MVで使われている写真には「何気ない一瞬」を捉えた写真も数多くあります。
例えばおばあちゃんの横顔や、公園で遊んでいる子供など。
日常の風景を切り取ったような写真があるのもこのMVのポイントなのです。
「平成の思い出」と言われると、何か特別な出来事を思い出そうとする人も多いでしょう。
ですがこのMVの中では特別な写真ばかりが使われている訳ではありません。
これには「どんなワンシーンも大切な思い出」という意味合いがあると考えられます。
人生には良い時も悪い時もあるものです。
はたまた嬉しい時も悲しい時も…。
ですがその通ってきた道全てが、その人の思い出になっていきます。
つまり何気ない日常の一瞬でさえ、その人を形作る大切なエッセンスなのです。
そんな「思い出全てを肯定」してくれるような、優しさがこのMVから感じ取れます。
大小様々な写真
MVの中には色々なサイズの写真が出てきます。
例えば大きく譜面台に乗せられた写真や小さく瓶に入った写真など。
そのサイズ感はまちまちです。
ですが「どの写真が大きくてどの写真が小さい」といった法則性はないように思われます。
そしてどの写真にも、リトグリのメンバーがいつくしむようなまなざしを向けるのです。
時に写真に触れたり、包み込むような動きをする場面もあります。
まるで写真の一人一人を祝福するようなMVとなっているのが特徴です。
これは大小さまざまな記憶の片鱗を全て包み込むような演出ともいえます。
舞台はラストで明るく乱反射
今までの思い出を全て昇華させるような演出
ラストのサビあたりで、舞台はより一層光り輝きます。
ストレートな光がいくつも差し込み、今まで以上に写真を照らし出すこの演出。
写真が白く飛ぶくらい眩しい光です。
ですがこれこそが未来への一歩を踏み出す後押しとも考えられます。
1番2番では過去を振り返るような歌詞が特徴的です。
時には不安を覚えるような感情の揺れ動きも歌詞に含まれています。
ですがラストのサビはどうでしょうか。
「新しい私」「明日」「飛び立て」といった未来へ目を向けた歌詞しかありません。
そして光の演出はマックスに。
メンバーの背後で交差しながら輝く光は、どこか翼のようにも見えます。
「小さく地道に輝いていた思い出が一つの光となって今の自分を後押ししてくれる。」
そんな思いを感じ取ることができます。
ほぼ1カットで撮影されたMV
このMVは画面が途切れることなく、ほぼ1カットで撮影されているのが特徴です。
メンバーが移動しながらそれをカメラが追いかけます。
撮影場所は3つの部屋に分かれており、それぞれが繋がっている構造です。
全ての部屋に数々の写真が配置され、そこを縫うように撮影しています。
もちろんせっかく募った写真を目いっぱい映したい気持ちはあるでしょう。
しかし「ワンカットでとらなくてもいいのでは？」そう思う方もいそうです。
ワンカットのMVは下手をすると冗長な雰囲気にもなりかねません。
そう考えるとあえてワンカットで映した理由がありそうですよね。
恐らく、この長いカットで「人生の流れ」を表現しているのではないかと思います。
過去を振り返り明日へはばたく、そんなメッセージ性のあるこの曲ならではの演出です。
画面をぶつ切りにしないこの撮影方法。
それは過去と今の繋がりを実感するための技法なのではないでしょうか。
歌詞自体も、過去から今へと流れていきます。
それに合わせてMVも、一続きのカットで地続きの人生を表現しているのでしょう。
リトグリの成長にも当てはまる曲
歌詞のテーマは「成長」
ここまで考えていくと、この曲はただ過去を振り返るだけの曲ではないようです。
過去を踏まえてしっかり未来に向かってはばたく。
いわば「成長」をテーマにしているといえます。
これは世間一般の皆さんにも、リトグリにも共通することです。
人間みな、成長しながら生きていきます。
過去を糧にして輝かしい今があるのは、誰にでも当てはるといえます。
リトグリもまた、ここまで多くの成長をしてきました。
そのため自分たちにも当てはまる曲として、思いを込めて熱唱しています。
さらなる飛躍を目指すリトグリ
曲がエンディングに向かう中でメンバーは舞台から退場します。
最後の歌詞はこのようになっています。
広げた腕を 翼に変えて
明日へ 飛び立て
出典: 君に届くまで/作詞:いしわたり亮治 作曲:水野良樹
その言葉通り、「過去の象徴である写真」の部屋から飛び立つと考えられます。
そしてメンバーが別れを告げるように写真に触れたりしながら部屋から出ていくのです。
しかしその足取りは非常に軽快。
過去を全て受け入れた彼女たちはさらなる高みへ飛躍することでしょう。
そんなリトグリのこれからも楽しみになるMV演出でした。
