BUMP OF CHICKEN「fire sign」とは?
アルバム収録曲なのにライブ定番曲?!
言わずと知れた名曲「fire sign」は、BUMP OF CHICKEN(以下、バンプ)のライブの定番曲としても有名です。
歌詞の間に入る「ナーナーナナナナナナーナー」というコーラスが盛り上がるんですよね!
2018年3月まで開催されたバンプ史上最長のツアー『PATHFINDER』でも、セトリに入っていました。
本作品の初出は2004年にリリースされたアルバム『ユグドラシル』。
シングルでのリリースではなく、さらにタイアップもありません。
いわば、曲を世に知ら締める"広告塔"が無い本作品が、なぜライブを盛り上げる定番曲となったのでしょうか?
コーラスすることでライブの一体感を味わえるから?
いいえ、それだけではありません。人気曲「fire sign」の魅力、今から一緒に探っていきましょう。
藤くんがヒロの誕生日に捧げた「fire sign」
「fire sign」制作エピソードが感動……
バンプの楽曲ほぼすべての作詞・作曲を行っているのが、ボーカルを務める藤原基央、通称・藤くん。
そしてギター&コーラス担当が増川弘明、通称・ヒロです。
バンプファンの間では有名な話なんだけど、この「fire sign」、誕生日に藤くんがヒロくんへ贈った曲なんですって。
曲が作られたのは今から15年前の2003年。
2003年といえば、アルバム『ユグドラシル』の制作時期でもありました。
自宅で作詞・作曲することが多かった藤くんでしたが、この曲はレコーディングスタジオにて1日で制作。
そのまま、弾き語りでデモ盤を録音したそうです。そしてこの年の12月20日。
ヒロくんの24歳のバースデーに、この曲が贈られました。
実はこの時期、ヒロくんにはいろいろと抱える悩みがあったそうなんですね。
何があったのかまでは公にはなっていませんが、ヒロくんは大学を中退した後でもありましたし、藤くんのインタビューでも何かあったことを思わせる発言がありました。
そのせいもあって、結婚?!とか脱退説まで飛び出していますが……こちらはあくまでも噂ですよ。
ヒロくんが抱えていたもの
その原因として一番有力と言われているのは、プロとしてやっていく意識と技術を求めた藤くんの要望にヒロくんが着いていけなかった、という説です。
『ユグドラシル』収録曲「embrace」や「同じドアをくぐれたら」の収録にヒロくんが参加していないことからも、この説には信憑性を感じますね。
それが「fire sign」を贈られたことで変わった。友達だった4人が同じ方向を向いて、プロの道を歩むことになったんです。
アルバム『ユグドラシル』と収録曲「fire sign」は、ヒロくんが、バンプが転換期を乗り越えた象徴……。そう思って聴くと感動を覚えます。
「fire sign」歌詞の意味と仕掛けに感動……
おいてけぼりの君への訴え
誰かの為に生きる という思いを込めた旗を抱き
拾ってきた笑顔の中に 自分の笑顔だけ見当たらない
いつか聞こえた泣き声を ずっと探してきたんだね
少し時間が掛かっただけ 自分の声だと気付くまでに
星は廻る 世界は進む
おいてけぼりの 心の中に
微かでも 見えなくても 命の火が揺れてる
風を知って 雨と出会って 僕を信じて燃えてる
出典: fire sign/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
この歌の中で登場するのは、歌い手である<僕>。そして僕がメッセージを投げかけている相手、<君>です。
<旗>を立てる行為っているのは、自分の目印を付けると同時に、他人へ知らせることでもあります。
これまでの人生の中で、君は<誰かの為に生きる>という行為に目印を付けて、生き甲斐にしてきたのでしょうね。
だけど、やったことのある人なら分かると思うのですが『他人の為に生きる』っていうのは結構、荷が重いことで。
何かの出来事で辛いときに「オレ、どうしてこんなに頑張ってるんだ?」と自分を見失ってしまうことも少なくありません。
歌詞の君も自分を見失ってしまったのかな。頑張ってきたおかげで周囲の<誰か>さんたちは<笑顔>だけど、自分は笑顔になれないから。
その笑顔の影に隠れた<泣き声>にさえ、気付かないで。
だけど、今、君は気付いたんです。自分が泣いているということに。
そして、立ち止まってしまった。その様子は、歌詞の<おいてけぼりの 心>というフレーズで表現されていますね。
『でもさ、その立ち止まってしまった<心の中>にも<命の火が揺れてる>んだろ』と僕は訴えています。
強くて優しい人に
ヒロくんに送った曲ということは、この曲はヒロくんを描いていると考えられるわけです。
藤くんの目に映るヒロくん。
それは「fire sign」で描かれているように、まずは自分よりも相手のために生きようとする。
周りのみんなをいつも笑顔にしてくれる。
そして、自分が抱えているつらさや涙は決して見せないようにして。
そんな優しくて強い姿だったのではないでしょうか。
ダジャレみたいになってしまいますが、まさにヒーローみたいな存在。
そんなヒロくんを藤くんが、そして全員が頼もしくて大切な存在だと思っていることがわかります。
でも、強くて優しい人ほど、自分のことは置いてきぼりになってしまうもの。
みんなの笑顔のために自分の想いをしまい込んで。
心配をかけたくないから、弱音も涙も我慢して。
つらくて苦しくても、誰にも言えずに自分の中だけで解決しようとする。
そうしているうちに身動きが取れなくなってしまう…。
そんな経験がある人、いるのではないでしょうか。
ヒロくんもそんな気持ちで苦しんでいたのかもしれません。
幼い頃から一緒だったBUMP OF CHICKENの4人。
口にしなくても、悩んで苦しんでいることは伝わっていたのでしょう。
優しくて強くて、人一倍大人で。
だからこそ言えなかったこと。
それに藤くんはちゃんと気づいていたこと。
signは「しるし」という意味もある言葉です。
悩んでること、優しいお前のこと、ちゃんとわかってるよ。
だから、俺たちを信じて。
そんなメッセージをひっそりと詰め込んだ歌詞。
深い絆に、思わず目頭が熱くなります…。