「MAGIC」に魅了される

2003年8月6日発表、HAWAIIAN6の通算2作目のミニ・アルバムACROSS THE ENDING」。

このミニ・アルバムに収録された楽曲MAGIC」の歌詞和訳して解説いたします。

公式MVも制作されたため、HAWAIIAN6といえばこの曲を思い出す方も多いはずです。

あくまでもポジティブでキラキラとした歌詞の世界が印象的な楽曲に仕上がりました。

ルックスはいかにもメロコアバンドらしいお兄さんたちなのですが心根の優しさが伝わります。

ロックの歌詞なのに真面目な宗教家の教説のようだと驚く人も多いかもしれません。

ディストーションペダルを全開に踏み込んでエッジの立ったギターのサウンド

さらに唸るように疾走するベースとメロコアバンドらしいスネアの音が痛快です。

薄暗いクラブだけではなく明るい陽射しの元でも聴きたくなる楽曲の在り方自体が「MAGIC」です。

この記事ではどんな日でも負けずに生きてゆけるポジティブな力に注目します。

それでは実際の歌詞と和訳ご覧いただきましょう。

迷える私たちのために

HAWAIIAN6【MAGIC】歌詞を和訳して意味を解説!人生を魔法のように輝かせる為に必要なものはの画像

This is a song for you and me and the holy night and the blue sky.
To the lambs lost in the deep forest fog.
This song is for them and you.

出典: MAGIC/作詞:HAWAIIAN6 作曲:HAWAIIAN6

「この歌は君と僕 そして聖なる夜と青空のためにある

そして深い森の霧の中で迷える子羊のために

この歌はみんなと君のために捧げられている」

歌い出しというよりはイントロ、もしくは曲の導入部分に当たる歌詞です。

主な登場人物は語り手の僕と、リスナーと思わしき君になります。

「MAGIC」という楽曲は魔術そのものについての歌ではありません。

魔術は隠喩として用いられるに過ぎないのです。

人生というものの端々に魔術のような瞬間があるから希望を持とうというのがテーマになります。

HAWAIIAN6は説法をするようにリスナーをポジティブな方向へと導くのです。

リスナーである私たちは日頃の生活の中で何かしらの心配事や不安を抱えながら生きています。

人生に苦悩はつきものなのかもしれないと半ば諦めながら日々を過ごしているでしょう。

そんな苦悩も「MAGIC」を聴き終えた頃には消えてなくなるかもしれません。

少なくともリスナーの苦悩を軽くしたいという思いでHAWAIIAN6は「MAGIC」の歌詞を書きました。

あくまでもリスナーの方を向いて書いた楽曲なのです。

無駄なものはない

トラウマだって君の一部になるから

HAWAIIAN6【MAGIC】歌詞を和訳して意味を解説!人生を魔法のように輝かせる為に必要なものはの画像

In this life there is nothing without some meaning.
Even the scars and the lies and the regrets become part of your body.
So you don't worry.

