アラビアの笛の音ひびく 街のはずれの夢のあと
つばさをなくしたペガサスが 夜空にはしごをかけている
武器をかついだ兵隊さん 南にゆこうとしてるけど
サーベルの音はチャラチャラと 街の空気を汚してる
出典: さよなら人類/作詞:柳原幼一郎 作曲:柳原幼一郎
ここから先では、戦争を想起させるようなワードがたくさん出てきます。
“街のはずれの夢のあと”は、まさに平和の終わりを象徴するもの。
そしてペガサスは、神話上の空を飛べる伝説の天馬。
本当なら天に昇ることができるペガサスさえも、荒廃した世界から逃れられない。
人類だけでなく、何もかもが壊れていくような様子を感じ取れます。
互いの生き残りをかけて、ついに争いを始める人類たち。
ちなみに、サーベルとは軍人が使う刀のこと。
そんな戦争を続ける人類たちが、どんどん険悪なものにしていく様子がわかります。
争いを続けた世界に残ったもの
歌をわすれた カナリア
牛をわすれた 牛小屋
こわれた磁石を ひろい集める博士は まるはげさ
出典: さよなら人類/作詞:柳原幼一郎 作曲:柳原幼一郎
ここも荒れ果てた世界の姿を表しています。
本来、当たり前のようにできていたこと・存在していたものが地球上からどんどん失われていく。
そしてそんな戦争のさなかでも、科学者たちはまだ文明を発展させようとしている。
この現状をかえりみることができない、頭でっかちな人たち=博士。
というようにも、読み取ることができます。
ついに核戦争へと発展していく
あのこは花火をうちあげて この日がきたのを祝ってる
冬の花火は強すぎて 僕らの身体はくだけちる
ブーゲンビリアの木の下で 僕はあのこを探すけど
月の光にじゃまされて あのこのカケラはみつからない
出典: さよなら人類/作詞:柳原幼一郎 作曲:柳原幼一郎
このあたりは、まさに核戦争といった様子です。
核開発を続けてきた人類たちが、ついにそれを行使する日を迎える。
全人類を破滅させるほどの威力を持った核。
“ブーゲンビリア”という花の名前が出てきますが、これはおそらく核投下後の“キノコ雲”のこと。
残された人、大切な人を探そうとしますが・・・。
核爆発後の強烈な熱線、放射能によって、何もかも見つけ出すことができない、といったことでしょうか。
人類をやめざるをえない結末に
運命に抗うことはできるのか?
さるにはなりたくない さるにはなりたくない
こわれた磁石を 砂浜でひろっているだけさ
出典: さよなら人類/作詞:柳原幼一郎 作曲:柳原幼一郎
ついに地球が滅亡を迎えてしまったところ。
これまでに発展を続けてきた科学・文明の欠片を拾い集めます。
そんな必死で人類として生きようと抗っている様子にも見えます。
やっぱり最後は・・・
今日人類がはじめて 木星についたよ
ピテカントロプスになる日も 近づいたんだよ
さるに なるよ さるに なるよ
出典: さよなら人類/作詞:柳原幼一郎 作曲:柳原幼一郎
そして結局は、“さる”に戻ってしまう人類たち。
せっかく木星へと生きる場所を変えたものの、理性を持った“人間”ではなく“獣”へと姿を変えてしまいます。
今まで追求してきた利便性は何だったのか。
地球を壊し、人類を滅ぼしてまでも続けるべきだったのか。
最後には、そんな虚しさしか残りません。
まるで都市伝説のように語られる楽曲
どこまで見据えて書いた曲なのか
幻想的で不思議な世界観が印象に残る曲。
ですがよくよく聴くと、かなり鋭い切り口から現代を見ていることが分かります。
異常気象や紛争が各地で起きている現代。
90年代初頭にこの楽曲を制作したかと思うと、まさに“未来を予言している”ように感じてしまいます。
この「さよなら人類」の作詞・作曲を手がけた柳原幼一郎さん。
当時はよく「この歌詞には深い意味が込められているのでは?」
と聞かれることも多かったようです。
本人としては、「ただの言葉遊び、意味なんてあまりない」と答えている様子。
ですが、ここまで様々な解釈が語り継がれている現状。
当時から本人たちも、どんどん発展していく社会を達観した目で見ていたのでしょう。
そしてこの曲が大ヒットしたのは同じように感じている若者も多かったからなのでは?