唯一無二の存在感で話題を呼んだ「たま」
独特すぎる音楽性で一躍人気者に
「平成名物TV・三宅裕司のいかすバンド天国」に出演し、強烈なインパクトで世間に名を知らしめた「たま」。
フォークを基調としたメロディーに、リコーダーや鍋や、桶、空き缶などを使用したサウンド。
独特の音づくりで高い評価を得ています。
また全員がボーカル・作詞作曲を担当するのも大きな特徴。
基本的に作詞作曲を担当したメンバーが、その曲のリードボーカルです。
今回紹介する「さよなら人類」でボーカルをとっているのは、柳原幼一郎さん。
その無邪気な子どものように歌い上げるところも印象的です。
歌詞の内容も影のある深いものが多いのですが、まるで童謡のように聞こえてしまいます。
「さよなら人類」では紅白出場も実現!
そんな「たま」の最大のヒット曲となった「さよなら人類」。
「たま」の特徴であるシュールな部分が魅力的なのですが、歌詞の内容も話題となりました。
スローでやわらかなメロディーに似つかない、地球の環境破壊や核戦争など社会問題を取り上げた作品。
まるで未来を予言しているかのようにも見えます。
現在でも様々な解釈がされている「さよなら人類」の世界観を、ここで解説してみようと思います。
かつての日本を象徴するような歌詞
素晴らしい発展の代償は大きかった
二酸化炭素をはきだして あの子が呼吸をしているよ
どん天もようの空の下 つぼみのままでゆれながら
出典: さよなら人類/作詞:柳原幼一郎 作曲:柳原幼一郎
“二酸化炭素”や“どん天もようの空”といったワードから、環境汚染のイメージがわきます。
まさに、第二次世界大戦後の日本の様子ともとれる部分。
大きな経済成長を遂げることができましたが、その代償に公害問題も深刻化しました。
光化学スモッグによって、どんよりと曇ったままの空。
花開くこともできないほど、空気が汚れているといったところでしょうか。
人類はこのまま前へ進めるのか・・・
野良犬は僕の骨くわえ 野性の力をためしてる
路地裏に月がおっこちて 犬の目玉は四角だよ
出典: さよなら人類/作詞:柳原幼一郎 作曲:柳原幼一郎
「さよなら人類」は、全体を通して猿の惑星や2001年宇宙の旅などと重なる部分が多々あります。
このフレーズも、どこか2001年宇宙の旅を彷彿とさせるところ。
原始時代のヒトザルが、他の獣たちを倒して食物を確保するシーンとよく似ています。
ここでヒトザルたちが武器として使うのが、動物の骨。
地球の環境が壊れて人類が滅んだ後、野良犬たちもかつての人類のように、骨を使って生き延びようとしている。
そんなイメージもできます。
そしてその次に出てくる“路地裏に月が落っこちる”というのを、“宇宙自体の大きな変化”と読み取ります。
そうすると犬の目玉がおかしくなってしまった理由がわかるでしょう。
人類滅亡を含め、地球の生態系は大きく変わってしまったのです。
ピテカントロプスって一体何?
今日人類がはじめて 木星についたよ
ピテカントロプスになる日も 近づいたんだよ
出典: さよなら人類/作詞:柳原幼一郎 作曲:柳原幼一郎
科学の発展によって、木星への移住に成功した人類。
そしてここで出てくる“ピテカントロプス”というのは、原始人のこと。
文明を発達させたにも関わらず、あまりにも便利になりすぎた世の中。
そのために向上心がなくなり、思考や成長をやめてしまった人類。
時代は前に進んでいったはずなのに、人類だけは原始時代の姿に退化しているという皮肉ともとれる部分です。