強がっていても、自然に未練が溢れ出します。
街並みの風景、赤信号の時間感覚。
窓を流れる街並はこんなにさびれていたっけな
赤信号はこんなにも短かったんだっけな
出典: fallman/作詞:清水依与吏 作曲:清水依与吏 編曲:back number
普段、何気なく見てきたものが全く異なって感じるのです。
街並みも「さびれた」「荒廃している」ように直に伝わります。
そして「赤信号」の短さ。
別れまでの時間をなるべくなるべく長引かせたい。
だから、赤信号の待ち時間は長い方がいいに決まっています。
このような心理状態だから、普段とは全く違った感覚に襲われるのです。
荒廃した街並み、やけに短く感じる赤信号の待ち時間。
愛し合っていた時の当たり前の感覚が全て「普段と異なって」しまうのでしょう。
女性から恋人への愛は、まだ健在であることが明確です。
冒頭の強がりも、それを振り払おうと戦っていたのだと理解できます。
なぜ別れなければいけないでしょう。
相当長い時間、互いに愛し合っていた、半同棲状態であったにも関わらず……
良い時も辛い時も、いつもいつも一緒にいたんですね。
紛れもなく疑いようのない未練。
強がっていても、男性のことを心の奥底では愛し続けているのですね。
今度は「足」
散々愛されていたのですね
あなたが好きって言ってた足で踏みこんで
エンジン吹かして走り出す
愛してるよって言ってたその同じ声で
さよならって言われに走ってるのか
出典: fallman/作詞:清水依与吏 作曲:清水依与吏 編曲:back number
「手」や「指」の次は、「足」も褒められていたことが分かります。
要するに、「全身」を愛されていたのではないでしょうか。
愛し合っていた時、目いっぱい褒められ、「好き」と言われ続けていたのですね。
それほどまでに愛し合っていたのですから、未練が残るのも当たり前です。
皮肉にも愛された、その「足」によって別れに向かうこととなってしまいます。
なんという皮肉でしょう!!
それでもアクセルを踏み続ける強い女性。
いや、強がっているだけで、本当は弱い心の持ち主なのかもしれません。
そんな「弱さ」が度々露わになります。
でも必死にあがいているのです。
頑張れ!!というエールの気持ちが自然と沸き起こりますね。
エールを送りたくなる読者も大勢いるのではないでしょうか。
愛し合っていた時間が長ければ長いほど、喪失感は深くなります。
互いの心の絆が強ければ強いほど、別れは辛いものでしょう。
それでも、その心に勝とうとして歯をくいしばっているのです。
やはり未練を素直に告白します
儚くも淡い未練
何かの間違いで 私の思い違いで
そんな都合よくいかないよね
私の心はまだあなたに預けてるから
返してもらわなゃ
出典: fallman/作詞:清水依与吏 作曲:清水依与吏 編曲:back number
これまで痛々しいほど強がっていた女性の内面が、一瞬弱気に花開く瞬間がありました。
でもこのフレーズ、即座に「思い違い」だと考え直すのです。
なんと強く冷静なのでしょう。
もしも「思い違い」であるならば、という淡い期待を簡単に振り払いました。
いや、簡単ではなかったのではないでしょうか。
上述したように、そのように彼女の心はなんと強いのでしょう。
このような状況であるにもかかわらず……
そんなご都合主義のよい話があるはずがないという客観的な分析。
間違い・勘違いであるはずだと冷静に吟味するのです。
そして「本心」では、鍵などという物質はどうでもよいのではないでしょうか。
僅かばかりに残っている愛情を消去しようという決心。
未練などこれっぽっちも残さず、残させない覚悟。
自分への「愛」を返してもらい持ち帰る、という率直な気持ち。
そしてクライマックス
すべてで愛していた
どういった経緯で別れに至ってしまったのでしょうか。
この歌詞だけからは推測できません。
しかし、これまでの総決算ともいうべきメッセージが最後の最後に詳らかになります。
男性も女性も全力で愛し合っていたのですね。
幾分、温かい気持ちにもなれるかもしれません。
あなたが好きって言ってた私のすべてで
全部であなたを好きでした
愛してるよって言ってたその同じ声で
さよならって言われに走ってくのさ
出典: fallman/作詞:清水依与吏 作曲:清水依与吏 編曲:back number
「すべて」「全部」という重要なキーワードが出てきます。
男性が愛していたのは、手や足だけではなく「すべて」。
そう、「好きだ」と伝えたのは外見だけではないことがよく分かります。
「すべて」、つまり「心の内面」や「性格」をも好きだと愛してくれていたのです。
女性も「全部」まるまる好きだったことを素直に吐露します。
そして、「愛してる」と伝えてくれた同じ声で「さよなら」を聞きに行くのです。
やはり、女性の気持ちが切ないですね。
全く同じ声音を聞きに、夜のとばりにアクセルをふかす女性はどんな気持ちなのでしょう。
彼が褒めてくれたその足、そのすべてで!!