存在そのものが伝説の「たま」
「たま」は、本人たちのユニークな出で立ちや不思議な曲の作りが注目されました。
しかし、実はかなりシビアに日本を見つめていたのかもしれません。
このような社会問題を、小さな子どもに読み聞かせる物語のように歌っている「たま」。
不思議な存在感で、今でもその高い芸術性が評価されているのにもうなずけます。
また今回は歌詞について取り上げていますが、楽曲そのものが天才的なのも「たま」の魅力。
適当に使っているようで、実はかなり緻密に計算して演奏している多くの楽器たち。
奇抜ともいえる独特のメロディー、さらには曲の構成。
一度耳にしてしまうと、どんどんその魅力にハマってしまいます。
偶然なのか、狙っているのか
かなり前衛的なテーマの楽曲「さよなら人類」。
誰かに語っているかのような言葉づかいやスローテンポなメロディー。
なんとなくファンタジーで不思議と癖になる曲という印象が強くなっています。
しかし、よくよく聞いてみると背中がゾクっとするような歌詞。
現代人に注意喚起をしているような、ちょっと冷めた目で世間を見ているような・・・。
「このまま発展を続けて、どうなるのだろう」という、人間の中に隠れた不安を体現しています。
当時は本当に何の意味も込めずに制作し、たまたま現代に重なっているだけなのか。
実際には、やはり当時から地球の未来に目を向けていたのか。
ここまで歌詞の内容を紐解いてきましたが、本当の意味は分からないままです。
聴けば聴くほど、謎が深まっていくこの曲。
そんなところも、実は「たま」たちの狙いなのかもしれません。
まとめ
1度聴いたら耳から離れない「たま」の「さよなら人類」。
サビを聴いたら思わず、口ずさんでしまうのではないでしょうか。
キャッチーなメロディーですが、考えさせられる歌詞。
ここからは、そんな「さよなら人類」のミュージックビデオや重要な歌詞をピックアップいたします。
人間の進化によって
今日人類がはじめて 木星についたよ
出典: さよなら人類/作詞:柳原幼一郎 作曲:柳原幼一郎
この歌詞部分は、人類の進化(科学の進歩)によって成し得たことです。
これはとってもすごいことで、決してわるいことではありません。
むしろその移住を成功させる未来があるのかもしれないと、ワクワクしてしまうような場面です。
しかしこの「移住」という状況が、このあとの歌詞に必須。
すべてはここから始まったと言えるのかもしれません。
それほど大切なことなのです。
これを踏まえて、続きのポイントへ移りましょう。
戦争を連想させる歌詞
武器をかついだ兵隊さん 南にいこうとしてるけど
サーベルの音はチャラチャラと 街の空気を汚してる
出典: さよなら人類/作詞:柳原幼一郎 作曲:柳原幼一郎
この歌詞部分からわかることは、争いが起きているということです。
この争いは、移住した先で起きたのかそれとも地球で起きたのかは定かではありません。
しかし「移住をした」という科学の進歩によって起きたことに間違いないでしょう。
その理由は「すごいこと」だからです。
移住を成功させた人間は、周りが見えないような貪欲なものになっていたのでしょう。
貪欲な精神は決して悪いものではないのです。
しかし、すべての人間がそう思っているとは限りません。
「すごいこと」と称賛されてしまった人間は、調子に乗ったのでしょう。
どんな動物も、欲のままに動いてしまったら周りを破壊しかねません。
見境なく奪い、傷つけるのです。
それを止められる人間は、残ってはいないのかもしれません。
そんな人々は、周りを見なくなった人間に命を奪われていく。
この場面は、残酷な「戦争」というものを連想させるシーンです。
失ってしまったもの
ブーゲンビリアの木の下で ぼくはあのこを探すけど
月の光にじゃまされて あのこのかけらは見つからない
出典: さよなら人類/作詞:柳原幼一郎 作曲:柳原幼一郎
この場面に登場する花は、南国に咲くもの。
上記にあった戦争地と重なります。
僕が見つけようと必死になっていた人は、跡形もなく消えていた。
「月」が隠していると歌っていますが、消えてしまったことに頭がついていかないのだと感じます。
大切な人だったからこそその状況を飲み込めず、頭が混乱しているのでしょう。
歌詞部分に出てくる花が意味する言葉は「情熱」です。
冷酷非情な脳みそだけ発達した人間は、彼らから情熱を奪おうとしていたのでしょうか。
情熱が無くなれば、人間は人間と呼べない「機械」みたいなものになってしまう。
そうすれば抵抗するものもいなくなるだろうと考えてのではないでしょうか。
しかし「情熱」を失った人間が、そこから進化することは2度とないのでしょう。
つまり、あとは退化していくだけ。
衰えていき、人間という生物は存在しなくなってしまう。
人間は、ドンドンとよくない方向へ進んでいるように読み取ることができる場面です。
考える力を無くした人間
さるに なるよ
出典: さよなら人類/作詞:柳原幼一郎 作曲:柳原幼一郎
上記で「情熱」が無くなった人間は、人間ではないものになってしまうと説明しましたが、その結果が「さる」です。
やはり退化してしまうのでしょうか。
これは肉体的な退化ではなく、精神的なものなのだと感じます。
もう何も考えられなくなった欲望の塊みたいな人間といわれるもの。
それが「移住」をした人間の末路なのではないでしょうか。
科学の進歩だけを貪欲に考え続けてきた人間たちは、周りのことが見えなくなっていた。
それは周りの人だけでなく、ほかの動物や自然も含まれています。
だからこそ、従わないものを科学の力でねじ伏せているのです。
きっと「移住」をした理由も、戦争で地球環境が悪くなったからなのでしょう。
そう考えると「さよなら人類」というタイトルがピッタリだと感じます。