終わりの日
最後の言葉は目を見ていいたい
会って終わりにしたくて
待ち合わせた土曜の昼間
出典: あなたの彼女じゃないんだね/作詞:橋口洋平 作曲:橋口洋平
別れの切なさを歌いながら、そこにあるのは「絶望」ばかりではないと感じさせてくれる上野優華の歌声。
この曲に出てくる主人公も、彼との別れを選びつつもどこか前向きな力を秘めているように見えます。
電話やメールでそっけなく済ませてしまう別れは寂しいもの。
これまで長い間一緒にいたからこそ、たくさんの思い出を紡いできたからこそ、会うことを決めたのです。
辺りが暗くなってからでは、余計に寂しい気持ちが高まってしまうでしょう。
だからこそ2人は、切なくならずに済むような明るい時間を選ぶのです。
普段なら何をしようか、どこへ行こうかと胸を膨らませていたはずの土曜日。
わくわくした気持ちを抱えて会っていたはずの土曜日は、もう来ることはありません。
眠れない夜を越えて
あんまり眠れなかったと
笑うあなた 私も同じ
出典: あなたの彼女じゃないんだね/作詞:橋口洋平 作曲:橋口洋平
どちらから別れを切り出したのかはわかりませんが、険悪なムードではないことは確かです。
しかし、笑い合う2人にあの頃のような明るさはありません。
夜中お互いのことを考え、眠れないままに朝を迎えて……。
それほどまでに頭の中を占めているにもかかわらず、別れを選ばざるを得ない理由があるのです。
目尻を下げて切なそうに笑う彼。
そんな悲しい笑顔が見たくて付き合ってきたのではないのに……と心が締め付けられます。
最後の会話は何気ない内容で
髪を暗くした理由とは
落ち着いた髪の色も似合うねって
これでも落ちてきたんだよ でもありがとう
出典: あなたの彼女じゃないんだね/作詞:橋口洋平 作曲:橋口洋平
いつも身だしなみを気にする人にとって、ヘアスタイルを変えるというのはかなり大きな出来事の1つです。
失恋したから髪を切るというのはよく聞きますが、本曲の主人公はバッサリと髪を切る覚悟は持てないまま。
それでも自分を律するために、前を向く強さを持つために、髪の色を暗く染めてきたのです。
しかし別れを覚悟した時に黒く染めた髪は、次第に元の明るさに近づいてきていました。
それはまるで、「元の関係に戻りたい」という気持ちを呼び起こしているよう。
明るかった2人の日々はもうないんだと言い聞かせるように、思い出を黒く塗りつぶしてしまった主人公。
その髪の色に気付いた彼もまた、彼女の変化を寂しく感じているのです。
覚悟を決めてきたはずが
忘れなくちゃと 変わらなきゃと
無理矢理塗りつぶした心が剥がれてく
出典: あなたの彼女じゃないんだね/作詞:橋口洋平 作曲:橋口洋平
主人公が黒く塗りつぶしてしまったのは、髪の色や思い出だけではありません。
それは「彼のことを愛する心」、そして「彼を引き止めたいという願望」です。
今更伝えても仕方がないとわかっているからこそ、その想いをなかったことにしようとしている主人公。
そう覚悟を決めてきたはずなのに、いざ彼の顔を見ると塗り固めた鎧がボロボロと崩れていってしまいます。
にっこり笑って、彼の幸せを願いながら別々の道を進む……。
そんな理想の別れを思い描いていたのに、実際は彼に抱きつきたい衝動に駆られるもの。
そしてそれは、彼にとっても同じことだったのです。