『Happy Meal』
アルバム『MODERN TIMES』収録
今回ピックアップするのは天才ラッパーPUNPEE(パンピー)の『Happy Meal』という楽曲です。
この曲は2017年に発表された初ソロ作『MODERN TIMES』に収録されています。
当時のPUNPEEはラッパーとしてのみならず音楽家・プロデューサーとしても確固たる地位を築き上げた時期。
そんな彼のキャリアの集大成ともいえる作品の1つが『Happy Mael』なのです。
40年後の未来から現代を俯瞰した作品
『Happy Mael』を語る上で欠かすことができないのがアルバム『MODERN TIMES』の存在です。
2017年に発表されたこの作品は『2057』という楽曲から始まります。
つまり40年後のPUNPEEが2017年を振り返るという批評的な作風が取られているのです。
また『MODERN TIMES』と聞いて思い浮かべるのはチャップリンの同名映画。
豊かな文明社会を得ることで失われゆく真実の自由を表現した傑作映画です。
果たしてPUNPEEは『Happy Meal』でどのような内容を語っているのでしょう?
お馴染みの映画ネタも併せて徹底的に深堀りしてみようと思います。
幸せな食事って?
ベネディクト夫人の真実
なぜにこの世はこうもシャカリキに 頭ごなしにダメと言いますが
答えを解くカギは実はここに ひょっとしてひょっとしない?
もしかして立ち入り禁止の場所に エッグベネディクトばりの真実が
どこを見ても嘘つきばかりなら 抜け出して見たくない?
出典: Happy Meal/作詞:PUNPEE 作曲:DJ MAYAKU
さっそくサビの歌詞から見ていきましょう。
『Happy Meal』、直訳すると“幸せな食事”です。
タイトルの通りこの曲には美味しそうな食べ物が次々と登場します。
最初に登場するのはエッグベネディクト。
ジューシーなハム、ポーチドエッグ、そしてチーズ風味の濃厚なソースが美味なあの食べ物です。
しかし楽曲の中で幾度も繰り返されるこのフレーズ、なんだか不穏な空気が漂っています。
ここでPUNPEEが引用しているのは“ベネディクト夫人の真実”と呼ばれる逸話です。
これは諸説あるエッグベネディクトの真の考案者とは誰?という謎への1つの回答だといわれています。
世界はあまりにも広く複雑です。
だから目に見えるものだけで真実を語ることはできません。
PUNPEEは楽曲を通して真の幸せとは何?という難題を追及しているのです。
映画産業の行方
激変の時代を楽しもう
ありったけのチーズバーガー チミチャンガにワッパー 端からまとめて食っちゃうんだ
キリがないTVドラマ トルティーヤにIMAX 世界はまだ楽しみ放題 安心だ
出典: Happy Meal/作詞:PUNPEE 作曲:DJ MAYAKU
ここからは1番の歌詞を見ていきます。
まず目につくのは美味しそうな食事、そしてなぜか同列に語られる映画やドラマに関するワードです。
PUNPEEにとっての“幸せな食事”とは豊かな人生を送る上で必要な要素を指していることが推察されます。
列挙されるファストフードは誰でもアクセス可能な情報・娯楽の比喩なのです。
ハリウッドの映画産業はインターネットの普及に伴い様々な危機に直面しているといわれています。
オンライン視聴の影響による観客動員の低下は投入される資本にも比例。
資金・マンパワーはNetflixに代表されるケーブル局制作のTVドラマに移行したのです。
一方でIMAX・4D上映などの体験型バリューを提供することで映画は生き残りを図っています。
根っからの映画好きのPUNPEEはこのような激変をどこか楽しんでいるようです。
映画やドラマが提供してくれる“物語”は彼の語彙をより豊かなものにしてくれるのでしょう。