あの時の歌は聴こえない
人の姿も変わったよ
時は流れた
あの頃は愛だとは 知らないで
サヨナラも言わないで 別れたよ
君と
出典: 学生街の喫茶店/作詞:山上路夫 作曲:すぎやまこういち
時が経てばいろいろなことが変わっていきます。
主人公がひさしぶりに来てみた喫茶店の周囲の風景も変わり、客層も少し変わっているのかもしれません。
よく行った馴染みの店が他の店に変わっていたり無くなっていたりというのはよくあることです。
学生時代に毎日会っていた友人たちともなかなか会う機会がなくなってしまいます。
付き合っていた彼や彼女が結婚したという知らせが届くこともあるでしょう。
社会人になって忙しい毎日を過ごすうちに、自分自身が変わっていくこともあると思います。
当たり前のように過ごしていたのんびりとした時間がどれだけ貴重だったか、あとになって気がつくのです。
彼はいつも近くにいた彼女のことを好きだと自分では分かっていなかったみたいですね。
”君”にいつでも会えるとなんとなく思っていたから最後に会ったときに別れの言葉を言わなかったのでしょう。
卒業してからは一度も彼女と会うことはなかったようです。
そんなほろ苦い思い出を噛み締めながらひとりでコーヒーを飲む彼の姿が目に浮かびます。
店内に流れているのはボブ・ディランではなくて、彼の知らない少し明るめの曲なのでしょう。
失くしたものの大切さに気がつくのはいつも失くしたあとなのです。
もう会えない”君”
思い出が詰まった喫茶店
君とよくこの店に 来たものさ
訳もなくお茶を飲み 話したよ
窓の外 街路樹が美しい
ドアを開け 君が来る気がするよ
出典: 学生街の喫茶店/作詞:山上路夫 作曲:すぎやまこういち
彼はひとりで店の外を眺めながら、いろいろなことを思い出しています。
くだらない話で友人たちと大笑いしたことや、少し真面目な話をしたこと。
そして懐かしい彼女の笑顔や仕草も思い出しているのでしょう。
店の前の樹が季節とともに装いを変えていたことも今更のように気がついたのかもしれません。
いつも彼女と待ち合わせていた喫茶店が特別な場所だったのもあとになって気がついたでしょう。
店に入ってきた彼女の最初のひとことも思い出しているはずです。
そして店を出てふたりで歩いたことも今ではほろ苦く心に残っているのだと思います。
学生街の喫茶店にはいろいろな思い出がたくさん詰まっているのです。
心の中で繰り返す”君”
あの時は道に枯葉が
音もたてずに舞っていた
時は流れた
あの頃は愛だとは 知らないで
サヨナラも言わないで 別れたよ
君と 君と……
出典: 学生街の喫茶店/作詞:山上路夫 作曲:すぎやまこういち
最後に彼女と会ったのは卒業する前ではなく秋の終わりだったようです。
本当はカサカサと舞うはずの枯葉の音が聴こえないのはなぜでしょうか。
窓の外を舞っていたから音が聴こえないだけのかもしれません。
あの時の記憶が音ではなく映像として彼の心に蘇っているのでしょう。
彼が久しぶりにこの喫茶店に来るまでにどれだけの時間が経ったのかは分かりません。
楽しい思い出がたくさんあるはずの学生時代ですが、いつまでも心に残るのは切なくほろ苦い思い出です。
最後に繰り返す”君”に彼の後悔が表れています。
それは恋に気がつかなかった自分に対する後悔でしょう。
彼女とこの喫茶店で過ごした楽しい時間が実は恋をしている時間だったのです。
大切な時間を過ごしていたことに気がつかなかった彼の心が”君”を繰り返してこの曲は終わります。
思い出の場所へもう一度
タイムスリップした気分になれる?
みなさんにも懐かしい場所や思い出の場所がたくさんあるはずです。
時間があったらそんな場所に久しぶりに行ってみてはどうでしょう。
できればひとりで行くのがおすすめです。
昔住んでいたところや通っていた学校、デートをした場所など。
いろいろな思い出が蘇ってタイムスリップしたような気分になれるかもしれませんよ。