自分を見失う日々
切り離された雲のカケラが
まるで自分の事のようで
置き去りにされぬように
つないだ手 強くにぎった
出典: All my treasures/作詞:溝下創,広保宣 作曲:溝下創
時として、自分が上手に暮らせていないように感じて、人は焦りを覚えてしまうもの。
それをここでは「雲のカケラ」という言葉で言い表しています。
サビで主人公が見上げていた「空」に浮かんだ雲。
時に迷い、そして現状に食らいつくように必死に考え、日々を繋いでいきます。
日々は続いていく
僕らを導いて 季節は流れた
同じ時間 分かち合えたら
素敵じゃないかな
出典: All my treasures/作詞:溝下創,広保宣 作曲:溝下創
生活に「ゴール」と呼べる終着点はありません。
例え大きな仕事をやり遂げたとしても必ず明日があり、そこからまた日々は続いていくのです。
まるで人々を導くように、泣いても笑っても季節は流れていきます。
だからこそまた新たな目標を掲げたり、もっと大きな視点で人生を見つめて毎日を過ごしていく姿勢が大切なのかもしれません。
そうして日々を乗り越え、「同じ時間」を分かち合うように過ごす僕ら。
主人公がここでまた「素敵」だと表現するそんな光景から、みんなの笑顔がイメージ出来ました。
歩む道から広がる未来
あなたの側で見ている
景色はいつでも
All my treasures
感じるままに すべてゆだねて
歩いていこう
あぁ ここから始まる
新しい道も
All my treasures
数えきれないほどの未来が
そこにはあるから
出典: All my treasures/作詞:溝下創,広保宣 作曲:溝下創
2コーラス目のサビにあたる部分の歌詞です。
ここで主人公は「景色」さえも「宝物」であると説きます。
この瞬間を精一杯生きることで見える景色、それこそがかけがえのないものです。
あれこれと思い悩むことなく、「感じるまま」に暮らすことで見えるものがあります。
そこから自分が歩んでいく「道」ができ、そこに無数の可能性が秘められているのです。
歌詞が訴えかけるもの
「All my treasures」は、直訳すると「私の宝物」。
既に述べた通り、歌詞の内容は特定の誰かに向けられたものではなく、多くの人に呼びかけるようなメッセージとなっています。
「世界陸上」のイメージソングとしてのそれは、スポーツに取り組むアスリートの皆さんの背中を押すものです。
人々に勇気を与えるため、みんなを笑顔にするため、など、スポーツ選手が競技に取り組む理由はさまざまでしょう。
本作の歌詞にあるように、頑張るその姿は「同じ時代」を生きる仲間に向けてのメッセージとなります。
良い成績を残したり、越えられなかった壁を乗り越えたり、アスリートが目標に向かう姿がまた誰かの夢になる。
スポーツ選手は「夢を作り出す存在」なのだと改めて考えさせられました。
「All my treasures」が描くサウンド
本作は、ミディアムテンポのアレンジによって仕上げられていて、それが夢に向かって一歩ずつ進む姿を連想させます。
また、サウンドの中心にあるのはアコースティックギターです。
特に、2コーラス目サビ後の間奏が明けた部分では、アコースティックギターとボーカルだけの構成となります。
音の装飾がすべて引き剥がされギター1本となった伴奏と歌からは、人間の本性のようなものが感じられます。
巡り巡ってたどり着いた真実を歌にしているような雰囲気です。
アコースティックサウンドとボーカル
曲全体のアレンジもアコースティックな風合いを重視したものとなっていて、特に抜けるようなドラムの音が心地いいです。
この爽やかな雰囲気が、「宝物」に向って手を伸ばす主人公と、そこに見える青空をイメージしているようにも感じます。
デビュー当時から歌手活動にも積極的に取り組んできた織田さんですが、本作はその集大成のような仕上がりです。
ボーカルにも伸びがあって、歌詞に説得力を与えています。
歌詞の内容も踏まえて、特に普遍的な魅力を持ったサウンドを目指して作り込まれているようです。
2005年から世界陸上開催のたびに耳にしていますが、いまだに色褪せることなく楽しむことができます。