実力派グループだったガロ

もともとは洋楽志向

【学生街の喫茶店/ガロ】歌詞を解説!あの頃はこの気持ちが愛だと分からなかった…知らない間に終わった恋の画像

3人組のGAROガロ)は歌も演奏も上手いグループでした。

リードボーカルの大野真澄はハスキーな声が魅力で、当時から髭とサングラスがトレードマークです。

日高富明堀内護が高音でハモる美しいコーラスは大野のボーカルを引き立てました。

ライブでふたりが弾くアコースティックギターは彼らが好きだったCSNによく似ています。

CSNとはクロスビー、スティルス&ナッシュの略で、1970年前後に活躍したアメリカの人気グループです。

伝説の野外ライブ『ウッドストック』のドキュメンタリーでも彼らが歌う映像を見ることができます。

有名なシンガーソングライターのニール・ヤングが加入していた時期もありました。

そんな洋楽志向の強かった彼らの初めてのヒット曲が1972年にリリースされた「学生街の喫茶店」だったのです。

学生街は今でもあちこちにあると思いますが、当時の喫茶店とはどんな場所だったのでしょうか。

昔の喫茶店ってどんな場所?

大人への入り口で青春をする場所

【学生街の喫茶店/ガロ】歌詞を解説!あの頃はこの気持ちが愛だと分からなかった…知らない間に終わった恋の画像

喫茶店に彼女とふたりで入って
コーヒーを注文すること
ああ それが青春

出典: 青春の詩/作詞:吉田拓郎 作曲:吉田拓郎

吉田拓郎がデビュー間もない1971年にリリースした「青春の詩」という長い曲の最初に”喫茶店”が登場します。

他愛もないことが青春だとユーモラスに歌っているのです。

大人になるにはジュースやコーラだけではなくて、まず苦いコーヒーが飲めるようになること。

次に昔は街なかにたくさんあった喫茶店にひとりで入ること。

それから彼女と一緒に喫茶店の扉をくぐることで少年がだんだんと大人になっていく時代があったのです。

今ではスターバックスなどの手軽な店に押されて昔ながらの喫茶店はあまり見かけなくなりました。

カウンターとテーブルとゆっくりできる椅子やソファー、そしてテーブルの上には灰皿が置いてあります。

入口近くのラックにはスポーツ新聞や週刊誌に漫画。

軽い食事のあとにコーヒーを飲んで一服というサラリーマンをよく見かけました。

そしてお金のない学生がコーヒーや紅茶一杯で延々と時間を潰せる場所でもあったのです。

お店のマスターも、あまり儲からないのに長居する学生たちを大目に見てくれていたのかもしれません。

有名作家が書いた「学生街の喫茶店」

好みじゃない曲が大ヒット?

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この曲の詞を書いた山上路夫(やまがみみちお)は赤い鳥の「翼をください」などで知られる作詞家です。

すぎやまこういちはグループサウンズで一番人気だったザ・タイガースの「花の首飾り」などを作曲しました。

『ドラゴンクエスト』シリーズの音楽で彼の名前を知っている人が多いかもしれませんね。

グループ全員が歌えてギターが弾けるにもかかわらずヒット曲のなかったガロのために彼らが曲を書いたのです。

彼らが好きだった洋楽とはかけ離れたメロディーとアレンジの「学生街の喫茶店」は大ヒット。

もともと実力があるからこそのヒットでもありましたが、そこには複雑な思いもあったようです。

ひとりで来た喫茶店で

BGMはボブ・ディラン

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君とよくこの店に 来たものさ
訳もなくお茶を飲み 話したよ
学生でにぎやかな この店の
片隅で聴いていた ボブ・ディラン

出典: 学生街の喫茶店/作詞:山上路夫 作曲:すぎやまこういち

主人公は学生時代の馴染みの喫茶店にひとりで来ています。

一緒によく来ていた”君”は友人なのかガールフレンドのひとりなのか、恋人なのかはまだ分かりません。

どこかの大学のそばにある学生がよく利用する店のようですね。

学生というのは基本的に暇ですから授業が終わったらとりあえずいつもの喫茶店に集合。

目的があって行くわけではないので、とりあえずなにか飲み物を注文してリラックスタイムが始まります。

友人たちと話す内容もそんなに大事なことではなくて、とりとめのない会話かもしれません。

まわりにいる学生たちもただ楽しくお喋りをしているようです。

喫茶店にいつも流れている音楽は、コーヒー一杯で手に入る彼らの大きな楽しみのひとつなのでしょう。

ボブ・ディランは「ライク・ア・ローリング・ストーン」などで有名なアメリカの超大物ミュージシャンです。

フォークからロックまで幅広い音楽をやる人で、2016年にはノーベル文学賞まで受賞しました。

70年代のはじめに喫茶店のBGMで流れていたとすれば、たぶんシンプルなフォーク系の曲だと思います。

彼の素朴な歌声とギターの音はあの頃”君”とよく来た喫茶店の雰囲気とともに記憶に残っているのでしょう。

ひさしぶりにひとりで来た喫茶店のたぶん隅っこの席に座った瞬間に、いろいろな思い出が蘇ったはずです。

当たり前が幸せ

失くしたものの大切さ