出典: MAGIC/作詞:HAWAIIAN6 作曲:HAWAIIAN6

「この人生では 意味のないことなど何もないんだ

傷跡も嘘も後悔でさえも君の身体の一部になってゆくよ

だからどうぞ君は心配しないでいて欲しい」

ここからが本格的な歌い出しの歌詞になります。

「MAGIC」の歌詞はどこを切り取っても真っ当で真摯なものです。

難しいところもありませんので、立て板に水という感じで言葉が響いてきます。

とはいえ私たちはときどきこうした真っ当なものの見方を放棄してしまうことがあるのです。

人生や生活において何かしらの痛手を負うときもこうした素直な感性を捨て去ります。

さらに厄介なのは人生が順調過ぎるときでしょう。

何の悩みもないところでは考えることすらしなくなることがあります。

大事な価値というものについて深く考えることがなくなると、いつか痛いしっぺ返しを食らうのです。

「MAGIC」での教説は転ばぬ先の杖のように使うことが大事でしょう。

人生で失敗を少なくするためには日頃から大事なことについて深く考える習慣が必要なのです。

HAWAIIAN6は人生に無意味なものなどないといい切ります。

生活の些細な事柄だって無意味じゃないよと教えてくれるのです。

彼らはまずリスナーの人生そのものが無駄ではないと伝えたいのでしょう。

さらに人生で背負う痛手も無駄にはならないと教えてくれます。

私たちは生活の中で経験したトラウマのようなものは早く忘れようと努めるでしょう。

しかしトラウマは深層心理の奥深くまで浸透して、夢となって私たちを脅かすことがあります。

いくら理性で排除しようとしても、トラウマというものは生き残るのです。

ならばときにはトラウマというものときちんと向かい合うことが必要なのかもしれません。

その意味するところは何なのか。

恐怖の正体のようなものをきちんと見極めていればいつかトラウマも怖くはなくなります。

トラウマ体験だって自分を作り上げているアイデンティティの根拠のひとつだと気付けるのです。

このことを受け入れた先に心配というものから解放された人生が待っています。

心配事というものはきちんと対峙すると心配じゃなくなるよ

HAWAIIAN6がこのラインで提示したことを要約するとこのようなものになります。

不可能に挑戦することはない

HAWAIIAN6【MAGIC】歌詞を和訳して意味を解説!人生を魔法のように輝かせる為に必要なものはの画像

You don't need to do anything for anyone.
Just live for yourself.
So don't you try the impossible.
I know that you are so lonely and weary.

出典: MAGIC/作詞:HAWAIIAN6 作曲:HAWAIIAN6

「君は他の誰かのために何かをする必要はないよ

君自身のために生きてゆこうね

だから不可能なことに挑戦することもないさ

君がまったくひとりぼっちで辛い状況にいることを僕が知っているからね」

HAWAIIAN6の優しさというものが天井知らずであることを教えてくれます。

まず彼らは私たちリスナーの辛いことについて語っていました。

辛い経験だっていつか自分の肉となり血となるものだよと歌ったのです。

そしてリスナーがまだ傷付いたままでいることを前提にこのラインの歌詞を書きました。

誰か他の人のためにあくせくする必要はないと歌ってくれるのです。

リスナーの人生はリスナーのものだから、他の人のために時間を割く必要などない。

私たちは可能ならば誰かの助けになりたいと願っています。

しかし「MAGIC」で歌われている君、つまりリスナーたちはまだ自分自身が大変な状況にあるのです。

こうした自分だって孤立無援で酷い状況にあるときには無理することはないよと教えてくれます。

私たちは他の誰かの期待に応えようと必死だったりするものです。

しかし自分のこともきちんとできない状況では他者を救うことなどもできません。

こうしたときはくれぐれも無理せずにセルフケアに努めて休んだっていいのでしょう。

私たちはワーカホリックな傾向があって休むことに罪悪感を抱きがちです。

しかし大変なときはイージーにゆこうよと優しく諭してくれるのが「MAGIC」の真髄でしょう。

君は稀少な存在

HAWAIIAN6【MAGIC】歌詞を和訳して意味を解説!人生を魔法のように輝かせる為に必要なものはの画像

The world makes you feel you are alone.
Too many people and your life is nothing.
But don't forget you are the only one.
To you irreplaceable.

出典: MAGIC/作詞:HAWAIIAN6 作曲:HAWAIIAN6

「世界というものは君を孤独な気分にさせるだろう

あまりにも人が多すぎて君の人生の意味を見失うかもしれない

でもね、君が唯一の存在であることを忘れちゃダメだよ

かけがえのない存在である君に贈るよ」

巨大な世界を目の前にすると、私たちは自分の存在の小ささを自覚せずにはいられません。

世界にはこれだけ人があふれているのに、自分は孤独であることも気にしがちです。

およそ77億人いる人類の中で歓びをシェアできる友人・恋人・家族はどれくらいでしょうか。

近年は多くの若者たちが生涯独身でいようと決意したりする時代になりました。

友人・恋人以上の存在を積極的に求めなくなったのです。

私たちは自ら進んで孤独でいられる場所を探そうとします。

こうした決断こそが悪循環を生み出すかもしれません。

私たちは好んで孤独を再生産するのですが、そのために自分の人生の意味というものに自信を失くします。

自信喪失した私たちは人付き合いが怖くなってしまうのです。

孤独を選ぶとこうした悪いサイクルの中で生活することになります。

何に対しても虚無的な思いしか抱けなくなるかもしれません。

HAWAIIAN6はその手前で君自身の価値に気付こうと歌うのです。

君は存在するだけで唯一無二なのだと歌ってくれます。

確かに世界には多くの人がいますが君と同じ人物はどこにもいません。

77億のうちの1人であるのですから、君は稀少な価値を持つ特別な存在なのです。

どうかそのことを忘れないで誇り高く生きて欲しいとHAWAIIAN6は歌います。

「MAGIC」では特に気になる意見など一切ありません。

私たちはああ、そのとおりだと頷きながらこの歌を楽しむことができるのです。