この曲で男性の恋人の心情に触れられているのは、恐らくここの歌詞だけです。

恋人である彼女の正体は謎に包まれています。

しかしここの歌詞を見る限り、彼女も男性のことを憎からず思っていたようです。

彼女は男性の孤独を知り、どうにか笑わせてあげたいと思ったのでしょう。

「だから~」の歌詞は、男性と愛しあうことを望んでいる気持ちがうかがえます。

けれど、どうやら彼女には大きな秘密がある様子です。

男性に共感(シンパシー)できたのは、彼女が曖昧な存在だから。

もしかしたら彼女は人ならざる者だったのかもしれません。

人並外れた知覚器官(センソリー)を持っていたから、男性の心のうちに気付くことができた。

彼女はきっと、男性と長くは一緒に居られないことを知っていたのでしょう。

だとすれば男性の言葉、「僕にもお返事くださいね」は彼女の心に重く響いたはずです。

突然の別れに悲しみと困惑が残る

男性にとって恋人は、初めて孤独を埋めてくれた特別な存在だったはず。

そんな恋人が突然いなくなってしまい、男性は自分の気持ちを上手く整理できずにいます。

恋人との別れは、男性に悲しみと困惑を残しました。

引きとめられなかった...

貴方が僕に言ったこと誰の為なの
答えは僕の中で探しちゃダメなの
貴方を啓蒙したいのどうして
曖昧な答え直して
雨が降って愛が去っていた

出典: 阿吽のビーツ/作詞:羽生まゐご 作曲:羽生まゐご

恋人が自分に言ってくれた、たくさんの言葉。

その意味や価値を、男性は必死で探しています。

きっと心の隙間を埋めようとしているのでしょう。

どうして恋人は自分のもとから去ってしまったのか?

考えても答えは出ません。

「啓蒙」とは、正しく教え導くこと。

男性は去っていこうとする恋人の考えを改めさせようと、様々な手を尽くしたようです。

しかし結局、恋人を引きとめることはできませんでした。

恋人との別れを「愛が去る」と表現しているところに、男性の心情がよく表れていますね。

過去を悔やむ

僕は
明快さ故にアイロニー
優柔不断なフォローミー
後悔後悔夜の果て
夢ばかり見てたのね
だから与え与えすぎて
許されたいから笑ってた
そしたら
「此処に居られる気がしたんだ」

出典: 阿吽のビーツ/作詞:羽生まゐご 作曲:羽生まゐご

明快な答えを求めることは、皮肉を生むだけだった。

優柔不断なくせに、自分についてきてくれる存在を探していた。

そんな過去を男性は後悔している様子です。

自分の理想は所詮、独り善がりでしかなかった。

「夢ばかり~」の歌詞からは、そんな心情がうかがえます。

恋人に愛されたくて、何もかもを与えようとした。

それが自己満足にしかならないことに、男性は今になって気付いたのでしょう。

与えていれば、笑っていれば、「ここに居ていいよ」と言ってもらえるはず。

愛されたくて必死になるあまり、男性は周りが見えなくなっていったのかもしれません。

言って欲しかった言葉

男性は恋人にどうしても言ってもらいたい言葉がありました。

しかし、その言葉は最後まで言ってもらえなかったようです。

恋人が去ってしまった今も、男性はその言葉を求め続けています。

喪失感に耐えられない

貴方に捧げた心臓
いつか返して 優しくしてね
本当は戻りたいんだ
今からでいいから

出典: 阿吽のビーツ/作詞:羽生まゐご 作曲:羽生まゐご

もう二度と会うことができないというなら、「貴方に捧げた心臓を返して」。

恋人は男性のすべてを奪って、消えてしまいました。

愛しあう喜びを知らなければ、男性がこんなにも切ない想いをすることはなかったでしょう。

だから男性は「本当は戻りたいんだ」と歌います。

愛を求めるだけで、愛について何も分かっていなかったあの頃。

無知だった頃のほうが、今より幸せだった気がする。

喪失感に打ちひしがれる男性の姿が目に浮かぶ歌詞ですね。

永遠を誓いたかった

僕ら
ずっとこれからだったのに
どんまいどんまい
二人には素晴らしい結末さ
だから与え与えられて
言葉を探すことはなくて
それでも貴方から言って欲しかった

(ずっとこれからだったのに)

それでも

「貴方から言ってくださいね」

出典: 阿吽のビーツ/作詞:羽生まゐご 作曲:羽生まゐご