。
その彼女の「親切心」を、とてもありがたく思った男性。
次第に彼は少しずつ、女性によって変わっていくのです。