ゾンビに食い尽くされるときに頭の中を巡った様々な感情。
しかし、そんなものは誰かに気付いてもらう間もなく灰となって消えてしまいます。
叫び声をあげることさえできなかったかもしれません。
そうして誰にも気付かれることなく消えてしまった自分という存在。
それは、ゾンビなんていない現実でも起こり得ることなのではないでしょうか?
本当の自分を曝け出せずに「消えてしまいたい」と願う日々。
心の叫びは誰にも気付かれないまま、ひっそりと消えていきます。
そんなふうに感情を押し殺している様子は、ゾンビに食い尽くされる運命と似ているのかも。
現実に怯えている姿も、ゾンビに怯えている姿も、きっとどちらも同じに見えることでしょう。
歌われているのは恐怖だけじゃない
この曲で本当に伝えたかったのは、人間の醜さだったのかもしれません。
やるせない日々の中で芽生える凶悪な感情。
それはゾンビよりも身近で恐ろしい存在なのでしょうね。
We are ZOMBIE!!
Kill me right now
歪んだノイズで
Kill me right now
叫べ脳裏へ
We are ZOMBIE!! We are ZOMBIE!!
We are ZOMBIE!! We are ZOMBIE!!
出典: ウィーアーゾンビ!!/作詞:青井ミドリ 作曲:青井ミドリ
「Kill me~」は、直訳すれば”私を殺して”という意味です。
このフレーズには、”もうどうしようもない”というような絶望的な感情が込められています。
生きているのがしんどい。
何をしても無駄に終わる。
こんな人生ならいっそ殺してくれ!
生きていればそんな気持ちになることもあるでしょう。
どん底まで落ちた感情を包み隠さず歌っているのが逆に気持ちいいですね。
そして繰り返される「We are ZOMBIE!!」。
人間性なんて失くして自分の欲望にのみ従って生きてやる、という意味でしょうか?
理性を失くしたゾンビのように生きること。
もしかしたら、それだけが絶望的な人生の救いだったのかもしれません。
人間の醜さ
暗闇の中 手探りで
追い求めてた その答えさえも
見つけられないまま 自己嫌悪になって
また信じ続けたものに 裏切られてしまうんだろう
出典: ウィーアーゾンビ!!/作詞:青井ミドリ 作曲:青井ミドリ
仲間割れや裏切り行為。これはゾンビ映画ではよくある展開です。
「暗闇の中~」では、ゾンビから逃げのびる方法を必死で考えている様子。
「また信じ続けたものに~」では、仲間に裏切られた様子がそれぞれ歌われているのではないでしょうか?
ここの歌詞から察するに、どうやら人間はゾンビに対抗する手段を見つけられなかったようですね。
それどころか信じていた仲間まで失ってしまいました。
ここではゾンビに対する恐怖だけでなく、人間の醜さについても歌われているのでしょう。
窮地に追い込まれたときに取る行動。
それがその人間の本性です。
仲間割れや裏切りを繰り返す人間には、ゾンビに対抗する手段なんて初めからなかったのかもしれません。
ゾンビとはすべての人間のこと
ゾンビも元は生きた人間でした。
それが死体のまま蘇り、欲望のまま動きまわるようになった。
しかし、生きている人間だって欲望のままに動いているとは思いませんか?
『ウィーアーゾンビ!!』とは、すべての人間のことを意味しているのかもしれません。
誰もがゾンビになり得る
ウィーアーゾンビ アイアムアゾンビ
果てなき欲に溺れた
突き刺すような その狂気で
今すべてを喰い散らせ
ウィーアーゾンビ アイアムアゾンビ
静寂の奥に潜めた
残虐、卑劣な行為で 僕をラクにいかせて
今すぐに 今すぐに 撃ち殺して
出典: ウィーアーゾンビ!!/作詞:青井ミドリ 作曲:青井ミドリ
欲に溺れた人間の姿は、まさにゾンビそのもの。
自分がそんな醜悪な存在に成り下がってしまったのなら、どうか「ラクにいかせて」と願います。
きっとゾンビのような姿になってまで生きていたくはないということなのでしょう。
おぞましい存在として生きていくくらいなら今すぐに撃ち殺して。
「残虐」や「卑劣」という言葉から、慈悲や同情なんていらないという気持ちが伝わってきます。
生まれながらにして欲望を抱えている人間は、誰もがゾンビになる可能性を持っているのかもしれません。
最後に
ゾンビのテーマ曲である『ウィーアーゾンビ!!』で歌われていたのは、欲に溺れた人間の醜さでした。
それを踏まえてもう一度MVを見ると、ラストシーンはさらに意味深なものになるでしょう。
本物のゾンビに変わってしまったメンバーたちが最後に私たちに伝えたかったこと。
それは「人間らしさを忘れるな」ということだったのかもしれません。